民間研究機関が発見した資料に基づいて産経新聞が2003年に伝えているが、終戦時に日本人が朝鮮半島に残した個人財産は、報道当時の価格にして4兆9千億円になるという。韓国で1965(昭和40)年の日韓請求権協定を覆す司法判断が出たことで、思い出した。
韓国最高裁が新日鉄住金に対し、「元徴用工」4人に総額4億ウォン(約4千万円)の賠償を支払えとの判決を確定させた。
「日韓の法的基盤が根底から損なわれた」(河野太郎外相)のだから、韓国側はこれを修復しなければならない。しかし、むしろ日本企業の賠償支払い基金への参加など、日本側の歩み寄りを模索しているという。
この問題は、両国関係泥沼化の“鉄板”のサイクルに、ぴたりとはまっているから、長期化する。
両国がもめるネタが韓国国民に浸透する過程では、(1)反日の土壌に日本統治時代の“記憶”が目覚め(2)共感・同調圧力が作用し
(3)「人権」やプライドの問題とすり替えられて活動が組織化し(4)司法・行政府が世論を忖度(そんたく)した判断や方針を示して公認し
(5)日本に善処を要求する-という流れが繰り返されてきた。慰安婦問題、かつて筆者が当事者となった朴槿恵(パク・クネ)前大統領との法廷闘争、さらに「旭日旗」問題もそうだ。
今回の判断を受け韓国政府は李洛淵(イ・ナギョン)首相名で、司法判断を尊重▽対応策を準備▽日韓関係を未来志向的に発展させることを希望-と表明した。
これは定石パターン(4)の段階に来たから、次は(5)になっていくので、よろしく-と読み替えると理解しやすい。
あまり言及されていないが、今回の訴訟は今後、世界展開し「日本は人道犯罪を認めず、謝罪も賠償もしない」という認識を広めるために利用される恐れがある。“第2の慰安婦問題”化である。
「元徴用工」の個人請求権が日韓請求権協定で消滅したとする従来の判断を韓国最高裁が否定した2012年から、日本企業が敗訴した13年の差し戻し審にかけ、ソウルで関係弁護士の説明会や支援者の集会を取材したことがある。
そこで必ず出たのが「日本が植民地化したこと自体が違法だ。人権を踏みにじられたお年寄りを救済しないでいることに日本人として心が痛まないのか」という論法だった。
朝鮮半島統治という歴史に、人権を絡めるのは当時から一貫していたのだが、一方で今回の勝訴を受け、代理人弁護士が韓国SBSのインタビューで明かした言葉は興味深い。
「日本政府が賠償も和解もするなという指針を示したことは重大な人権侵害」
「外国に新日鉄住金の財産があり、その国が韓国の判決を承認すれば、その財産を強制執行(で差し押さえ)できる」
人権問題を絡めたうえで、日本での民事訴訟や欧米、東南アジアなど第三国での強制執行手続きも視野に入れているというのだ。
強制執行が認められなくとも、第三国での争いには現地で対応しなければならない可能性がある。日本政府や企業の労力は決して小さくないし、日本企業を誤解する向きも現れよう。韓国政府が認定した「元徴用工」(故人含む)は約22万人とされ、韓国側が“数と広がり”で攻めた場合、日本に対抗策はあるのだろうか。
日本政府は現在、国際司法裁判所(ICJ)への提訴も辞さない構えだ。韓国側が裁判に同意しなければ無意味との見方もあるが、「不同意の説明義務が生じる。韓国の司法判断には国際的に通用しない部分があり、弁明はかなり苦痛になる。
現に韓国側は竹島問題などで提訴しないよう懇願してきたことがある」(外務省幹部)。それでも韓国が事態収拾に動かないならば、朝鮮半島に残した個人財産の半額ほどを、韓国に請求してみるのはどうだろうか。(加藤達也)
引用元: https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181104-00000508-san-kr
ネットの反応