「一秒でも早く見つかれ」―。活発化した梅雨前線の影響で西日本各地で記録的な大雨となった7日、愛媛県内でも南予を中心に多くの土砂崩れや浸水などが発生、多くの命が失われ、交通網は寸断された。
自然の猛威に襲われた現場では住民らが一刻も早い救出を願って消防や警察、自衛隊員らの作業を見守り、避難所では少しでも不安を和らげようと集まった人たちが肩を寄せ合った。
暗闇の中、土砂に埋まった家屋の周りで、父は懐中電灯を持って妻や小学生の娘2人を捜していた。7日未明、松山市沖の離島・怒和島で発生し、家屋をのみ込んだ土石流。明るく仲がいいと島民の間で評判の母子3人は倒壊家屋で見つかったが、息をしていなかった。
救助に当たった自衛隊員や消防隊員らが泥で茶色に染まった肩を落とす中、遺族の悲痛な叫び声が響いた。
地元の消防団員によると、6日午後7時ごろから、被害家屋のある上怒和地区では土砂崩れや浸水が相次いでいた。「ドン」というごう音が地区内に響いたのは7日未明。大量の土砂が木々を巻き込み、山際の男性方を一気に襲った。
「助けてくれ」という声を聞いた近所の女性(45)が戸外に出ると、家は大量の土砂に覆われ、その周囲を男性が懐中電灯を持って歩いていた。
「どこか分からんのよ」と言って家族を捜し、ぼうぜんと立ち尽くすこともあったという。女性は「明るい娘さんたちで、本当に仲の良い家族だったのに」と声を震わせた。
自衛隊や消防隊、県警などが駆け付け、スコップなどで土砂を取り除く懸命の救出活動が続いた。押し寄せた土砂は大人の背丈を優に超え、山から茶色い水が止めどなく流れ続けた。
午前11時35分ごろ、作業をしていた全員が1カ所を見つめ、慎重に泥をかき出し始めた。現場がブルーシートで囲まれると、遺族の叫び声が響き渡った。
「家族を亡くしたような気持ち」。姉妹2人の通う怒和小学校の校長は沈痛な表情で語った。同校は生徒6人、教師5人。次女は久しぶりの新入生で「上級生からも先生からもかわいがられている子だった」。
歩くのがゆっくりの次女を、3年生の長女は、後ろから背中を押してあげていたという。「妹思いの子。学校のムードメーカーだった」
姉妹の曽祖母(86)は「よく『おばあちゃんあげる』と食べ物とかを持ってきてくれて。本当にいい子たちだった」とうつむいた。
2人の姉妹を愛情いっぱいに育てていた母親。近くに住む主婦(65)は「誰に対しても礼儀正しく、明るい人だった」と声を詰まらせた。
愛媛新聞社
引用元: https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180708-08000701-ehime-l38
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