道路交通法違反(酒気帯び運転)などに問われた男性被告の控訴審で、東京高裁(秋葉康弘裁判長)が「入れ歯安定剤に含まれるアルコールが検知された可能性がある」として、
同法違反について逆転無罪とする判決を言い渡し、確定していたことがわかった。飲酒していなくても誤って摘発される恐れを指摘した極めて異例の判断で、警察の呼気検査にも影響を及ぼす可能性がある。
同法違反などに問われたのは、静岡県沼津市の医師の男性(49)。2015年3月と5月の朝、浜松市内と静岡市内で、酒気を帯びた状態で乗用車を運転したなどとして起訴された。
男性は通勤途中に警察の呼気検査を受け、3月は呼気1リットル中約0・15ミリ・グラム、5月は同0・3ミリ・グラムのアルコールが検知されていた。
男性側は、1審・静岡地裁から無罪を主張。男性は上あごが総入れ歯、下あごが部分入れ歯で、「入れ歯を装着するために検査直前に使用した入れ歯安定剤にアルコールが含まれていた」と訴えた。男性が使用した安定剤には16・9%のアルコールが含まれていた。
しかし、昨年4月の地裁判決は、男性はそれぞれの前夜に飲酒していた上、安定剤の使用から20分以上たって呼気検査を受けており、検知に安定剤の影響はなかったとして有罪と認定。別に起訴されていた暴行罪と合わせて懲役1年、執行猶予3年とし、男性側が控訴した。
これに対し、高裁は、男性が1審で、アルコールが検知された2回の検査直前の状況について「入れ歯と歯茎の間からはみ出た安定剤を指で取り除いた」と供述している点を重視。
公判の過程で同じ条件で再現実験を行ったところ、飲酒していない状態にもかかわらず、安定剤を使用してから26分後に、呼気1リットル中0・15ミリ・グラムのアルコールが検知された。
今年6月の高裁判決は、この結果を踏まえ、男性が入れ歯を取り外すなどし、はみ出た部分の安定剤を丁寧に除去しなかったため、呼気検査に影響を与える量の安定剤が口の中に残っていた可能性があると判断し、1審判決を破棄。
同法違反について無罪とする一方、暴行罪の有罪は維持して罰金30万円とし、検察側、男性側とも上告せず確定した。
高裁判決を受け、男性の弁護人を務めた中村信(まこと)弁護士は「安定剤の影響は一般には知られていない。これまでも同様のケースが見逃されてきた可能性もあるのではないか」と話す。一方、東京高検は「コメントしない」としている。
引用元: https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180819-00050001-yom-soci
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