進む老朽化、進まないアパート建設行きたくても、行けない場所。日本人にとって、北方領土はそんな場所だ。日本政府はこの地域を「ロシアが不法占拠している」として、日本人の立ち入りを墓参や交流などに限定している。
22日には日本人元島民が墓参で島を訪れたときに衛星携帯電話をロシア当局に没収されるトラブルも起きた。そんな島に住み続けるロシア人の間でいま、住宅問題が深刻な課題になりつつある。地元ジャーナリストらの力も借りてリポートする。(中川仁樹)
色丹島の海沿いにある丘の斜面に、2階建てのアパートが並んでいた。きれいに塗り直したものもあるが、多くは青やグレーで、屋根や壁は色あせている。
北方領土の住民にとって頭の痛いのが住宅問題だ。住人のマブリュダー・ハルチェンコさん(39)は「アパートの多くは木造で、70~80年代に建てられたものだ」と話す。新しい公営アパートの建設が進まないためだ。
しかも色丹島は1994年の北海道東方沖地震で大きな被害を受けた。ハルチェンコさんのアパートも半壊し、その後、修理して使っている。「いまは問題はない」と言うが、老朽化が進めば新たな問題が出てくる可能性もある。
もっとも、ロシアでは建物の外観は古くても、室内はきれいに改装されていることが珍しくない。ハルチェンコさんに家を見せてもらった。
アパートは入り口が3つあり、それぞれ1階と2階に合わせて4室、全体では12室となる。階段はいかにも旧ソ連のアパートと言った趣で、パイプや配線がむき出し。玄関の横の壁には大きなひびも入っている。
ハルチェンコさんは夫と8年生の娘ソフィアさんの3人暮らし。アパートは82平方メートルの広さで部屋は3つある。日本のアパートなら広めだが、島では平均的な広さだという。
「アパートは広くて、窓からの眺めがきれいなのが気に入っている。船が近付いてくるのが、よく見えるのよ」
中に入ると、やはり部屋はきれいに飾られ、まったく古さを感じさせない。リビングはバラの花の壁紙が印象的で、天井や床もきれいな素材に交換済み。
ソフィアさんの部屋も十分な広さのクローゼットに大きなベッドがあり、壁には相対性理論で知られる物理学者アインシュタインが舌を出した有名な表情のイラストも。もちろん机にはパソコンもある。
キッチンも棚がたくさんあって収納たっぷり。使い勝手が良さそうだ。ガラスのテーブルもお気に入り。コンロやオーブンは電気で電子レンジもある。「得意料理はマンティ(中央アジア風の小籠包)。おいしいのよ」と笑う。
ただハルチェンコさんは進まぬ公営アパートの建設にしびれを切らし、自ら家を建てた。「すぐに引っ越すわ。次は暖房も電気になるの」
引用元: https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180726-00010000-globeplus-int
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