9月13日告示、同30日投開票の沖縄県知事選に立候補する意向を固めている自由党幹事長の玉城(たまき)デニー衆院議員(58)は26日、
同県沖縄市内で後援会幹部と会合を開き、同日に予定していた正式表明を29日に延期すると説明した。出馬表明の延期は、22日に続いて2度目になる。
玉城氏は、8日に死去した翁長雄志(おなが・たけし)知事の「後継者」と位置付けられているが、翁長氏を初当選に導いた「オール沖縄」に不協和音が生じていることも背景にありそうだ。(杉本康士)
「あと少し、詰めることを詰めて発表したい」
玉城氏は26日、沖縄市で後援会の会合を終えると記者団に、正式な出馬表明を再延期する理由を説明した。27日に都内で自由党の小沢一郎代表と再度、面会する。
後援会幹部によると、小沢氏は玉城氏に対し、野党各党に立候補のあいさつをした上で出馬表明するよう指示したという。小沢氏の慎重な言動は「オール沖縄」を疑問視していることが背景にある。
■実権握る社民・共産
小沢氏が玉城氏を連れて24日に沖縄入りしたのは支援態勢を確認するためだった。オール沖縄関係者と面会した際には「単に雰囲気、ムードだけでは勝てない」と繰り返しくぎを刺した。
玉城氏を支持する県議は「オール沖縄の中には選んだら『はい、おしまい』で何もしない人が出かねない」と懸念する。玉城氏の後援会幹部の一人は「コレだよ、コレ。小沢さんが気にしているのはコレしかないよ」と言って、指でお金のマークを作った。
玉城氏自身が「オール沖縄」に言及する機会は少なく、翁長氏のキャッチフレーズ「イデオロギーよりアイデンティティー」を強調する。26日に記者団の質問に答えた際も「オール沖縄」を口にしなかった。
翁長氏の後継候補として玉城氏が急浮上した直後、ある県議は電話で玉城氏に「なるべく『オール沖縄』は使わないほうがいい。実態は革新共闘と思われてしまっている」と忠告した。
共産党や社民党は知事選だけではなく、沖縄県内の各種選挙で「オール沖縄」を前面に押し出して戦った。
翁長氏支持の県議会26議席のうち、保守・中道県議が所属する会派「おきなわ」は8議席。社民党、沖縄社会大衆党、結の会で構成する会派が12議席で、共産党の6議席と合わせて革新勢力が多数を握る。
一方、県内首長選では翁長氏が推す候補の敗北が続き、11市のうちオール沖縄系の市長は2人のみ。内部には「『オール沖縄』は実態とかけ離れすぎている」と名称を改めるよう求める声もあったが、共産党が激しく反対してきたという。
■「まるで独裁国家」
玉城氏擁立が決まる過程でも、オール沖縄内部の対立があらわになった。
オール沖縄の参加政党・団体でつくる「調整会議」は17日午前の会合で翁長氏の後継候補を協議した。名前が出たのは謝花(じゃはな)喜一郎副知事や県内建設・小売り大手「金秀(かねひで)」グループの呉屋(ごや)守将会長ら5人で、玉城氏の名前はなかった。
これに社民党の新里米吉(しんざと・よねきち)県議会議長が待ったをかけた。17日夜になって調整会議幹部に対し、翁長氏が玉城、呉屋両氏を後継指名した音声データがあると伝えた。呉屋氏が出馬を固辞したため、一気に玉城氏擁立の流れができた。
玉城氏から相談を受けた小沢氏は「後で『音声データはありませんでした』ってなったらどうするんだ」と懸念を示した。
調整会議のメンバーで翁長氏の音声を聞いたというのは新里氏のみ。会派「おきなわ」は音声データの開示を求めたが、新里氏は「関係者に迷惑がかかる」と拒んだ。「おきなわ」幹部は「1人の意向で知事候補が決まる。まるで独裁国家だ」と批判する。
■市民団体も不満
オール沖縄の在り方に不満を抱くのは、保守系県議だけではない。
22日の県庁内の一室には「うるま市具志川九条の会」(仲宗根勇共同代表)など市民団体の約70人がすし詰めになった。県担当者に対し、米軍普天間飛行場(宜野湾(ぎのわん)市)の移設先となる名護市辺野古での埋め立ての承認を即時撤回するよう求めるためだ。
翁長氏系の県議会与党には、撤回を先延ばしすれば玉城氏が知事選で「埋め立て承認撤回」を掲げて戦うことができるとする声もある。仲宗根氏は県担当者に「雑音は聞かんでもいいですよ。特に与党議員団はもう諸悪の根源ですよ」と語気を荒らげた。
市民団体の一部は、辺野古埋め立て承認の撤回に踏み切らなかった翁長氏に疑いの目を向けていた。県内各所で座り込みを行う山内徳信(とくしん)元参院議員は7月の記者会見で「翁長知事は一向に具体的な動きが出てこない。沖縄県民は失望しつつある」と語っていた。
金秀グループと県内観光大手「かりゆし」グループはオール沖縄を離脱した。辺野古移設への賛否を問う県民投票を主張していたが、共産党や社民党などが潰したと受け止めたことも一因だった。
呉屋氏は22日、玉城氏と面会し、支援する意向を伝えた。呉屋氏との不仲がささやかれる平良朝敬(たいら・ちょうけい)氏がオーナーのかりゆしグループは「自主投票」を決めた。オール沖縄内には「金秀が前面に出すぎると、建設業やスーパー(の他社)は乗れなくなる」(県議)との声がある。
■「弔い票」の行方
9万9744票差-。4年前の沖縄県知事選で「オール沖縄」の支援を受けた翁長雄志知事は、自民党が推す当時現職の仲井真弘多(なかいま・ひろかず)氏に大勝した。自民、公明両党が推薦する前宜野湾市長の佐喜真淳(さきま・あつし)氏(54)は10万票を覆すことが勝利の条件だ。
佐喜真陣営関係者によると、自公両党の基礎票はオール沖縄をわずかに下回る。この基礎票から支持を広げて無党派層を取り込む選挙戦となる。
公明票は、4つある沖縄の衆院選挙区で1万~1万5千票あるとされる。前回知事選では自主投票だったが「半分以上が翁長氏に流れた」(自民党県連幹部)との見方もある。
さらに、前回は日本維新の会の下地幹郎(みきお)国会議員団政調会長が約7万票を獲得した。公明、維新両党が全面的に佐喜真氏を支援すれば10万票差は覆る計算となる。
「自公維」で臨んだ県内首長選では自民党系が経済活性化を掲げて連勝している。前回知事選以降、県内の市長選で自民党系が敗北したのは今年1月の南城市のみだ。
一方、過去3回の国政選挙ではオール沖縄が優勢だった。平成26年12月の衆院選では4選挙区で全勝し、28年7月の参院選でも勝利した。玉城デニー氏の陣営は「基地が争点となる知事選や国政選挙と、身近な暮らしが争点になる市長選は次元が異なる」(県議)と強気だ。
ただ、29年10月の衆院選では沖縄4区で自民党候補が勝利した。同1区では自民党と維新が競合しており、自民、維新両候補の票を足せば「オール沖縄」を前面に掲げた共産党候補の得票を上回る。
問題は無党派層の動きだ。多くが翁長氏の「弔い票」になる可能性がある。
佐喜真氏が過重な基地負担をアピールした翁長氏の実績をたたえるのもこのためで、佐喜真氏陣営は「翁長氏を批判すると弔いムードを刺激してしまう」と警戒する。
引用元: https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180826-00000543-san-pol
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