安倍晋三首相が内閣改造で、当選を重ねながら未入閣の「待機組」を大量起用したのは、自民党各派幹部の不満を抑えるためだ。
当初は手堅い実務型の布陣とする意向だったが、沖縄県知事選の大敗で方針転換を余儀なくされた。
ただ、新閣僚の手腕は未知数で言動への不安もあり、来年夏の参院選に向けて火種を抱えた格好だ。
初入閣の12人のうち、衆院当選5回以上、または参院3回以上に相当する待機組は11人。首相は2日夜の記者会見で「自民党にはいぶし銀の人材がたくさんいる。地道に能力の研さんに努めた皆さんに多くのチャンスを与えた」と説明した。
◇「派閥に押し切られた」
首相は先週、党幹部に対し、閣僚候補が抱える不祥事の有無を事前に調べる「身体検査」を徹底し、野党の追及に耐えられる守りの人事を基本とする考えを伝えていた。
先の党総裁選で、森友・加計学園問題などに起因する首相への不信が根強いことが明らかになり、参院選までの国会を無難に乗り切ることを重視したためだ。
だが、9月末の沖縄県知事選で想定外の惨敗を喫し、党内から「首相はもう選挙の顔にはならない」との声が噴出した。求心力低下を恐れた首相は、
「総裁選の後だから仕方ない」と、各派幹部が売り込む待機組を受け入れる考えに転じた。党関係者は「首相は違う人事構想を練っていた。派閥に押し切られた」と明らかにした。
各派はポストを得るのに必死だった。関係者によると、竹下派会長代行の茂木敏充経済再生担当相は訪問先のニューヨークから首相と政府専用機で帰国する際、
同派の渡辺博道氏を入閣させるよう直談判。ある派閥では、政権幹部から入閣候補の「政治とカネ」の問題を指摘され、慌てて党の顧問弁護士に相談して事なきを得たという。
「こんなに処遇されるとは、どういうことなんだ」。待機組3人が入閣した二階派の関係者は、喜びを通り越して驚いた様子。同派会長の二階俊博幹事長は、周囲に「党への貢献(の結果)だ」と胸を張った。
新閣僚からも喜びの声が上がる。当選8回で念願の初入閣を果たした麻生派の岩屋毅防衛相は、「長い道のりだった」と感慨深げ。細田派の山本順三国家公安委員長は「家内が舞い上がっている」と相好を崩した。
首相の出身派閥で党内最大の細田派は、衆院からの入閣は1人だけで、党四役からも引いた。同派幹部は「総裁選で支援をお願いしたから、配慮が必要だ」と自らに言い聞かせるように語った。
首相が譲らなかった数少ない例は、石破派の山下貴司氏の一本釣り。同派には未入閣の衆院当選5~7回議員が滞留しており、当選3回の山下氏の入閣は、首相と総裁選を戦った石破茂元幹事長の求心力を揺さぶる。石破氏は周囲に「秩序を乱したいのだろう」との見方を示した。
引用元: https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181006-00000024-jij-pol
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