安倍晋三首相が外遊を中止したのは、西日本豪雨で多数の死者が出ている中で災害対応をおろそかにすれば、世論の反発が避けられないと判断したためだ。
9月の自民党総裁選への影響を懸念する声も上がっている。一方、野党は国会審議より災害対応を優先するよう政府に申し入れ。世論をにらんだ与野党の駆け引きが活発化している。
「首相の外遊中止は政府・与党の強い覚悟を示したものだ」。自民党の岸田文雄政調会長は9日、記者団にこう述べ、豪雨災害対策に全力を挙げる姿勢を強調した。
西日本豪雨では日ごとに死者が増えており、政府はいまだに被害の全容を把握できていない。こうした中で首相が外国訪問に出発すれば、内閣支持率の下落要因となるのは必至。政府関係者は「総裁選で地方票を失う可能性があった」との見方を示した。
首相は被災地を視察してから出発することも検討したが、「政権担当能力を示す機会」(閣僚経験者)との方針に転換した。
ただ、与党内では首相の見通しの甘さを指摘する意見が出ている。首相は大雨の予報が出ていた5日夜、自民党議員との懇親会に出席。総裁選に向けた地方行脚の一環だった鹿児島、宮崎両県訪問も前日の6日に中止を決めた。
関係閣僚会議を非常災害対策本部会議に格上げしたのは、多数の死者が出ていることが判明した後の8日で、後手に回った感は否めない。公明党幹部は「緩んでいる」と苦言を呈した。
一方、立憲民主党の枝野幸男代表は8日、自由党の小沢一郎代表と東京都内で会談、災害対応を優先するため国会は事実上の休会とすべきだとの認識で一致した。9日には野党6党・会派の代表で、災害対応に全力で取り組むよう政府に申し入れた。
会期末を22日に控え、カジノを中核とする統合型リゾート(IR)実施法案などの重要法案を廃案に追い込む狙いがある。
災害対応の中心的役割を担う石井啓一国土交通相は、カジノ法案も所管している。立憲の辻元清美国対委員長は9日、記者団に「災害対応、人命救助に専念した方がいい。カジノの議論をしている場合ではない」と述べ、石井氏をけん制した。
引用元: https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180710-00000016-jij-pol
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