連日の猛暑で、熱中症への意識も高まっている。職場での対策は十分だろうか。弁護士ドットコムにも毎年、切実な相談が寄せられる。
多くは社員の立場からのものだが、「職場の冷房が強すぎて体調が悪くなると主張する社員に対して、会社はどこまで対応するべきでしょうか」と、会社側からの相談も寄せられていた。
その職場では28度が設定温度。しかし「狭い部屋に人が密集しており、OA機器の熱もあるため、実際には30度近くになる席」もあるため、熱中症の危険から温度を下げることを検討している。
しかし、ある社員は「体調が悪くなる」と頑なに拒否。相談者は「寒いと言いながらその社員は十分な防寒をしません」と不満顔だ。
エアコンを使わせてもらえなかったり、逆に寒くなりすぎたりした結果、体調不良になる「エアハラ」(エアコン・ハラスメント)なる言葉もあるのだとか。とはいえ、28度は決して寒すぎる職場ではないだろう。設定温度を下げたら「エアハラ」になってしまうのか。法的には、職場の温度はどのように定められているのか。北江康親弁護士に聞いた。
●冷房は「25度」まで下げても問題はない
「結論から言って、現在の28度から25度まで下げても問題はありません」
法的には、どのように定められているのか。
「事業者には、労働者の健康に配慮して、労働者の従事する作業を適切に管理するように努めなければならず(労働安全衛生法第65条の3)、快適な職場環境を形成するために必要な措置を講ずる努力義務が課せられています(同法第71条の2)。そのために必要な措置についての指針が厚生労働大臣により公表されています。
労働者をとりまく空気の温度について、上記指針には『体感温度に個人差等があるため、平均的に設定された温熱条件下では、特定の労働者の不快感をなくすことができない場合には、局所的な冷房又は暖房等によって、個人差を補うこと』とあります。
建築物衛生法等の周知を目的とした『快適な暮らしのガイドライン』(財団法人ビル管理教育センター等作成)によれば、冷房するときの室温は、(1)室温25~28度 (2)外気との温度差 7度以内を目安にするようにと書かれています。設定温度を25度まで下げることは『平均的に設定された温熱条件下』の範囲の設定として問題ないと思われます。
ただし、それによって、今回特定の社員が『体調が悪くなる』と不快感が生じるのであれば、席替えや局所的な暖房等の措置による対策により個人差を補う必要があると思われます」
なお、今回「寒い寒い」と訴える社員は特段の防寒措置は行なっていないそうだ。このような場合、会社側から当該社員に対して、防寒を呼びかけても問題はないのか。
「労働者も労働災害防止のために、事業者などの措置に協力するよう努める義務を負っています。
今回、会社側がエアコンの設定温度を下げることは、熱中症の危険防止を目的としたものですので、それによって不快を感じる特定の社員に対して膝掛けを使用する等の必要最低限の防寒対策等の協力を求めても問題ないと思われます」
【取材協力弁護士】
北江 康親(ほくえ・やすちか)弁護士
2012年、兵庫弁護士会登録。労働問題や交通事故問題に関心を持ち、解雇、残業代、労災、交通事故の後遺障害などの事件に積極的に取り組む。趣味は野球で、兵庫弁護士会や地元野球チームに所属している。
事務所名:かみがき法律事務所
事務所URL:http://www.hokue-law.jp/弁護士ドットコムニュース編集部
引用元: https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180724-00008243-bengocom-life
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