人生では往々にして表面だけまねた偽物と向き合うことがある。格好だけ似せて一番重要な中身はいい加減、というものだ。数年前、ある英国外交官が嘲笑しながら教えてくれたロンドンの扇情的大衆紙のやり口がまさにそれだった。
彼らは金曜日午後4~5時ごろ、外務省に電話をかけて「年間の海外公館のクリスマスツリー購入費はいくらか」のような呆れた質問をするという。そのような資料があるはずもなく、ましてや退勤直前に正確なデータを出すことすら不可能だ。
このため「今は教えることはできない」と言えば、数日後、「海外公館のクリスマスツリーに巨額支出、外務省は回答拒否」という記事が1面に掲載されるという。反論も受けたと言い張るための手口だ。
あえて遠い国の話をここで引き合いに出したのは、最近、韓国政府のやり方がこれを似ているからだ。先月末、マイク・ポンペオ米国務長官が康京和(カン・ギョンファ)外交部長官に電話をかけて激怒したハプニングがこれに似ている。
彼が爆発したのは、平壌(ピョンヤン)南北首脳会談時に交わされた軍事合意書に関して十分な説明と協議がなかったためだという。
韓国外交部は「米国と緊密に協議してきた」と主張している。どれくらい協議したのか知らないが、会談直前、それも説明が不十分だと相手が感じたのであれば、それ自体が問題だ。形式だけ整えるための表面的で姑息なやり方だという批判を避けることはできない。
今回だけではない。昨年7月、韓国政府が突然、南北対話を提案した時も全く同じだった。数カ月後、ワシントンで会った米国務省内の韓国担当者は「発表前日、韓国側から一方的に通知してきた」として怒りをあらわにした。
米国は、韓国が北朝鮮政策を決める時、このようにいい加減にあしらってもいいような存在なのか。そんなわけがない。何よりも米国は韓半島(朝鮮半島)平和プロセスの一つの軸をなす利害当事国ではないか。
世界最強の経済大国・米国と交流してこそ豊かに暮らせる可能性があることを金正恩(キム・ジョンウン)政権はよく知っている。このように、北朝鮮の目標は米国との国交正常化だ。だが、これは我々の思い通りにできることなのか。
また、韓半島非核化、さらに一歩踏み込んで、統一を左右する中国を何とかできるのは米国をおいてない。南側主導での統一の可能性が高まれば、中国が待ったをかける公算が大きい。親米政権が支配する統一韓国が面白いはずがない。
特に、在韓米軍が鴨緑江(アムノッカン)まで進出してくることは絶対に受け入れないだろう。このような中国の心を変えることができるのは米国だけだ。統一を前提に、もしかしたら米国が在韓米軍を撤退させる決断を下さなければならないかもしれない。
ドイツ統一でも米国の役割は決定的だった。1980年代末、ジョージ・H・W・ブッシュ政府は統一を追求していたヘルムート・コール首相に同情的だった。そしてブッシュ大統領は西ドイツのために何度も汚れ役を買って出た。
統一ドイツに反対の英国とフランスを説得し、ソ連をなだめるために大規模援助を実現したのも彼だった。
このように統一へと向かっていけたのは、コールとブッシュの間の深い信頼が作用していたからだ。2人の関係はブッシュが副大統領だった1983年、西ドイツで開かれたある行事で深まった。
このころ、極限に達していた反米デモ隊が、突然、行事場所に乱入して投石を始め、2人はあわてて近くの地下駐車場に避難しなくてはならなくなった。
このとき、コールが当惑した表情を見せるとブッシュは落ち着きながら「こうしたことは米国でよくあることだ。心配するな」と元気づけたという。
これに感激したコールはブッシュに好感を持つようになり、4年後にブッシュが大統領になって2人の友情はさらに深まり、ドイツ統一のけん引役を果たすことになった。
これほどとは言わないまでも、南北交流、さらには統一のために、韓国政府は米政府と積極的に疎通して彼らの心をつかまなくてはならない。
「統一は我々民族だけで」という主張は北朝鮮の宣伝スローガンの中だけの話だ。周辺列強を無視したまま安保・統一政策を強行すれば失敗することになっている。
引用元:https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181016-00000031-cnippou-kr
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