防衛省は、自衛官の採用年齢の上限を現行の26歳から32歳に引き上げる方針を決めた。関連規則を改正した上で今年10月から施行する。
少子化などの影響で自衛官の確保が困難になっていることを踏まえた措置で、平成31年度には人材確保に関する政策立案の司令塔となる部署も新設する。複数の政府関係者が6日、明らかにした。
自衛官のうち「自衛官候補生」と「一般曹候補生」の現行の募集対象は18~26歳で、上限を6歳引き上げる。
今週中にも採用年齢を定めた省令を改正するための意見公募(パブリックコメント)を開始する。自衛官の採用年齢を変更するのは2年以来で、当時は24歳だった上限を26歳に広げた。
自衛官候補生は採用されれば2~3年の任期付きの自衛官となる。希望に応じて任期を延長したり、任期のない別の職種の試験を受けたりすることができる。
一般曹候補生は、「曹」と呼ばれる各部隊の中核を担う人材を養成するために設けられており、原則定年まで勤めることができる。
30年度の採用計画数は自衛官候補生が9902人、一般曹候補生が6300人で、この2つの候補生で自衛隊の新規採用の9割以上を占めているが、最近は応募者数自体が減少傾向にある。
特に自衛官候補生の採用数は4年連続で計画を下回り、29年度の採用数は7513人で計画の約8割にとどまった。年齢の上限を引き上げることで、高校や大学を卒業後、一度は民間企業や公務員として就職した人材を取り込む狙いがある。
防衛省は、自衛官候補生と一般曹候補生に加え、民間企業などに勤める「予備自衛官」と「即応予備自衛官」の採用年齢の上限もそれぞれ引き上げる方針だ。
また、自衛官の確保を推進するため、31年度には10人規模の専門部署も設置する。募集に関する施策の立案や、地方自治体への募集依頼などで司令塔的な役割を担う。31年度予算に関連経費を計上する方向だ。
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■少子化影響…迫る「静かな有事」 災害対応でも高まる重要性
防衛省が28年ぶりに自衛官の採用年齢拡大に踏み切るのは「従来の延長線上の施策では必要な防衛態勢を維持できない」(幹部)という強い危機感の表れだ。
最新鋭の装備をそろえたとしても「人」がいなければ国防は立ち行かない。今後少子化が進むのは確実で、自衛隊は北朝鮮や中国の脅威にも比肩する「静かな有事」に直面している。
「59%…」。自民党国防族の一人は、採用に関する防衛省の内部資料をみて、こう絶句したという。平成29年度の海上自衛隊の自衛官候補生の採用数(男子)が、募集計画の59・9%にとどまっていたからだ。陸上自衛隊と航空自衛隊もそれぞれ約8割にすぎなかった。
厳しい数字は、そのまま現場にも反映されている。海自の護衛艦任務では、定員に満たない人数で出航することが常態化している。
本来は3班制でのローテーションを2班制で回すなど、隊員にかかる負荷は重い。海自では業務の効率化の推進などで現状をしのいでいるが、抜本的な解決には結びつかないのが実情だ。陸自や空自も同じ構図に頭を悩ませている。
総務省などによると、自衛隊が採用対象としている18~26歳の人口は減少を続けており、50年度には6年度のピーク時から半減する見込みだ。
最近の景気回復で民間企業に人材が流れていることもある。自衛官の採用が今後さらに厳しさを増すのは必至で、防衛省は今回の採用年齢の拡大に加え、定年延長や再任用の拡充、女性活用の推進などを断行する方針だ。
地方自治体の姿勢も人材確保が困難な一因となっている。自衛隊法では、都道府県知事や各市町村長は、自衛官募集に関する事務に協力することが規定されている。これに基づき防衛省は募集対象者の氏名、生年月日、性別、住所の情報提供を依頼している。
ただ、積極的に応じる自治体は全体の約3割にとどまる。背景には自衛隊への“アレルギー”や事務作業が増えることへの警戒感があるとみられる。防衛省は31年度に新設する人材確保の部署を中心に地方自治体へのアプローチ方法などを検討する。
国防に加え、最近は西日本豪雨のように各地で起こる災害での自衛隊の重要性も高まっている。小野寺五典防衛相も7月27日に出演したインターネット番組「言論テレビ」でこう訴えた。
「災害からも国を守る自衛隊員だ。国から委任する事務なので募集にもご協力いただきたい」(石鍋圭)
引用元: https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180807-00000000-san-pol
みんなのコメント
なぜ、与党も野党も就職氷河期世代を救おうとしないのだ?
少子化問題のメインは就職氷河期世代なのに・・・。