オウム真理教元教祖、麻原彰晃(しょうこう)元死刑囚=本名・松本智津夫(ちづお)、執行時(63)=ら死刑が執行された13人のうち10人は再審請求中だった。
これまで再審請求中の死刑囚は執行しないという傾向があったが、現在収容中の確定死刑囚のうち約8割が再審を請求。「執行引き延ばし目的」との批判も出ていた。
再審請求中の10人が執行されたことでこれまでの傾向が一変する可能性がある。
■6人は1回目
関係者によると、13人のうち岡崎(現姓・宮前)一明(かずあき)=執行時(57)、端本(はしもと)悟=同(51)=両元死刑囚と土谷正実元死刑囚=同(53)=の3人を除く10人が再審請求中だった。うち6人は1回目の請求だったという。
刑事訴訟法は、死刑判決確定の日から6カ月以内に執行を命じると定めるが、再審請求の手続きが終了するまでの期間は6カ月に含めないとも記載。
この間の執行命令を禁じる規定はないものの、運用では「再審請求や恩赦出願などを行っておらず、予定もない」(法務省関係者)ことが重視され、再審請求中の執行を回避する傾向があった。
しかし金田勝年氏が法相だった平成29年7月、再審請求中の1人を執行。以前にも請求中の執行例はあったが、金田氏は「再審請求をしているから執行しないという考えは取っていない」と強調した。
同12月にも請求中の死刑囚に対し執行。オウム真理教事件の死刑囚の執行への“地ならし”との見方もされていた。
■大半が黒塗り
産経新聞が情報公開制度で開示を受けた29年中の4件の死刑執行に関する文書によると、死刑執行までの事務手続きは、1審を管轄した高検検事長が執行上申書を作成し、法相に提出するところから始まる。
その後、法務省内で2種類の稟議書が作成され、幹部職員が押印。法相が死刑執行命令書に押印し、執行となっていた。ただ、開示された文書は大半が黒塗りになっており、どのような判断で執行される死刑囚が選ばれているのか読み取ることができない。
水面下ではどのようなやりとりが行われているのか。旧民主党政権下の平成21年9月から約1年間、法相を務めた千葉景子弁護士(70)は22年の春先、幹部職員から「これをお読みください」と2人の死刑囚の記録を渡された。説明は特になかった。
そしてその年の夏、2人の執行に関する稟議書が大臣室に回ってきた。「『やっぱり』という気持ちだった」と振り返る。
この2人の死刑囚がなぜ選ばれたのか-。千葉氏が質問すると、幹部職員からは「再審請求があるか、心身の安定が整っているか、確定からの年数などを総合的に判断してこうなりました」との答えが返ってきたという。
一方、法相自身が執行に注文をつけることもある。ある法務省幹部は「稟議書を持っていったら、大臣が『この順番はおかしい』と言って、変えさせたことがある」と明かす。
■約8割が請求
現在収容中の確定死刑囚110人のうち約8割が再審を請求している。
再審請求中を理由に、死刑確定から数十年執行されない死刑囚がいる一方、再審請求をせずに1年前後で執行される死刑囚もいる。不公平感がかねて指摘され、「執行引き延ばし目的で再審請求を繰り返している」との批判も出ていた。
今回、再審請求中だった10人の死刑が執行されたことで、再審請求を考慮しない流れは強まるのか。ある法務省関係者はこう語る。
「各死刑囚の個別の事情にもよるが、再審請求中というハードルはなくなった」
引用元: https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180728-00000563-san-soci
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