一体、どれほどの数値が出ているのだろうか――。21日に大阪桐蔭の春夏連覇で幕を閉じた夏の甲子園大会を見ている際に、幾度となく気になった。高校球児たちのプレーを、高性能弾道測定器「トラックマン」で測定したら…という話だ。
たとえばドラフト1位候補である大阪桐蔭・藤原の打球速度だ。テレビ画面越しでも分かるほどのすさまじい打球を連発し、打たれた投手が「一瞬で顔の横を通り過ぎた。新幹線みたいだった」と評したほどの打球。
メジャーリーガーのトップクラス打者の最速が、時速190キロ付近という。いくら金属バットとはいえ、さすがに日本の高校生がそんな打球を打てるとは思わない。ただ、打たれた投手が時速250キロ~300キロの新幹線を引き合いに出すほどの打球だったことも確かだ。一体、どれほどのものなのだろうか。
投手では、準々決勝まで4試合連続2桁奪三振など、大会No・1投手の名をほしいままにした金足農・吉田の数値が気になった。
甲子園6試合、50投球回で計62奪三振。とはいえ球速自体は最速150キロで、大半は140キロ台前半から中盤だった。
もちろん高校生でそれだけの球速を出せるのはすごいことだが、高校時代から150キロ以上を連発していた大谷(エンゼルス)や、藤浪(阪神)ほどの驚異的な数字ではない。それでも吉田は直球で空振りが奪うことができる。
回転数が多いのか、それともリリースポイントが打者寄りで球持ちがいいのか…。もし、それが分かるなら、球速以外の新たな指標となる。テレビ画面で表示してくれれば、その数値を見るだけで、ドラフト候補か否かを判断できるかもしれない。だから、知りたいと思ったわけだ。
そしてそれは、やろうと思えばできることでもある。なぜなら、今年から甲子園球場にもトラックマンが設置されたからだ。
阪神はすでに、そのデータを選手の育成・指導に活用している。具体的な数値は非公表ながら、たとえば投手陣で回転数が多いのは藤川、高橋遥、岩貞あたりだ。150キロ超を投げ込む藤川は別格だが、
球速が140キロ台前半の高橋遥や岩貞が直球で空振りを奪えるのは、回転数が多く、打者の手元で伸びているからだという。また、リリースポイントが打者に近く、球持ちがいいのは岩崎だ。140キロ前後の直球でも、
打者の体感速度はプラス5~10キロ近い。だから、直球で空振りが奪える…というわけだ。トラックマンで高校球児のプレーも測定すれば、今まで以上に多くのことが判明するに違いない。
ただ、阪神は、あえてそれをしない。関係者の話を総合すると、理由は主に2点だ。まず1つ目は高校球児のデータを独占しないため。
阪神の本拠地球場で開催される大会のため、データを独占しようと思えば、できる。だがそれをすると、12球団の公平性が保てない。そして2つ目は米国球界への高校球児のデータ流出を阻止するためだ。測定値は、トラックマン米国本社にも転送されるという。
それがメジャー球団に流れてしまうと、青田買いの温床になりかねない。だから春夏の甲子園大会期間中、トラックマンを作動させていないのだ。大学野球の聖地・神宮球場でも、アマチュア野球の大会では、同様の措置が取られているという。
いずれも納得がいく理由。すべては日本球界のためだった。打球速度、飛距離、スイングスピード、投球回転数…。甲子園大会に出場した高校球児たちのいろいろなデータを知りたいが、今はグッと我慢しようと思う。(記者コラム・惟任 貴信)
引用元: https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180824-00000080-spnannex-base
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