出産もこだわって、「産み方」を選べる平成時代です。都会や大病院を中心に、無痛分娩(ぶんべん)を選ぶ人も珍しくなくなってきました。一方、出産には「腹を痛めてこそ愛情が湧く」など、綿々と続く価値観があり、「出産格差」という言葉も。周囲の価値観や思いに縛られ、「きちんと産めなかった」と自分を責めてしまう女性もいます。出産の経験にどう向き合っていけばいいか。母親や医師たちを訪ねました。(松川希実)
無痛分娩「私、ずるいのかな?」
無痛分娩で昨年、長男を出産した千葉県柏市の女性(30)は、妊娠中、ある恐怖に悩まされていました。「陣痛がすごく怖くなったんです」出産した友人には「なんとかなるよ」と励まされましたが、逃れられない陣痛は考えるほどに怖くなっていきました。選んだ大病院では、無痛分娩も実施していました。
「無痛分娩で、落ち着いて出産に臨めるならそれがいい」と、妊娠8カ月で同意書を提出しました。
しかし医師からは「骨盤もしっかりしているし、安産型だから、あなたは(無痛でなくても)平気じゃない?」と言われ、心が揺れました。
「私、ずるいのかな?」
誰に責められたわけでもありませんでしたが、「みんなが普通にやっているのに痛くなかったらずるいんだろうか。ちゃんと産んでいることになるんだろうか」と、いつの間にか、「みんなが経験している痛み」から逃げている罪悪感にとらわれてしまいました。
迷いは出産当日まで続きました。
無痛分娩には背中からカテーテル(チューブ)を入れ、神経に近いところに薬を注入していき、痛みを和らげていく方法があります。
女性は安静のため入院していた最中に破水、まもなく痛みが来ました。カテーテルを入れてもらいましたが、「とりあえず」のつもりで、麻酔を入れるかはまだ決めていませんでした。
ただ、恐怖は拭えなかったと言います。
陣痛の間隔が短くなってきたとき、よく聞く「鼻からスイカを出す痛み」を超えたと感じました。これ以上を想像すると、恐怖で興奮状態に。「もう無理」。麻酔の開始をお願いしました。途端に体が冷えるように痛みが引き、「助かった」と思ったそうです。
女性は「無痛分娩で後悔はしていません。無痛分娩という保険があったからこそ、安心して産めたから」と話します。
いまは長男の子育てと仕事の両立に四苦八苦の毎日。「妊娠中も、出産後もこんなに大変。どんな風に産んでも変わりは無いです」。「無痛なんてずるい?」と思っていた過去の自分の思いを否定しました。
引用元: https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180702-00010000-asahit-soci
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