当サイトスタッフが『緊急出版! 枝野幸男、魂の3時間大演説 安倍政権が不信任に足る7つの理由』の作成で文字起こしに取り掛かったのが、立憲民主党の枝野幸男代表が不信任決議案の趣旨弁明を行った20日の夜のことだった。
時を同じくして、文字起こしに挑み、なんと22日までの間に完成させ、webにアップした人物がいた。
それが、枝野演説の中でも登場する「信号無視話法」の名付け親である、一会社員である犬飼淳氏だ。
前回、彼がなぜ「文字起こし」をするのかに焦点を当てたが、今回は、枝野演説の中でも触れられていた「信号無視話法」について、犬飼氏に伺ってみた。(前回参照:「優れた演説が埋もれるのはもったいない」。本より早く枝野演説をWebにアップした人物が語る「国会文字起こし」の意味)
◆「自分ができること」を通じて何かを伝えられないか考えた
――編集部が犬飼さんのことを知ったのは、あの「信号無視話法」による視覚化を初めて行った枝野代表と安倍晋三首相の党首討論の記事で、ハーバービジネスオンラインの「党首討論、議論は本当に『平行線』だったのか?
論点ずらしで逃げる安倍答弁を書き起こしてみた」から答弁部分の文字起こしを引用してくれていたのがきっかけでした。あのとき、引用以前に「色分けで見せる方法とはやられた!」と思ったことを覚えています。そもそも、なぜああした可視化を思いついたのでしょうか?
犬飼:実は「可視化」するということは以前からやっていたんです。
今年の2月頃、統計学の専門知識を活かして、Twitterやnoteで政治情勢分析の情報を発信している「はる/みらい選挙プロジェクト」さんの活動を知り、私も直感的に「何か」を分かりやすく視覚化することで、国民の政治への関心を高められないかと考え始めていました。ただ、私には「統計学」のような確固たる専門分野が無く、何ができるのか分からずに悶々と過ごしていました。
そんな中、森友問題の公文書改ざんが発覚して、官邸前などでデモが連日行われるようになった3月中旬、人生で初めてデモに行ってみました。が、コールを叫ぶのはちょっと攻撃的な感じがしてデモに加わる気にはなれないので、何をしていいのかわからず、現場をただウロウロしているだけでした。
まぁ、せっかく現場に来たんだからと思い、現場の空気感を伝えるために群衆の動画や写真をTwitterにアップしているうちに、あることに気づきました。
デモの参加人数が警察発表や一部メディアの報道では、実際よりも大幅に少なく公表されていたのです。
そこで、まずはデモの参加人数試算を始めました。Jacob’s Method(1960年代にカリフォルニア大学Herbert Jacobs教授が考案した群集の人数を数える手法)という手法で、人がいた面積に対して、混雑度に応じて単位面積当たり人数を乗じて、ざっくりとした人数を算出する方法です。(参照:「2018年3月25日緊急新宿大街宣の人数試算」、「2018年4月14日国会前デモの人数試算」)
ただ、数万人が集まった4月14日の国会デモの帰り道、このままでは何も変わらないと気付きました。
国会から目と鼻の先の日比谷では、まるでデモなんて無かったかのように休日を楽しんでいる人たちで溢れていたんです。その日の国会前と日比谷は、物理的には徒歩15分ほどの距離なのに、まるで別の国かと錯覚するほどに遠く感じました。
この時、政治に無関心な人たちに関心を持たせること、これが最も重要だと悟りました。
そのために何ができるかを考え始めた折、5月30日の党首討論で枝野さんの質問に全く答えずにダラダラと喋り続ける総理答弁を見て、「質問と全く関係ない話」と「質問内容の繰り返し」が回答の大半を占めていることに気付きました。
私は現在、コンサルに近い仕事をしており、2色程度で問題点の原因を色分けしながら資料を作成することがよくあります。それを応用して、この不誠実答弁をパッと一目で分かるように色分けすることを閃き、翌5月31日にはパイロット版のような形で信号無視話法の分析結果を公開しました。
――それがあの「信号無視話法」だったわけですね。
◆全く関係ない話、質問内容の繰り返しを色分け
犬飼:質問と全く関係ない話をする、質問内容を繰り返す、等のルール違反を繰り返す答弁をそう名付けました。
「信号無視話法」という名前をつけたことには明確な意図があリます。すでに上西充子先生の「ご飯論法」(参照:『「朝ごはんは食べたか」→「ご飯は食べてません(パンは食べたけど)」のような、加藤厚労大臣のかわし方)』)が新聞記事になり注目を集め、国会での不誠実答弁がやりづらくなったことを目の当たりにしていたので、「名前をつける」ことが不誠実答弁を防ぐことに繋がると考えたからです。
私が最もアプローチしたいと考えている「政治に関心のない人たち」が長い国会答弁を読むことはありえません。そのため、パッと見ただけで内容を理解できるように一定の配色ルールに従った色分けが有効だろうと考えたのです。
そこで、以下2つの条件を満たす色の組み合わせを探しました。
・質問と関係ない内容、質問内容の繰り返し、質問に対する回答の3つを色分けしたいので、最低でも3色は必要
・説明なしでも日本人が直感的にその3色の意味を理解できる
この条件を満たす色の組み合わせは、私が知る限り、信号機の赤黄青しかありません。赤はダメ、黄は要注意、青はOK。老若男女だれもが知っています。しかも、海外でも通用するので、いずれ海外に向けて発信することになっても、そのまま使えます。
実は、配色にはもう1つ案がありました。
それはサッカーのレッドカード、イエローカードです。赤は1発退場、黄色は2回で退場になるくらい悪いこと、という概念がピッタリだし、ちょうどロシアワールドカップ直前の時期でサッカーへの感心も高まっていたし、
政治に関心はないけどサッカーには興味がある人たちに伝わりやすい点も魅力的でした。しかし、重大な問題があって、この概念は2色しかないので、回答にあてる3色目の色が無かったのです。そのため、泣く泣くボツにしました。
もしサッカーにフェアプレーやファインプレーに特定の色のカードを出して褒め称えるという謎のルールがあれば、間違いなくサッカーの配色を採用していたと思います。
――発表後は物凄い反響でしたね。
犬飼:はい。5月31日にパイロット版のような形で部分的に公開した信号無視話法のnote記事は大変な反響を呼び、立憲民主党の公式、東京新聞・望月衣塑子記者、タレントの松尾貴史さん、などの著名人にも拡散して頂き、
note記事の閲覧数も7万PVほどになりました。また、朝日新聞さんには信号無視話法と私の視覚化による情報発信の取り組みを記事にして頂きています。(参照:『「信号無視」のモリカケ答弁』朝日新聞デジタル6月18日)
そして、7月20日の枝野代表の2時間43分に及んだ国会での大演説では、不誠実答弁の一例として、信号無視話法を引用して頂き、ついに国会デビューも果たしました。(引用元:「枝野代表演説文字起こし」)
――他にも、平成30年7月豪雨時の安倍政権の災害対応について、首相動静と気象庁発表、被害状況をタイムテーブルで並べ、「空白の66時間」を視覚化した記事も見事でした。
犬飼:ありがとうございます。ただ、すでに国会は閉会したので、今後どのような活動をするかは試行錯誤しています。今後も「政治に無関心な層」に政治に関心を持ってもらうことを目的に、パッと見て分かるような「視覚化」に取り組んでいくつもりです。
【犬飼淳氏】
サラリーマンとして勤務する傍ら、自身のnoteで政治に関するさまざまな論考を発表。党首討論での安倍首相の答弁を色付きでわかりやすく分析した「信号無視話法」や、7月豪雨時の官邸の対応の遅れについて可視化した「空白の66時間」がSNSで話題に。編集部とは「信号無視話法」の記事のときに当サイトの書き起こしを転載したことが縁でやり取りをすることになった。犬飼淳氏のnote(https://note.mu/jun21101016)、TwitterIDは@jun21101016)
ハーバー・ビジネス・オンライン
引用元: https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180804-00172064-hbolz-soci
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