■「何十年も知らず頑張る七段がかわいそう」
全日本剣道連盟(全剣連)の「居合道(いあいどう)」部門の八段昇段審査などの金銭授受による不正合格は、昭和40年代から横行していたことが明らかになった。
一昨年の審査に絡む“不合格騒動”を機に全剣連が昨年1月から内部調査に乗り出し、不正が露見した。発端の金銭授受に関わった当事者が産経新聞の取材にあしき慣習の実態を明かし、「自分もカネで段位を買った」と吐露した。
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◆250万円受け取るも…
「お金を用意した方がいいんじゃないか」
平成28年春。5月に迫った八段への昇段審査を前に、九州地方に住む男性は、自分の道場に通っていた後輩に、そう声を掛けた。
男性は当時、居合道最上位の八段と最高位の称号である範士を持っていた。何度か八段試験に落ちていた後輩に「(審査員に)つてがある」と現金の用意を提案した。
後輩も「合格するためには『必要かな』と感じ始めていた」といい、250万円を男性に渡した。
しかし、事態は前に進まなかった。
5月の審査を終えた後輩の元に届いたのは「不合格」の通知。激怒した後輩の親族らが、居合道部門を統括する居合道委員会に直談判し、顛末(てんまつ)を説明。問題が露見する契機になったとされる。
なぜ、不合格という結果に終わったのか。男性は産経新聞の取材に対し「現金を受け取った後、自分の中で『こんなことをしてはいけない』という気持ちになり、何も働きかけをしなかった」と説明した。
◆後輩に仁義のつもり
男性は当時、居合道の普及や振興を一手に担う居合道委員会の委員に就いていたが審査員ではなかった。
ただ、「自分が(審査員に)口利きすれば後輩の昇段を有利にできると思った。稽古によく顔を出していたし、仁義のつもりだった」と打ち明ける。
しかし、不正合格は「3年がかりの作業」(男性)。毎年、合格者枠は一定数が決まっており、直近の審査前にいきなり現金を配ったところで、すぐ昇段できるわけではないという。
男性は「盆暮れの付け届けも欠かせない。複数の関係者にそういうことを重ねるのは大変なことで、やり遂げられないと思った」。250万円を受領した3日後には後輩に全額を返却したとしており、後輩の親族らはそうした経緯を知らずに居合道委員会に駆け込んだ可能性がある。
また、男性は自身の八段への昇段審査でも、金を支払ったことを認めた。金銭で得た段位にも「後悔はない」とし、「そういうシステムだった。実力だけで八段になった人なんて、ほぼいないのではないか」と吐露した。
さらに「(金銭授受による不正の)仕組みを知らず、何十年も真面目に頑張り続けている七段の人が一番かわいそうだ」とも話した。
◆責任押しつけられた
一方、八段への昇段審査で不合格になった後輩は「もう終わったこと」とした上で、「悪いことだと思ったが、地元の範士八段からの誘いに応じないわけにはいかなかった」と振り返った。
後輩の親族らの訴えを受けて昨年1月から調査していた全剣連側は同11月、男性に対して八段と範士資格の自主返納という重い処分を下した一方、後輩については口頭注意処分にとどめた。
男性は居合道委員会の委員も辞任に追い込まれたといい、「自分に全ての責任を押しつけようとしている」と全剣連への不信を口にした。
引用元: https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180818-00000040-san-soci
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