7月22日午後7時30分ごろ、ソウル方背(パンベ)駅を通過するソウル地下鉄2号線の電車の中。「うう、これは何のにおいだ」。乗客Aさんはあわてて鼻をつまんだ。飲食物のにおいが漂う場所では恋人とみられる若い男女が並んで座ってハンバーガーを食べていた。
密閉された列車の中で身動きもできないまま飲食物のにおいをかがなければならなかったAさんはむかむかした。辺りを見回すと、一部乗客もハンバーガーを食べているこの2人の男女をちらちらと横目で見ていた。
Aさんは地下鉄1~8号線を運営するソウル交通公社コールセンターを通じて苦情を出した。Aさんは「窓も開けられない電車の中で飲食をしないことは基本エチケットではないのか」と吐露した。
「地下鉄内での飲食」をめぐって不便を訴える市民が急増している。ソウル交通公社コールセンターに寄せられた「電車内の飲食苦情件数」は2016年233件から昨年572件に約2.5倍に増えた。今年も昨年の件数をはるかに超えるものとみられる。
今年1~6月上半期、苦情件数だけで過去1年よりも多い574件だ。先月から今月初めまでに寄せられた苦情を詳しく見てみると、一部市民が電車内で食べるものは多様だったことが分かった。
弁当・ピザ・チキン・トースト・ハンバーガーなどいわゆる「嗅覚テロ」ともいえるものから、カップラーメン・アイスクリーム・コーヒー・酒のように液体がこぼれ出るか流れやすいものもあった。
地下鉄内への飲食物搬入・摂取禁止」を要求する声が高まっている。青瓦台(チョンワデ、大統領府)国民請願掲示板には、昨年12月から今月2日まで「地下鉄内の飲食物摂取を規制してほしい」という請願が5件寄せられた。
SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)では地下鉄内の飲食によって体験した不快感を吐露しながら「電車内に飲食物を持ち込ませないようにするべき」「電車内で飲食した場合、罰金を払わせるべき」と主張するコメントが少なくない。
台湾とシンガポールでは地下鉄で飲食すると、それぞれ最大約28万ウォン(約2万7900円)と約40万ウォンの罰金が課される。
バスではすでに今年1月4日からバスの運転手が飲食をする乗客を下車させることができるようになった。また、バスの中で食べることができるような、いわゆる未包装の飲食物は持ち込むことができない。
昨年末、市議会で「市内バス財政支援および安全運行基準に関する条例」が改正されたことに伴うものだ。ソウル交通公社関係者は「バスでの飲食禁止後、『地下鉄でもバスのように飲食をできないようにしてほしい』という要求が生じている」と説明した。
最近、ソウル交通公社や仁川(インチョン)交通公社など首都圏の6カ所の都市鉄道運営機関が参加した協議会では、この問題が扱われた。地下鉄利用市民の不便が大きいという判断からだ。だが、会議の結果、「地下鉄内の飲食物搬入・摂取禁止は難しい」という結論が出てきた。
ソウル交通公社関係者は「運転手が一人ひとりの乗客をしっかり見ることができるバスとは違い、地下鉄内の飲食物は規制が容易ではない」と伝えた。
ソウル交通公社「旅客運送約款」によると、「不潔・悪臭で他の乗客に不快感を与えるおそれがあるものは携帯禁止」となっている。だが、飲食物がこれに該当するかどうかについては、解釈が分かれるところだ。
「バス内の飲食禁止」は市民権を得つつある。ソウル市関係者は「今年3月からバスと停留場にテイクアウトした飲食物の持ち込み禁止を知らせるピクトグラムをつけてから、バスで食べるつもりのものを持って乗り込む乗客が以前に比べて80~90%程度減った」と説明した。
一日平均利用乗客が約777万人のソウル地下鉄でも対策が必要だという指摘が出ている。ソウル交通公社は1~8号線列車内や乗降場(プラットホーム)に設置されているモニターを通じて「電車内の飲食は控えてほしい」という内容の広報映像を流している。
だが、このモニターが成人の背丈よりも高い位置に設置されているため、市民の視線を画面にうまく引っ張ることができない。会社員のチョン・ヘミさん(29)は「少なくとも、よく見える場所に飲食物摂取の自制を伝えるピクトグラムやキャンペーンポスターを貼る形で、市民啓蒙のために積極的な努力をする必要がある」と話した。
引用元: https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180710-00000002-cnippou-kr
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