コラム【権藤博の「奔放主義」】
広島が異常な戦いを続けている。普通、リードしていた試合をひっくり返されると、チームのムードは悪くなる。勝ち試合の終盤に投手が打たれようものなら、野手からはあからさまな不満がにじみ出る。
投手はどんどん萎縮するようになってまた打たれ、野手はいよいよ不信感を募らせるという悪循環。こうしてチーム全体が深みにはまっていくのだが、広島にはそんな野球界の通例がまるで当てはまらない。
抑えの中崎はリーグトップの26セーブを挙げながら、防御率は2.66。3人でピシャリという試合は少なく、被本塁打も4と絶対的な存在というには物足りない。
開幕から勝ちパターンのリリーフ陣を固定できず、今もやりくりに四苦八苦という状態が続いているにもかかわらず、貯金21でセの首位を独走しているのだ。投手が打たれ、リリーフ陣が試合をひっくり返されても、ここの打線はビクともしない。
今季の58勝のうち、逆転勝利が実に28試合。再逆転、再々逆転という試合もあって、打線に異常と言っていいくらいの粘り腰があるのだ。
広島は連覇を果たした昨年も、リリーフ陣は決して万全ではなかった。野手陣からすれば、終盤の失点は織り込み済み。ハナから打って勝つしかないと思っているから、ジタバタしないし慌てない。そんな心持ちが恐ろしいほどの迫力を生んでいるのだと思う。
現代野球は七、八、九回が勝負。この3イニングを抑えられるリリーフ投手を擁するチームが覇権を握る――私の持論を覆す広島の3連覇はまず間違いない。打線の力でどれだけ2位以下を引き離すのか。興味深く見ている一方、どうしても釈然としないのは、やはりクライマックスシリーズ(CS)の存在だ。
2位の巨人を含めて、広島以外のチームはすべて借金生活。それでも、CSを勝ち抜けば、日本シリーズ制覇の可能性が残る。何度も指摘していることだが、果たしてこれで本当にいいのか。
昨年も広島は2位の阪神に10ゲームの大差をつけて優勝しながら、CSで3位のDeNAに足をすくわれ、日本シリーズに進出できなかった。
2年連続でそんなことになれば、いよいよペナントレースの価値が軽くなってしまう。本来、143試合の長丁場を制することに最も大きな価値があるはずなのに、たった6試合のCSでそれが無になるような制度を今後も続けるのか。
CSが導入されて今年で12年目。やるのが当たり前のようになった今、改めて問いたい。
(権藤博/野球評論家)引用元: https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180811-00000016-nkgendai-base
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