草の根交流が長く続いてきたサンフランシスコ市と大阪市。従軍慰安婦問題を巡る見解の相違や政治的思惑から、姉妹都市関係の解消は決定的になり、関係者からは惜しむ声が上がる。
大阪市は昨年度、姉妹都市提携60年の節目に予定していた高校生らの派遣事業を中止した。市は今後もサ市との親善を目的とした事業には公金を投じない方針だ。
「信頼関係は築くのは大変だが、壊すのは簡単。大きな損失だ」。市民団体「大阪・サンフランシスコ・ユースコネクト」(ソイネット)の久保井亮一会長(72)は嘆く。
今年3月、サ市を訪問した大阪府立阿倍野高3年、作田貫太さん(18)は「政治的な関係が切れても人のつながりは切れない。交流を続けたい」と話した。
一方、慰安婦像のあり方を巡っては、大阪市以外の自治体でも、海外との友好関係にさざ波が立ったり、交流に影響が及んだりしたケースがあった。
東大阪市は2013年、姉妹都市の米グレンデール市が設置した像について、同市のホームページに東大阪市が設置に賛同したと取れる文書を掲載したことに抗議した。
しかし5年が経過した現在も訂正はされず、交流は途絶したままだ。
松山市は16年、独フライブルク市に像設置の計画が進行していると知り、慰安婦問題の最終的・不可逆的解決をうたった日韓合意を知っているか担当者にメールで尋ねた。結果的に設置は見送られたという。
韓国・釜山市と約30年交流を続けてきた福岡市。16年、日本総領事館前への慰安婦像設置が報道されると、市民の間に賛否両論が起きた。市は幹部級職員を頻繁に釜山へ派遣、日本での報道や市民感情を繰り返し伝えた。
認識のギャップは徐々に埋まり、両市民が安全に交流できるようデモなどの情報を事前共有するように。古島英治・国際交流課長は「粘り強く語り合うことこそ姉妹都市の趣旨にかなう」と語る。
総領事館前には今年、新たに徴用工像の設置計画が持ち上がったが、釜山市は像を撤去、所有者に返還した。
「自治体同士の交流に国家レベルの問題を持ち込むべきでない」。福知山公立大の富野暉一郎副学長(地方自治論)は「姉妹都市は国際的な背景や生活の違いを認めた上で、交流を深めていくものだ」と大阪市の対応を批判した。
サ市に像を寄贈した市民団体とも交流があるNPO法人「コリアNGOセンター」(大阪市生野区)の金光敏(キムクァンミン)事務局長は「戦時下の女性の人権侵害を許すなという米国世論に、吉村市長は国内政治を意識したパフォーマンスで応じた。
建設的な議論があれば碑文の内容にも改善の余地はあったはずで、とても残念だ」と述べた。
一方、北朝鮮による日本人拉致問題の解決に取り組む「大阪ブルーリボンの会」(同市中央区)の中林葵(まもる)代表は「問題が進展しない根底には過去の歴史を曖昧にしてきたことがあるのではないか。
姉妹都市の解消が吉村市長の高度な政治判断の結果なら、やむを得ない」と話した。【真野敏幸、林由紀子】
引用元: https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181002-00000119-mai-pol
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