【AFP=時事】捕獲・解体されたのはシロナガスクジラか、それともナガスクジラか? アイスランドで、捕鯨業者が絶滅の危機にひんしているシロナガスクジラを食肉用に解体した疑惑が浮上し、論争が巻き起こっている。だが、問題のクジラの正体の特定は専門家でも困難だという。■発端はシー・シェパード公開写真
疑惑の発端は反捕鯨団体シー・シェパード(Sea Shepherd)が11日に公開した写真だ。シー・シェパードは、写真のクジラはアイスランドの捕鯨基地で輸出用に解体処理されるシロナガスクジラだと主張。7日に撮影されたもので、この50年間でシロナガスクジラの捕獲は初めてだという。
現存する地球上で最大の生物であるシロナガスクジラは、国際捕鯨委員会(IWC)によって1960年代に捕獲が禁止された。しかしアイスランドの専門家らは、写真のクジラが本当にシロナガスクジラなのか確信を持てていない。
問題のクジラが地球上で2番目に大きいナガスクジラである可能性もあるからだ。ナガスクジラは絶滅の危機にあるとされ、商業捕鯨の一時停止(モラトリアム)の対象となっているが、アイスランドはナガスクジラの捕鯨を合法としている。
写真のクジラを解体したアイスランドの捕鯨企業クバルル(Hvalur)のクリストヤン・ロフトソン(Kristjan Loftsson)最高経営責任者(CEO)はAFPに、処理したのはナガスクジラだと確信していると語った。
アイスランドの首都レイキャビクにある海洋・淡水研究「Marine and Freshwater Research Institute(MFRI)」のギースリ・バイキンソン(Gisli Vikingsson)研究員によると、写真のクジラにはシロナガスクジラとナガスクジラ共通の特徴が見られるという。
バイキンソン氏は、写真のクジラにはナガスクジラのように大きな背面に小さな背びれがあり、このため捕鯨業者はナガスクジラと判断して捕獲したのだろうと語る一方、「大きさや側面の模様はシロナガスクジラに似ている」と付け加えた。
■交雑種の可能性も
また、まれな例ではあるが、問題のクジラがナガスクジラとシロナガスクジラの交雑種である可能性も排除できないと、バイキンソン氏は指摘する。
クジラの交雑は非常に珍しく、アイスランド沖で1987年以降に確認された交雑種のクジラは5頭のみ。その上、交雑種のクジラには生殖能力がないとされている。
アイスランドでは毎年、捕鯨シーズン終了後に捕獲したすべてのクジラのDNA鑑定を行い、秋に結果を公表しているが、論争の的となっている問題写真のクジラに関しては特例としてDNA鑑定を前倒しで実施して今月末に結果を判明させるという。
だが、交雑種のクジラを保護する法律は存在しないことから、写真のクジラが交雑種だった場合、問題はいっそう複雑となりそうだ。
シー・シェパードは、捕鯨船の乗組員たちが問題のクジラを解体した際、以前に捕獲したナガスクジラの部位を交ぜたと主張し、当局が検査しても種の特定はほぼ不可能だとしている。
アイスランドが捕獲したナガスクジラのほとんどは、食用として日本に輸出されている。【翻訳編集】 AFPBB News
引用元: https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180715-00000025-jij_afp-sctch
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