【有本香の以毒制毒】6年の長きにわたり、日本の政権トップの座にある安倍晋三首相の不幸は何か、といえば、好敵手がいないことであろう。野党の体たらくは言うに及ばないが、
自民党内でも政策・政局両面で火花を散らす「敵」がいない。これ実は、安倍首相はもちろん、日本にとっても不幸なことだ。
その点で、最近とりわけ多くの人をガッカリさせたのが石破茂元幹事長である。
自民党総裁選への出馬は早々に表明したものの、「正直、公正」という、小学校の児童会長選挙の宣伝文句のごときキャッチフレーズが書かれたボードを背に、「正直、公正、謙虚、丁寧な政治を取り戻したい」
「『政治と行政の信頼回復100日プラン』を早急に作る」と言う石破氏の姿を見て、めまいがしそうだった。
いやしくも日本の総理総裁を目指そうという人が、「日本をどうするか」ではなく「正直者の私を信頼して1票ください」と言うなんてどんな悪い冗談か。
石破氏が先月上梓した『政策至上主義』なる本も購読したが、これにも唖然とした。本の題名から「政策集」かと思いきや、肝心の自身の政策が書かれていない。
本の帯には「この国には解決策が必要だ」「次期総理候補No.1」のコピーが躍っているが、ページを繰っても繰っても「解決」が出てこない。「政策通」と言われてきた石破氏は一体どうしたのか。
総裁選出馬会見の映像を見ていて気づいた。やはり石破氏は、ある人物にそっくりだと。
ある人物とは、小池百合子東京都知事である。一見、似ても似つかず正反対に見える石破氏と小池氏は、実は政治家としては「うり二つ」。次のとおり共通点が多い。
(1)石破氏は「出戻り」、小池氏は「渡り鳥」で、2人とも自民党一筋でない。(2)自民党の外にいた間、2人は小沢一郎氏が設立した新進党で同志。
(3)2人とも自民党総裁選に出馬して敗れた経験がある。小池氏は麻生太郎氏に、石破氏は一度は麻生氏、二度目は安倍氏に敗れた。(4)民主党が政権を取り自民党が下野していた2009-12年の一時期、2人は自民党三役を務めた。
そして5番目の共通項は、メディアとの関係だ。この2-3年、2人は「反安倍」の最右翼としてマスメディアに持ち上げられてきた。これらの共通項を思いつつ石破氏の出馬会見の映像を見ていてハタと気づいた。
日本(小池氏の場合は東京)をどうするのかを一切語らず、自身の「クリーンさ」(実際にそうかどうかは不明だが)を強調して、あたかも前任者に重大な問題があったかのようにほのめかし、「調査チーム」だの「ナントカプラン」だのを立ち上げる。今回の石破氏の総裁選出馬会見は、小池氏の都知事選出馬の時の焼き直しではないか。
つまり万が一、石破首相誕生の事態となれば、すなわち小池劇場の二番煎じの始まりだ。いや、それだけはご勘弁と思う国民は私だけではないであろう。
■有本香(ありもと・かおり) ジャーナリスト。1962年、奈良市生まれ。東京外国語大学卒業。旅行雑誌の編集長や企業広報を経て独立。国際関係や、日本の政治をテーマに取材・執筆活動を行う。著書・共著に『中国の「日本買収」計画』(ワック)、『リベラルの中国認識が日本を滅ぼす』(産経新聞出版)、『「小池劇場」の真実 』(幻冬舎文庫)など多数。
引用元: https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180824-00000018-ykf-soci
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