爆発音が何度も響き、真っ赤な炎が住宅を包み込んだ-。東伊豆町奈良本の男性(60)方で1日深夜に発生した火災。近隣住民も近づけないほどの火勢で、住宅を短時間で焼いた。4人の尊い命が突然奪われた惨劇に、のどかな山あいの住宅地に悲しみと落胆が広がった。
「火事だ、逃げろ」。下田署によると、助かった男性は一緒に寝ていた妻ら家族に声を掛け、上半身裸のまま外に飛び出したという。ただ、後を追ってくるはずの家族4人の姿が一向に現れない。
男性は飛び出したままの姿で、消火活動をぼうぜんと立ち尽くして見守っていた。斜め向かいに住む男性(80)が「家族は」と尋ねると、男性は「まだ中にいる」と答えたという。しかし、すでに激しく燃え、住宅に入ることができる状況ではなかった。
近くのアパートに住む男性(51)は1日午後11時ごろ、「バーン」という花火のような爆発音で外の異変に気付いた。火災のあった住宅は周囲を木に覆われ、その木の中から火柱が勢いよく立ち上っていたという。
男性宅の貸主で、隣に住む女性(78)によると、男性一家は20年以上前からこの家に住んでいるという。家族でバーベキューを楽しむ様子なども目にした。4人と連絡が取れない現実に「切ないです」と言葉少なに語った。
■「仲良く、明るい一家」
1日深夜の火災で4人の遺体が見つかった東伊豆町奈良本の男性(60)方は、男性と妻(53)、長男(29)、次男(28)、孫の男児(5)の一家5人で暮らしていた。「仲が良く、明るい家族だった」と親族や知人ら。男性以外の4人と連絡が取れず、一様に重苦しい表情を見せた。
男児が通っていた保育園の園長は「笑顔が印象的で、何事にも一生懸命取り組む頑張り屋さん。来年から始まる小学校生活を楽しみにしていた」と話す。父親は男性の長男。毎日欠かさずに手作り弁当を男児に持たせ、朝夕の送迎を行っていたという。男性の妻が以前働いていたホテルの元同僚は、「真面目な人柄で、周囲から頼りにされていた」と述べた。
■複数人死亡火災 近年、静岡県内で相次ぐ
静岡県内では2014年1月に掛川市のアパートから出火し3人が死亡したほか、15年3月に焼津市の小料理店兼住居で3人が焼死するなど、近年も複数人が死亡する火災が相次いでいる。東伊豆町では1986年2月に熱川温泉「ホテル大東館」から出火し、24人が焼死する火災があった。
静岡新聞社
引用元: https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180903-00000001-at_s-l22
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