■早くも沈黙破る
8日に「辞任」を表明した日本ボクシング連盟の山根明氏(78)。その後、会長と理事職を辞めたことを認めたが、その他の役職の進退については明言せず、「死ぬまでアマチュアボクシングに関わる」と宣戦布告ともとれる発言をした。
山根氏は法廷闘争も示唆しており、ボクシング界で影響力を持ち続ける可能性が出てきた。連盟を私物化、独占して築いた「山根王国」の利権を死守するとの見方も浮上する。
「これからです。これからです!」
辞任表明をした8日に自宅に戻った際には妻に“口封じ”された山根氏だが、早くも沈黙を破った。
9日夜、報道陣に「私は、死ぬまでアマチュアボクシングに関係します」「僕自身は40代に負けないスタミナ持っている。神が山根明に与えた力や」と怪気炎を上げた。会長と理事を辞任したと認めたが、ボクシング界から身を引く気はさらさらないようだ。
これまで連盟の定款に存在しない「終身会長」に就任するなど人事を思うままに操り、判定にも大きな影響力があった山根氏。グローブの独占販売や助成金の流用など、「山根王国」は「山根商店」でもあった。
その権力はプロの世界にまで及んでいた。主要4団体の元世界王者、高山勝成氏(35)は、山根会長からアマ転向を拒否されている。
高山氏を20年以上支えるトレーナーの中出博啓氏(58)は「山根派」からこんな要求があったと証言する。
「あの人(山根会長)がプロの参戦を拒否するのは、自分の下らない威厳のためだ。そのくせ、世界戦では関係者を通じてチケットをせびり、余ったチケットは転売していたようだ。日頃は『プロは金もうけ、アマは教育』といっておきながら、許せない」
山根氏による「奈良判定」の指示も新たな音声データの公開で明確になったが、2016年4月に録音された別の音声データでは、内海祥子理事が「芦屋(大学の勝ち)じゃないの。そのために会長が審判を集めてんだから。お前たちなんで集められたか知ってるんか。
言っとかないとダメだよ。そうじゃないと、正しくやっちゃうといけない」と話し、近畿大学を勝たせないような発言をしていた。内海氏は助成金分配に関する音声も残っており、山根氏の意向に忠実にふるまっていた様子も浮かぶ。
こうした問題が生じた理由の一つとして、「役員が無報酬だったことがある」と指摘するのはスポーツライターの小林信也氏だ。
山根氏は辞任を表明した8日の会見で、妻から「どういうことがあっても会長を死ぬまで面倒をみていくから今、楽になってください」と言われたと明かした。会長を辞めるまでは無報酬にもかかわらず恩恵を受けていたことを示唆している。
小林氏は「会長はフルタイムで行わなければ務まらない。今後、新たなルールを作る際には、報酬を支払うようにすればいい」と提言する。
日本オリンピック委員会(JOC)の規定の中に、報酬を支払うことは禁止していない。
これまで山根氏周辺に集中していた権限はどうなるのか。
小林氏は「新しい会長、役員の下で新しいルールを作れば、利権のようなものは本来生じないはずだ。告発状を提出した『日本ボクシングを再興する会』も利権など考えていないだろう。アマチュアを支える人々は心から競技の繁栄を望んでいる」と解説する。
「再興する会」の鶴木良夫会長(68)は、「公平性・公正性のある開かれた組織となることを目指している」と8日の会見で、今後の日本連盟の在り方を語った。
“落とし穴”もあるとみるのは元格闘家でジャーナリストの片岡亮氏だ。「山根氏が(日本連盟は退いて)関西連盟にとどまるようなことも不可能ではなく、これまでの状態が続く可能性もある。それを防ぐためには、総会を開いて山根氏を除名する必要がある」と懸念を示した。
山根氏は告発者側に「法的に対抗していく」とも述べており、法廷闘争に突入する可能性もある。「無冠の帝王や」と称する山根氏の逆襲が始まるのか。
引用元: https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180813-00000008-ykf-spo
みんなのコメント