拉致被害者家族会は23日の国民大集会で、北朝鮮に対し、全被害者の即時一括帰国という「譲れない条件」を重ねて示した。
一方、政府には拉致の全面解決とともに、交渉に前のめりにならないよう慎重な対応を求める声が相次いだ。
「期待したが、動きは中断している雰囲気もある」
家族会代表で田口八重子さん(63)=拉致当時(22)=の兄、飯塚繁雄さん(80)は、6月の米朝首脳会談でトランプ大統領に拉致解決を提起された金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が、日本との対話に応じる意向を示してからの情勢に複雑な思いを漏らした。
現状を「解決の最後の好機」ととらえる家族らは、日朝間の実質的協議を切望する。1月に発表した運動方針では、昨年に続き「今年中」の全被害者救出を要望した。
ただ、飯塚さんはこの日、「何としても今年中とか来月中に、という話は私から言えない。焦らず着実に、被害者の確実な帰国に焦点を絞った取り組みを進めてほしい」と訴えた。日本側の「前のめり」姿勢への警戒といえる。
その背景には、北朝鮮が拉致解決をちらつかせながら被害者解放に至らなかった過去の苦い経験とともに、政界や学界の一部にある「経済支援を先行させて国交正常化を急ぐべき」とする認識への懸念がある。
北朝鮮は国営メディアなどで「拉致は解決済み」とし、経済協力などの「植民地支配の過去の清算」に日本が応じることが、対話の条件だと主張し続ける。
横田めぐみさん(53)=同(13)=の弟、拓也さん(50)は「国家犯罪を行い、テロ支援国家である北朝鮮の主張をうのみにはできない」とした上で、
「私たちは被害者の即時一括帰国しか求めない。北朝鮮が示す合同調査委員会や『報告書』に同調する動きは、救出への妨害行為だ」と憤る。
安倍晋三首相は集会のあいさつで「安倍政権で拉致問題を解決する」と、改めて決意を述べた。ただ、高齢化した家族に残された時間は少ない。
めぐみさんの母、早紀江さん(82)は「今が正念場。力強い交渉をしていただけると信じている」と語った。家族が求めるのは具体的成果だけだ。
引用元: https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180923-00000546-san-soci
みんなのコメント