1年間の出生数が100万人を割り、少子化への急坂を転げ落ちている日本。一方で生後間もない0歳児が死亡する児童虐待や、育児放棄が相次ぐという矛盾を抱えています。予期しない妊娠で生まれてくる子どもたちを保護するため、「特別養子縁組」という制度が約30年前につくられました。生みの親から育ての親へとリレーされる小さな命。
その決断の背景には、様々な葛藤や苦悩がありました。その当事者たちが描く、親子それぞれの“幸せ”とは…?
「やっぱり中絶はできない」予期しない妊娠に直面した女性
予期しない妊娠に直面したとき、あなたはどんな選択をするでしょうか。厚生労働省のデータによると、1年間に行われる人工妊娠中絶の件数は16万8015件(平成28年度)。「育てられない」多くの命がある、残酷な現状です。
その一方で、「中絶はできない」と揺らぐ女性たちもいます。
美沙さん(仮名)、23歳。同棲する彼との子を妊娠して7か月。2人は結婚するつもりはなく、一時は中絶も考えました。
「彼からはもうおろして(中絶して)欲しいと何回も言われました。毎週お腹の赤ちゃんの写真を見るたびに、やっぱり中絶はできないと思って。無責任と言われたら反論はできないです」
「育てられない」でも「産みたい」 母親の選択
まもなく出産を迎える美沙さんは、愛知県名古屋市内の民間団体、ライフホープネットワークで暮らしていました。予期しない妊娠をした女性を支援する団体で、中絶か出産かで悩む女性たちから年間100件以上の相談が寄せられます。
運営するのは、アメリカ人のキリスト教宣教師シンシアさんと、日本人のスタッフです。シンシアさんは話します。
「まだ生まれていない赤ちゃんたちが一番弱いものでしょう?(赤ちゃんは)自分のために何もできないから、赤ちゃんを守る事が当たり前だと思う」
妊娠した子を中絶するか、産むか。悩んだ末、美沙さんは“特別養子縁組”という制度を知り、産むことを選択しました。
“特別養子縁組”という選択何らかの理由で、親が育てることができない子どもはどうなるのか。これまで日本では子どもを、乳児院や児童養護施設へ預け、施設で育てる事が重視されてきました。しかし、施設から“里親”などの家庭へ引き取られる子どもは、全体のわずか18.3%(平成28年度)となっています。
一方、民間団体や児童相談所では、母親の妊娠中から相談を受け、新生児を「特別養子縁組」という制度で、子どもを育てたい夫婦に託しています。
「特別養子縁組」は「普通養子縁組」と違い、生みの親との血縁を断絶し、養子であっても戸籍上に「実の子」として記載されるのが特徴です。子どもが6歳未満(※1)の場合に限り、「育ての親」が法的な「実の親」となるのです。
虐待や育児放棄による事件が多い現代。専門家は、長期間施設で暮らしている子どもや、虐待されたまま家庭にいる子どもを、少しでも減らすことができると、特別養子縁組の意義を指摘します。
(※1)平成30年9月現在、6歳未満から年齢を引き上げる議論が行われている。
引用元: https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181009-00010006-sp_ctv-soci
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