日本中がお祝いムードに包まれた京都大学特別教授、本庶佑(ほんじょ・たすく)さんのノーベル医学生理学賞受賞。
その研究成果は、免疫療法の一種であるオプジーボなどの「免疫チェックポイント阻害剤」開発に結びつき、がん治療に新たな道を開いたと華々しく報じられた。
ところが、研究成果や受賞会見の報道で、患者を含めた一般の人に、免疫療法に対して危うい誤解が広がっているのではないかという懸念が患者団体や医療者からあがっている。
患者団体代表やがん治療に詳しい腫瘍内科医に、気をつけるべきポイントを伺った。
【BuzzFeed Japan Medical / 岩永直子】「私も受けられるところはないか」「うてば再発しないと宣伝するクリニックはどうか?」
10月1日夜、ノーベル賞受賞の知らせがテレビやネットで報じられて以来、スキルス胃がん患者会のNPO法人「希望の会」に、相談の電話が殺到している。「ノーベル賞でオプジーボのことを知ったのですが、どこに行ったら受けられるのしょうか?」
「なぜ最初からオプジーボが受けられないのでしょうか?」
電話を受けた同会理事長の轟浩美さんは、患者の気持ちを受け止めながら説明する。
現在、胃がんでは他の化学療法後に進行・再発したがんにしか効果が証明されておらず、一次治療や二次治療には使われないこと。
どんな患者でも受け入れる高額な自由診療のクリニックは、適切な使い方もしない上に、副作用の管理もしてくれず命の危険さえあることーー。
夫の哲也さん(享年54)が亡くなる直前、免疫チェックポイント阻害剤の治験を受けたことがある。甲状腺の機能が悪化して中止し、その2か月後に亡くなった。
スキルスがんの一部に効果が見られたという学会報告があったようだが、残念ながら、希望の会の仲間で効果があった人はまだいない。
「治療法がないと言われた人ほど、冷静ではいられないので、ノーベル賞のお祝いムードで『夢の治療法』などと紹介されると飛びついてしまいます。自由診療のクリニックは、おそらくこれ幸いとばかりに『これはノーベル賞を取った画期的な薬です』と宣伝を始めるでしょう」
「問い合わせてくる人は、標準治療がどのように研究を積み重ねて効果が証明されたかがわかっていないので、言葉の響きから並みの治療だと思っています。
お金さえ出せばもっといい治療があるはずと自由診療に流れたら、大きな副作用もある薬なので心配です」
夫は治ることは叶わなかったが、将来の患者に治る道を開く研究のために献体もした。薬は、夫も含め一人一人のがん患者が祈りを込めて臨床研究に参加したことで作られる。そんな手続きに基づかない効果不明の治療をのさばらせたくはない。
引用元: https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181003-00010000-bfj-soci
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