■安倍陣営…船頭多く船山に登る/石破陣営…ベテランと中堅に溝
自民党総裁選(20日投開票)の告示を7日に控え、安倍晋三首相(党総裁)、石破茂元幹事長の両陣営で早くも不協和音が響いている。
党内7派中5派が集結し、国会議員票の7割強を固めた安倍陣営は「船頭多くして船山に登る」状態に陥り、足並みがそろわない。石破陣営では、首相批判で存在感をアピールしたい中堅と、総裁選後を見据え穏便に矛を収めたいベテラン勢のさや当てが始まった。(水内茂幸)
「首相を支持する議員の名簿を早急に提出してもらえますか」
8月31日、党本部で開かれた安倍陣営の合同選対本部の準備会合。萩生田(はぎうだ)光一幹事長代行がこう求めると、岸田派(宏池会)事務総長の望月義夫元環境相が「まだ海外にいる議員がいるので…」と待ったをかけた。他派の幹部は白けた表情となり、気まずい雰囲気が漂った。
◆選対役員発表見送り
陣営は9月3日に選対本部発足式を予定するが、役員の発表さえ見送られた。
原案では、橋本聖子参院議員会長が本部長、甘利明元経済再生担当相が事務総長、萩生田氏が事務局長を務める予定だが、顧問には麻生太郎副総理兼財務相や二階俊博幹事長ら領袖(りょうしゅう)級がずらり。
本部長代理5人、副本部長9人、副事務総長6人、常任幹事12人、事務局次長14人。その陣容を知った中堅は「こんなに船頭が多かったら、今後ますます混乱するぞ」と嘆いた。
陣営の動きが鈍いのは、首相の出身派閥である細田派(清和政策研究会)の責任も大きい。下村博文元文部科学相、西村康稔官房副長官、萩生田氏の主導権争いが起きたからだ。
3氏がそれぞれ首相官邸に多数の案件を持ち込んだため、首相の京都入りの日程調整がつかなくなり、地元で動員をかけていた西田昌司参院国対委員長代行を激怒させた。
また、都内のホテルに構えた「裏選対本部」に西村氏だけ一時的ながらも出入り禁止となった。「官房副長官が裏選対に出入りするのは好ましくない」というのが表向きの理由だが、相互不信は募るばかりだ。
そんな中、二階派(志帥会)は所属議員から早々に念書を取り、沖縄県知事選(30日投開票)に総力を傾注させた。早くも幹事長続投を前提に動き出したとみるべきだろう。総裁選での「働き」はその後の内閣改造・党役員人事に直結するだけに、各派のさや当てはますます激しくなるに違いない。
◆野党指摘の数字が
石破派(水月会)は小所帯だけに結束しているかに見えるが、内実は違う。
「このペーパーは一体何だ?」
田村憲久元厚生労働相や鴨下一郎元環境相らは8月27日、石破氏の記者会見で配られた説明資料を直前に受け取り、目を丸くした。
赤沢亮正衆院議員ら中堅が作成した資料の表題は「アベノミクスの不都合な政策目標?」。潜在成長率2%目標→3本目の『成長戦略』の失敗▽東京一極集中の是正→『地方創生』の失敗-などの見出しが躍り、安倍政権の重要政策をことごとく批判していた。
田村氏らベテラン勢は不快感を隠さない。
「これらは野党が指摘した数字じゃないか。同じ政権与党なのに、なぜあんな数字をあげつらうのか」
石破氏は8月10日の出馬会見で首相を激しく批判し、「個人攻撃だ」と党内で不評を買った。対立軸を鮮明にさせ、メディアの注目を引きたい中堅と、総裁選後に首相との関係を修復させたいベテラン勢の亀裂は広がりつつある。
引退後も参院に隠然たる力を持つ青木幹雄元参院議員会長の意向を受け、やむなく石破陣営入りした参院竹下派(平成研究会)も面白いはずがない。吉田博美参院幹事長は8月30日朝、都内のホテルで石破氏と会談し、「首相と骨太の政策論争をすべきだ」と1時間以上も説教した。2人の溝も埋まりそうもない。
引用元:https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180903-00000035-san-pol
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