9月の自民党総裁選への立候補を正式に表明した石破茂元幹事長は10日の記者会見で、安倍晋三首相(党総裁)への対決姿勢を強めた。「反安倍」勢力を取り込み、劣勢の国会議員票と党員票を集める戦略からだ。
「首相と対峙(たいじ)すれば冷や飯」との警告に対する批判もアピールし、同情を期待する向きもある。しかし、石破氏は内閣改造で首相の入閣要請を断るなど、政権や党運営に積極的に関与してこなかった。これが支持伸び悩みの「誤算」となった面は否めない。
「石破を支持したら『冷や飯』だとか『冷遇』だとか報道される中で、決然と参院の平成研究会が石破支持を表明していただいたのは本当にありがたい」
石破氏は記者会見でこう首相側を当てこすると同時に、竹下派(平成研究会、55人)の参院側(21人)の支持に謝意を述べた。
記者会見で配ったビラには「私は、取り戻します」と明記。(1)謙虚で正直で国民の思いに近い政治(2)透明・公平・公正な政治・行政(3)課題に正面から挑み決断する政治-を列挙し、「迅速に党風刷新」「官邸の信頼回復」などの言葉も並べた。
念頭に学校法人「森友学園」「加計学園」問題などがあるのは明らかだ。石破氏率いる石破派(水月会、20人)の幹部は「財務省の決裁文書改竄(かいざん)のような重大問題で閣僚が責任を取らないのはおかしい」と憤る。
首相の政治姿勢が国民の信頼を失わせ、総裁選で挑めば党内で冷遇を受けかねないような強権ぶりも目立つ-。石破氏の主張には、こうしたことを暗に強調する戦略が見え隠れする。石破派幹部は、来年の参院選で自民党が苦戦した場合を考え「首相との対立軸を鮮明にした方が『ポスト安倍』の近道になる」と計算する。
平成24年総裁選で争った首相と石破氏は「生理的に合わない水と油の関係」(党幹部)との評価がもっぱらだ。石破氏は首相の政権復帰当初に幹事長を務めたが、26年は安全保障法制担当相就任を固辞し、27年に石破派を創設した。28年には閣内残留も拒んだ。
ただ、こうした姿勢は支持拡大につながっていない。石破派の人数は創設時から増えておらず、党幹部は「首相と異なる政策を掲げたとしても、党内で汗をかかずに野党と同じような批判ばかりしては、支持が広がるはずがない」と石破氏の政治姿勢を批判する。
吉田博美参院幹事長ら参院竹下派は、引退後も強い影響力を持つ青木幹雄元参院議員会長の意向を受け、石破氏支持を決めた。しかし、首相の信頼が厚い吉田氏は、心情的には首相支持だ。石破氏が首相批判を強めれば、貴重な支持層の信頼を失うことになる。
首相陣営の幹部は今回の総裁選で圧勝し「石破氏を完膚なきまでにたたき、『ポスト安倍』の芽を断ちたい」とまで語る。石破氏の戦略が吉と出るか凶と出るかは間もなく明らかになる。(奥原慎平、水内茂幸)
引用元:https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180811-00000500-san-pol
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