「相手のQBがけがをすればこっちの得」
日本大学は、学生にこんな思いをさせる大学なのか。日大アメリカンフットボール部とは、選手をこんなふうに扱うクラブなのか。多くの人々がそう感じた記者会見ではなかったか。危険タックル問題で、反則を犯した日大の宮川泰介選手が22日、東京都内で自ら口にしたいきさつと自責の念。経緯が事実だとすれば、日大アメフット部の指導も大学本部を含む事後の対応も、おぞましいほど卑劣だった。
宮川選手によると、3日に練習を外されて内田正人監督(当時)から「やる気があるのか、ないのか分からない。試合に出さない。辞めていい」と言われた。
危険タックルがあった関西学院大との定期戦の3日前だ。翌日には大学世界選手権代表も辞退させられ、前日の5日になって、井上奨コーチを通じて内田監督の「相手のQBを1プレー目でつぶせば出してやる」という言葉が伝わってきたという。
井上コーチから「『QBをつぶしにいくんで僕を使ってください』と監督に言いにいけ」「相手のQBがけがをして秋の試合に出られなかったらこっちの得だろう」などと言われ、「つぶせ」とは「けがをさせるという意味で言っているんだと認識した」という。
直前まで葛藤があったが、従わなければもう使ってもらえない恐怖が、スポーツマンとしての良心を押しのけた。「最初の反則の時、審判の笛は聞こえましたか」。報道陣からの質問に「投げ終わったということは気付いていました」と答えた。
すなわち、関学大のQBがプレーを終えたと審判が判断したことを認識した後のタックル。勢いがついていて、笛に気付かず当たってしまったタックルではなかったことを明確に認めた。
アメフットの汚点となるプレーが、過失ではなかった。そして、そうせざるを得なかった選手の胸中は…。会見の中で、宮川選手は「指示があったにしろ、やってしまったのは私なので私が反省すべき」などと自責の言葉を繰り返し、うなだれた。
身体接触を伴う競技や、野球のように凶器になり得る用具を使う対面球技では、「つぶせ」とか「壊せ」といった荒っぽい言葉がしばしば飛び交う。
プロ野球では、ベンチのコーチらが投手に向かって頭を指差すしぐさをして、「頭にぶつけろ」と指示したとして問題になったことがある。さまざまな議論を経て、1994年からセ・リーグが故意か過失かに関係なく頭部付近への死球を危険球退場とし、2002年からパも同様の運用になった。
1980年代、女子バレーボールの有力実業団チームの監督が、ライバルチームの選手を狙ってネットの下から足を出すよう指示していると言っていた。
バレー選手が他の選手の足に乗ると、膝の靭帯(じんたい)断裂など大けがをする危険があり、センターラインの踏み越しは故意でなくても反則だ。その監督はすでに亡くなり、実際に指示が実行されたかは不明だが、幸い名指しされた選手が相手選手の足に乗って大けがをしたことはなかった。
◇「相手のことを考える必要はない」
日本のスポーツ界は長らく、指導者も選手も気性の激しい人が多く、特に男子は野蛮なほど闘志むき出しの選手がよしとされてきた。一般社会にも「バンカラ」といった言葉が残り、大学の体育会員は肩で風を切って歩いていた。
指導者や上級生は、暴力や体罰を「愛のムチ」と容認され、ともすれば「カリスマ」と持ち上げられて、それらがスポーツ界の甘えにもなっていた。
しかし今日は、暴力に厳しい目が向けられ、言葉による叱責も時にパワハラと指弾される。まして相手の選手を意図的に負傷させる行為を、「試合に出たいなら」と出場機会と引き換えに迫り、試合当日にも「やらなきゃ意味ないよ」(内田監督)「できませんでしたじゃ、済まされないぞ。分かってるな」(井上コーチ)と念押しまでしたという。事実なら、過去にタイムスリップしても果たして許されたか。
プロであってもスポーツマンシップにもとる行為だが、今回の舞台は大学の試合。互いに保護者から預かった学生を健全、安全に育成する立場にあることが頭になく、他大学の学生なら意図的に傷付けてもいいと考えたなら、そうした監督が常務理事まで務める大学を、受験生やその保護者はどんな目で見るだろう。
さらに試合後、内田監督は選手たちに「こいつ(宮川選手)のは自分がやらせた。こいつが成長してくれるんならそれでいい。相手のことを考える必要はない」と言ったという。日大の選手は、アメフットをそうして成長する競技だと教わっていることになる。
さらに「周りに聞かれたら、俺がやらせたんだと言え」とも話したという。翌日のスポーツ紙にも同じ趣旨のコメントが載った。
しかし、問題が表面化して関学大から抗議文が届くと、回答書には「意図的な乱暴行為を行うこと等を選手へ教えることは全くございません」「今回、指導者による指導と選手の受け取り方に乖離が起きていたことが問題の本質」と記し、宮川選手の早合点であるかのような見解を示した。
スポーツ紙の談話も、真意が伝わらなかったと半ば記者のせいにして撤回している。
この間、10日に部のホームページへ抽象的な謝罪文を載せただけ。11日には宮川選手と両親が、内田監督、井上コーチと会い、相手の選手に謝罪に行きたい旨を伝えると止められた。その上、危険タックルは監督・コーチの指示だったとすることを公表するようメモを渡したが、拒否されたという。試合直前・直後の発言と、事が大きくなってからの姿勢や関学大への説明には、それこそ「乖離」が感じられる。
◇「定期戦がなくなってもいい」
宮川選手によると、井上コーチは「関学との定期戦がなくなってもいいだろう」とも言った。試合の2日後にもコーチ陣から同様の言葉が出たという。
関学大アメフット部の小野宏ディレクターは17日の記者会見で、「今の両チームの信頼関係は決定的に損われている」と憤る一方、「OBの方々とのつながりは蓄積がある」と両校の歴史に思いを至らせたが、日大でこんな会話まで交わされていたと想像しただろうか。
好敵手に対して試合中に燃やす闘志とは全く別次元の、先人が築いてきた伝統と交流を事もなく踏みにじる発言。日大アメフット部のOBも、どう聞くか。日大側が説得力を持って宮川選手の証言を否定できなければ、このクラブは学生スポーツ界に籍を置く資格も疑われる。
日大は24日をめどに、関学大に対して再回答することになっているが、20歳の学生が思い詰めた末、名前も顔も出して語ったことをどう受け止め、どんな見解を示すのか。21日には関学大選手側が警察に被害届を出している。日大が大学として、アメフット部として取るべき対応や負うべき責任は日ごとに広がり、内田監督の辞任は意味を成していない。
疑問も残っている。宮川選手は「大学に入って厳しい環境になり、フットボールがあまり好きではなくなってしまった部分がある」と話し、内田監督の求める厳しさに戸惑っていたようだ。ややおとなしいタイプに見受けられる。
ただ、選手には練習に身が入らない時期もあれば、闘志を内に秘める選手もいて、長い歴史、多い部員の中では突出して珍しい例でもないだろう。
それなのになぜ、あんなプレーを指示するに至ったのか。そこまでして関学大のQBを狙う必要がどこにあったのか。関東学生アメフット連盟など競技団体の対応も、重い責任を伴う。スポーツのルールや規範には、面白さの担保、公正・不公正や安全・危険の線引きなど、社会一般の法制度とは異なる物差しが必要で、統括団体が現場やファンのコンセンサスを探り、模索しながら年月をかけて整備してきた。
違反や不正に対しても、独自の視点で厳正に対処しなければ、存在意義や存立まで脅かされかねない。今回、関学大の選手側は止むにやまれず警察に被害届を出した。立件の可能性もある行為ではあるが、あくまでフィールドの中で起きた事案に警察の手が入ることを、アメフット界は深刻に受け止める必要がある。(時事ドットコム編集部)
引用元: https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180522-00000171-jij-spo
みんなのコメント
昨日の会見で井上コーチって名前が出てきたけど、日大と内田監督が井上コーチに責任を押しつけなければ良いがw
時代は変わり、そんなことはすっかり忘れていましたが、今回の件で思い出しました。
もしかしたら日大にはそんな体質があったのかもしれないですね。
しかし、それと今回の件は別です。
学生が自ら非を認めているのに、大学側の対応は目も当てられない。
彼は加害者であると同時に被害者です。
大学側はとことん責任をとる必要があるように思います。
そして、数年先にもし孫が日大を選ぶことがあったら、私は全力で止めます。
「今は反省していますって」
命令した奴も悪いが、実行した奴もわるい!
パワハラ、いじめ、そして裏切り。教育機関がやることとは到底思えない。
監督の指示がコーチにうまく伝わらずコーチが誤解を招く指導助言を行った。けして監督はそのような意味で選手に指示したわけではなかった。意味を取り違えて選手に伝えたコーチが全責任を取り辞任する。
(しかるべきポスト、多額の退職金で日大を守るという旗の元にコーチに納得してもらう。)
元監督は日大役員として「私に非はない」としてのうのうと居座り今後も裏から口を出す。
日大アメフト部の他の選手の皆さん、学生の皆さん、教務職員の皆さん今こそあなたたちが日大はすばらしいことを行動で示すときです。将来のある若者を一人きりでさらし者にするような教育機関であってはならない。今こそ団結を そして声を上げよう
い
危機管理が全く出来ない学校で危機感理学を習得できるか
企業は良く見てるよ
良識ある人は今の日大には入らないよ。
日大の選手には、幸い被害者の怪我も大事に至らなかったわけだし、早く立ち直って前向きな人生を歩んで欲しいです。
同類やなっ。
問題なのは選手に主体性を持たせない部分だろう。大学の監督の権限なんてのは生徒の保護がメインであって、試合の指揮ではないという事。これを期に日本のこれからの部活動のあり方が変わるといいよね。
危機管理に必要なのは次の3点ですってか?
「逃げる」
「シカトする」
「組織は個人に責任を押し付ける」
正に実践中で、学生も勉強になるな!
友人達の間では「日大ってヤ○ザだよ?(=受験しない方がいいよ?)」という話がされていた事を思い出しました。
当時は「?」でしたが、こういう事だったんですね。
昔より随分とイメージが良くなったような印象だったのですが、30年も経った今も変わらず…のようですね。
中学生の私の子供は、ニュースを見て、「日大は絶対受験しない!」と言っていました。
日本大学アメリカンフットボール部員の諸君!君たちの友人、宮川君は昨日自らの人生を賭して実名、映像を伴った謝罪会見を行った。これにより本人の行った過ちが消えるものではないが、正々堂々己の非を悔い、真実を白日の下に晒したこと、誠に感動に堪えない。「過ちて改めざる、これを過ちという」
翻って諸君の行動はどうだ?それぞれに事情はあるのだろうが、友人の勇気ある行動に胸を打たれた者がいるならば、立ち上がるのは今しかないぞ!
日本大学アメリカンフットボール部の、そして日本大学そのものの良心を示されよ!
男気が全くないね。
ただ今回、この選手の捉え方の違いと精神的に追い詰められてたのが相まってこの事件が起きてしまった。対応のしかたがわるいとか悪の根源はとか言うことを別に考えて今の時代普通が普通でなくなってる。ある学校では監督に叱咤激励され自殺してしまった子もいる。ごく少数の結果だけだと思わずに、改めて指導ほうほうを家、学校でも考え直さないといけないと言うことかな。
いいのか悪いのかはわからんが
田中芳行コーチが取材でで「日大の発表した通り」という。
この田中芳行コーチも終わってるな。監督首脳陣すべて犯罪者だな。
少なくとも前監督、井上コーチ、田中コーチ首脳陣はヤクザと変わらない。ヤクザの方がまだマシかも・・・
まるで今政権で繰り広げられてる安倍内閣vs愛媛県みたい(苦笑)
確かに過ちは犯してしまったが、全国に顔と名前を自ら晒して謝罪した20歳の学生の方が
元監督よりもコーチ陣よりも、心の中にスポーツマンシップがあることは確かだよ
そして大学側のスタッフ達にも言いたい
「大学って何のために、誰のために存在しているのか」と
各々自らの胸に問いかけてほしいね
日大にはリスクマネジメントを教える学科があるそうだが、そこの指導を受けたのかな。
学生は捨て石か!
大学側を引きずり出すまでこれは終わらしちゃいけない!
これが日本大学の教育方針なのか???
国民の怒りによって内田の家族に災いが及ぶ前に内田本人の自決が最善の解決法だ。
そして日本大学の経営層は全て退陣しろ。
ただし、生徒は全く悪くないので、他校への編入手続きをサポートしろ。
こんな卑劣な行為をした年寄りに自浄作用も反省も期待は一切できない。
日本大学は完全に腐りきっている。
日大の監督、コーチにお咎めなし?
日大も広報が発表してるから、大学としての正式見解なんでしょ?
日大として、それで良いんだ?
スゲーなー、おい?
そんな大学は消えて無くなれば良いんじゃない?