サッカーのワールドカップ(W杯)ロシア大会は、フリーキック(FK)やコーナーキック(CK)からのゴールが顕著だった。国際サッカー連盟(FIFA)が「セットピースの大会」と総括したように、計64試合のうち、
PKを含むセットプレーからの得点は、全169ゴール中70にも上った(41.4%=PK成功による22点を除けば28.4%)。これは過去最多だった1998年フランス大会の62を上回っており、ロシア大会はセットプレーの重要性が改めてクローズアップされた大会となった。
■ハイプレスでもボールを奪えない
ロシア大会では、守る時には徹底的に自陣にひいて、ゴール前の守備を厚くする戦い方を選んだチームが目立った。前回ブラジル大会では、チリやコスタリカのように、
前線から激しく相手にプレッシャー(ハイプレス)をかけて高い位置でボールを奪い、そこから手数をかけずにカウンター攻撃を仕掛けるチームの躍進が目についた。
しかし今大会では、GK、DFを含めたボール回しのレベルが上がり、ハイプレスをかけても簡単にはボールを奪えなくなった。そのため、やみくもにボールを取りにいくのではなく、自陣で組織的な守備網を形成するチームが多く、これがある程度、功を奏した。
例えばグループリーグで、スペインに0―1で惜敗したイラン。最終ラインに5人、時には6人が入り、相手ボールの際には全員が自陣まで戻って、「ティキタカ」と呼ばれるスペインの華麗なパス回しを寸断しようとした。
その結果、中盤でのボールの奪い合いは減り、ピッチ全体を3分割してみると、イラン側の3分の1のスペースに、スペインのGKを除いた21人の選手が入ってしまうような極端な場面が出現した。
■「どんびき」に涙をのんだスペイン
<サッカーも技術が上がれば、手でボールを扱えるバスケットボールやハンドボールのように、ボールを相手ゴール前まで運ぶ過程で奪われるミスが減り、攻防の大半はゴール周辺で行われるようになる>
以前からの指摘が、今大会で実際に表れた形だ。
前々回王者のスペインは、こうした守備に苦しみ、結局、決勝トーナメント1回戦で地元ロシアにも「ドンびき」作戦を採られて、延長からのPK戦の末に涙をのんだ。この試合でのスペインのパス成功本数は、延長戦が30分あったとはいえ、1000本以上という驚異的な数に上ったが、それでも相手オウンゴールによる1点しか取れなかった。
最終ラインに5人、さらにその前に5人のラインを敷いて、守備者同士の間合いを空けないようにして、左右のタッチライン際のスペースも消してしまうと、いくら技術があるチームでも、なかなか崩すのは難しい。
アルゼンチンのメッシ、ブラジルのネイマールといったドリブルの魔術師は、個人技で状況を打開しようとしたが、1人かわしてもカバーに来る次の守備者に止められた。ファウルをもらおうにも、ビデオ・アシスタントレフェリー(VAR)によるチェックの影響もあって、PKやゴール近くでのFKをなかなか得られなかった。
引用元: https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180726-00010000-yomonline-spo
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