疲労の色が濃くなってきた
7月、安田純平さんとみられる男性の3つの映像の存在が確認された。1つ目は7月上旬に公開された、2017年10月に撮影されたとする映像。
そして2つ目となるのが、7月中旬に確認された赤い背景の前で話す男性の映像だ。
男性は日本語で「私の名前はウマルです。今日の日付は2018年6月11日。長い時間ここにいます。助けて下さい。」と訴えた。
この映像を始めて見た時、以前と比べ男性の髪やひげには白いものが混じり、顔には疲労の色が濃く出ている印象を受けた。その後、7月下旬には、男らに銃を突き付けられた安田さんの映像が公開された。
これまで、このように短期間に連続して映像や画像が公開されたことはない。安田さんの身に何かしらの変化があったのか? 疑問に思った我々は、安田さんの現状を知る人物を取材した。
アルカイダ系の過激派組織が拘束
我々FNNの取材に答えたこの男性は、活動家仲間を通じ、安田さんを当初拘束していた国際テロ組織アルカイダ系の「ヌスラ戦線」から、たびたび安田さんの映像や情報を入手し公開してきた。
8月上旬に、男性に安田さんが置かれている現状や、連続して映像が公開された背景について事情を聞いた。–安田さんを現在拘束しているのは?
男性:
「フッラース・ディーンというシリアのアルカイダだ。2015年に安田さんがシリア入りした時に彼を拘束したのは、ヌスラ戦線の中の一つの組織だった。その後、その組織がヌスラと袂を分かち離れ、安田さんはこの1カ月半から2ヶ月前にその組織からフッラース・ディーンに売り渡されたのだ。」–フッラース・ディーンとはどのような組織なのか。
男性:
「フッラース・ディーンはアルカイダに属する過激な組織だ。戦闘員は約1500人~2000人いるとされ、宗教的にも、倫理的にも過激だ。仲間であっても、対立があれば殺し合いにつながる」拘束の目的は「金」
–彼らの目的は男性:
「もちろん安田さんの解放に対する見返り、つまり金だ。1年前にヌスラ側が要求してきたのは150万ドルだった。金額は変わる可能性もあるし、50万ドルくらいにはなる可能性もある。だからビデオ公開の第一の目的は、金の交渉を成立させたいということなのだ」–安田さんの現状や健康状態は
男性:
「私が、人づてにきいた話だと、4月から6月にかけて、彼は3度、自殺しようと試みたそうだ。彼の健康状態は以前からずっと悪いままで、精神的にも肉体的にも衰弱してしまったということだろう。何を食べているかなど生活の基本的なことについては何も聞いていない」–安田さんが映像で「韓国人です」と発言したことについては
男性:
「なぜ韓国人と言ったのかはわからない。精神的に相当追い詰められたためではないか」一連のインタビューとともに、映像が連続して公開された背景についても尋ねた。
男性によると、7月上旬と中旬に確認された1つ目と2つ目の映像は、安田さんの身柄がフッラース・ディーンに渡される前に撮影されたもので組織の仲介者を通じて拡散された。一方、7月下旬に公開された銃を突き付けられている3つ目の映像は、フッラース・ディーンが撮影し公開したものだという。
男性は、「安田さんがフッラース・ディーンのもとに移って1か月半から2ヶ月くらいが経つが、彼が今どんな状況なのか全くわからない」と話し、フッラース・ディーンからの情報入手は難しいと付け加えた。
今回のインタビューで明らかになったのは、
1)拘束されて3年という長い時間が経ち、安田さんの処遇を巡って拘束している組織や扱いが変わってきていること
2)安田さんの体調が悪化しているということ
この2点だ。一方で、フッラース・ディーンからの要求は今のところ具体的には明らかになっていない。今後シリア北西部を巡って政府軍と反体制派の戦いは激しくなっていくとみられ、安田さんが戦闘に巻き込まれる懸念も高まってくる。
日本政府は「解放に向けて全力で取り組む」としていて、安田さんの一刻も早い解放が待たれる。(執筆:FNNイスタンブール支局長 内橋徹)
引用元: https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180817-00010008-fnnprimev-int
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