カジノを中核とする統合型リゾート(IR)実施法が成立した。
ギャンブル依存症患者の家族や支援団体からは「回復困難な病気」とカジノ解禁に伴う依存症患者の増加などを懸念する声が上がる。
「同じ苦しみを受ける人が増えるだけでは」。神奈川県に住む60代の女性は、30代の息子が19歳だった頃、異変に気付いた。
居間の引き出しに入れた5万円を発端に自宅で現金が消えていく。問いただしても息子は盗んだと認めない。車の免許取得費用などを口実に金をせびられ、100万円以上を手渡した。
ある時、息子の指先が黒く変色しているのが目に留まった。スロット機に入れるメダルの汚れだった。依存症と分かってからは治療方針をめぐり夫婦げんかが絶えなくなった。大学を中退して自宅を出た息子は自助グループに加わるなどしたものの、10年以上たっても再発を繰り返している。
借金をして生活保護を受けたこともあったが、現在の暮らしぶりは詳しく知らないという。「自分の息子だけど、怖い。素直ないい子だったのに」
ギャンブル依存症患者や家族の支援に携わるNPO法人「ホープヒル」(横浜市)代表の町田政明さん(65)は「依存症は人格が変わり、本人だけでなく周りも苦しめる。政治家も本当の怖さを知らない」と話す。
日本人客に対しては、カジノへの週3回までの入場制限や6000円の入場料徴収などの抑止策を打ち出しているが、「依存症になるのは回数や量の問題ではない」と効果に疑問を呈する。
ホープヒルの利用者の中には、ギャンブルにのめり込んだ揚げ句、強盗事件を起こし逮捕された経験を持つ人もいる。政府は経済効果に期待を寄せるが、町田さんは「裁判や治療のコストなども含めると、社会的損失があまりにも大きい。カジノ周辺の治安も悪化するだろう」と危ぶむ。
「国全体が経済優先に向かう中で、ギャンブルはその最たるもの。お金をもうけることは必ずしも国民の幸せにはつながらない」と訴えた。
引用元: https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180720-00000169-jij-soci
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