【ワシントン=黒瀬悦成】トランプ米大統領が24日、ポンペオ国務長官による北朝鮮訪問を急遽(きゅうきょ)中止させたのは、非核化措置の具体化を求める米国と、制裁緩和など見返りの先行実施を要求する北朝鮮との立場の隔たりが一層鮮明になったためだ。
6月12日の米朝首脳会談で、トランプ氏が金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長と「非核化」の定義や道筋について厳密に確認せず、拙速に非核化プロセスを進めようとした代償がついに表面化してきたといえる。
関係筋によると、トランプ政権は今回の訪朝に際し、北朝鮮に保有核戦力の実態開示など、非核化に向けた具体的措置を要求する構えだった。しかし、北朝鮮はその前提として、朝鮮戦争(1950~53年)の終戦宣言を行うべきだとして譲らず、米朝の事前協議は難航していた。
国務省としては、たとえ成果が少なくても、今回の訪朝を通じて「対話を積み重ねる」(ナウアート報道官)ことで交渉の機運を維持する狙いもあった。
しかし、ポンペオ氏による先月の訪朝に続き、今回も金氏と会談できる見通しが立たず、「交渉停滞」の批判がこれ以上強まるのを回避したいトランプ氏としては中止を決断せざるを得なかったとみられる。
ただ、今回の対応に関しては「非核化の進展ぶりが不満であるならば、むしろポンペオ氏を訪朝させて北朝鮮に直接伝え、(事態打開に向けた)具体的提案をすべきだ」(政策研究機関「軍備管理協会」のダリル・キンボール事務局長)などの批判や懸念も強い。
一方、トランプ氏が先の首脳会談を受け、「北朝鮮の脅威はなくなった」などと発言したことも、中国やロシアに対北朝鮮圧力を緩和する口実を与えるという痛い誤算を生んだ。
特に中国は、北朝鮮の「後ろ盾」としての存在感を改めて誇示し、米中貿易摩擦の収拾に向けた取引材料にする構えを強く打ち出しつつある。
トランプ政権が中朝双方に厳然とした姿勢を維持するのであれば、両国に対する追加制裁で対抗していく事態も想定される。
引用元: https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180825-00000553-san-n_ame
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