神奈川県大井町の東名高速道路で昨年6月、「あおり運転」の被害に遭った静岡市の夫婦が後続のトラックに追突され死亡した事件の裁判に向け、驚くべき可能性が指摘されている。
自動車運転処罰法違反(危険致死傷)罪で横浜地検に起訴された石橋和歩被告(26)について、同罪では「無罪」となるかもしれないというのだ。
静岡市の萩山嘉久さん(45)と妻の友香さん(39)=いずれも当時=は長女と次女を連れ、ディズニーランドやお台場を観光した帰りに悲劇に見舞われた。
事故直前、嘉久さんが近くのパーキングエリアで石橋被告の駐車位置を注意したところ、激高し、友香さんの運転するワゴン車を追い掛け、進路をふさぐなど妨害行為を繰り返して停止させると「ケンカ売ってるのか」とすごんだ。
嘉久さんが「すみません」と謝り、その場を切り抜けようとした所に後続のトラックが突っ込んだ。残された長女と次女は今も深い悲しみをぬぐえずにいる。
神奈川県警は昨年10月、同法の過失運転致死傷容疑などで石橋被告を逮捕したが、地検は同法の危険致死傷罪などで起訴した。
同罪は20年以下の懲役で、より罰則が重い。しかし今月になって予備的訴因として監禁致死傷罪が追加されたことが分かった。同罪も20年以下の懲役が最高刑だ。
訴因が追加された背景を高橋裕樹弁護士は「夫妻の車を停車させる直前までの石橋被告の運転は、危険運転として捉えることができるが、(後続の)トラックの追突は夫妻の車が停車した後なので、石橋被告の危険運転と夫妻の死亡との因果関係を認めることは困難だ」と解説する。
監禁致死傷罪については「高速道路上で、石橋被告により夫妻が車を運転できなくなったことから、その場に留まらせたことが監禁として認められると判断したのだろう。今回の事件では危険運転より適用のハードルが低い」という。
元東京地検特捜部副部長の若狭勝弁護士は、「危険運転致死傷罪で起訴したのは、検察にとってもチャレンジだっただろう。
判決で危険運転が認められた場合、今後、類似する事件での捜査の幅を広げることができる。しかし予備的訴因が新たに加わったことは、裁判所から何らかの提案を受けたという背景が考えられる」と指摘する。
年内にも開かれる見通しの公判の行方について前出の高橋氏は「石橋被告の金銭による賠償の意思と反省の度合いが判決を左右するのではないか」とみる。
若狭氏は「昨年5月に石橋被告が山口県内で起こした器物損壊事件などが横浜地検に移送されているが、これらは危険運転の適用可否に決着がついた後、量刑の判断の際に被告の悪質性を判断する材料になる」と話す。
公判での争点をめぐって、石橋被告の弁護人は夕刊フジの取材に「危険運転致死傷の適用可否については争う方針だ。予備的訴因の監禁致死傷については、石橋被告が夫婦を鎖で縛ったり狭い空間に閉じ込めていたわけではないということや、
石橋被告が自らの車に戻ろうとした瞬間に不幸にも事故に遭ってしまったようなことから量刑について争っていく」との見解を示した。弁護人によると、現在の石橋被告は拘置所で深く反省した態度を見せているという。裁判に注目が集まる。
引用元: https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180927-00000000-ykf-soci
みんなのコメント