試合前、イチローが打撃練習を始めると、 ケージの後ろに陣取ったコーチ、監督らが何やら囁き合う。 そして終盤になると、 イチローがスイングするたびに一喜一憂する。何をやっているのか?
「あれは、イチローが打撃練習で何本柵越えをするか、 当てているんだ」
教えてくれたのは、 イチローと同じ組で打撃練習をすることの多い控えユーティリティープレーヤーのアンドリュー・ロマインである。
「結構、いい勝負になるから、盛り上がる」
7月中旬にNHKBS1の「ワールドスポーツMLB」で 会長付き特別補佐のイチローの裏方としての一面をチームメートらの証言で構成する特集が放送された。その取材を手伝う機会があり、 ロマインにインタビューをした時に教えてくれたエピソードだ。
そんな首脳陣の盛り上がりは、 図らずもイチローとの距離感を教えてくれたが、 チームメートとのそれも同様である。
6月の終わりのこと。
イチローは今、マリナーズが試合に勝つと、 真っ先にダグアウトを飛び出してチームメートを迎える。 その日もセーブを挙げ、 オールスターにも選ばれた守護神エドウィン・ ディアスの元に駆け寄り、 マウンドの上で外野手らがたどり着くのを待っていた。
しかし、その瞬間である。イチローはクルリと向き直ると、 左足を上げてホームへ投げる真似をした。 テレビの画面の中に小さくそれが映った。
なんだったんだろう、という疑問は後日、明らかになる。
「あれは、僕の真似をしているんだ」
教えてくれたのは、やはり取材に応じてくれたディアスである。 笑いながら振り返ったが、実はその日も、 試合に勝ってマウンドに駆け寄ったイチローは、 投げた後で両手をだらりと下げる、 ディアスのフィニッシュポーズを真似ていた。
嬉しそうなディアスの表情が、テレビに映っていた。イチローのことなら、いくらでもエピソードがあるーー。
取材の下準備として、ある程度話を聞く選手を絞り込み、 インタビューを打診。こうこう、 こういうテーマで話を聞きたいが、 時間を取ってくれるかと聞いて回ると、彼らは一様に、 みなまで言うな、と言わんばかり。「もちろんだ。いつでも声をかけてくれ」
こちらもそれなりにイチローとのエピソードがあるのを知っている からこそ、その選手に声をかけたのだが、その時点で、 乗り気だった。引用元:https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180814-00000003-wordleafs-base
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