教育評論家の親野智可等先生が、保護者からの質問にお答えします。
今週の相談
保育園へ行くと乱暴な言葉を覚えてきます。保育園に行かせるということは、そういうリスクがあるのはわかるのですが、どうにかならないものかとも思います。(北斗星)
【親野先生のアドバイス】
北斗星さん、拝読いたしました。これはそうだと思います。これは常にそういうものなのです。
私も、保育園や幼稚園の先生から聞いたことがあります。保育園や幼稚園の先生たちは、よく親御さんたちからこのような相談を受けるようです。それは、小学1年生を担任する先生たちよりも多いのではないでしょうか。
保育園や幼稚園に入る前の子どもたちは、とてもせまい人間関係のなかで生活しています。それは、親、兄弟、家族、親戚と近所の子どもたちなどです。ところが、保育園や幼稚園に入ったとたんにその人間関係の幅は一気に広がります。
今まで出会ったことのないような子とも出会い、そして、付き合いが始まります。そのなかには、乱暴な子もいればおとなしい子もいます。
うまが合う子もいれば合わない子もいます。また、自分たちの生活にはありえないような乱暴な言葉を使う子もいます。そして、そのような子とも友達づきあいが始まるのです。
当然、言葉遣いも影響を受けます。それに、なぜか乱暴な言葉というのは伝染しやすいのです。その理由は二つあります。一つ目として、そういう言葉はかっこよく聞こえるということがあります。そして、そういう言葉を使うと、自分が大きくなったように感じるのです。
たとえば、それまで「あなた」とか「○○ちゃん」などという言葉のなかで育ってきたA君ににとって、「おめえ」とか「てめえ」などという言葉は、どう響くのでしょうか?大人にとっては、乱暴な言葉という印象が強いのですが、A君にとっては必ずしもそうではありません。
A君はその言葉に、「乱暴」と同時に「強さ」や「たくましさ」も感じるのです。そして、A君は、そういう言葉を使えるB君に一種のあこがれさえもちます。そして、自分もそういう言葉を使うことで、「強さ」や「たくましさ」を出してみたくなるのです。
このあたりの心理は、思春期の中高生を思い浮かべればよくわかります。彼らは、自己主張したり大人に反発したりする強さをもちたいために、乱暴な言葉を使います。「うぜえ」とか「ざけんじぇねえよ」などというのがそれです。保育園や幼稚園で起きることも、基本的には同じなのです。
二つ目として、仲間意識を高めるために乱暴な言葉を使うということがあります。これもまた、思春期の心理と似ています。ですから、保育園や幼稚園の子が乱暴な言葉遣いになってきたというのは、ある意味で、仲間関係がうまくいっているということの表れでもあるのです。
これらの心理は、幼児期、児童期、青年期のいずれにおいても必ずあるものです。それは、成長にとって不可欠なものですらあります。
このようなわけで、私は、幼児期の乱暴な言葉にあまり神経質にならなくていいと思います。ただし、あまりにも度を過ぎる場合は、大人の側からのたしなめが必要です。
たとえば、「そういう言葉を言われたとき、どう感じた?」とか「あなたは、自分が『てめえ』って言われたとき、どう感じた?」などと聞いてみるといいと思います。「嫌な気持ちがした」などと子どもが答えたら、「そういう言葉は使わないようにしようね」と言ってやってください。
「そういう言葉を聞いていると、なんだかこわくなってくるよ」とか「そういう言葉は、お母さんは好きじゃないよ」などと言ってやるのもいいでしょう。「聞いていて気持ちのいい言葉じゃないね」とか「言っている人が乱暴者だと思われるよ」などもいいでしょう。
ただし、「そういう言葉を使うと先生に叱られるよ」とか「そういう言葉を使うと、お父さんに叱ってもらうよ」などという言い方は、やめてください。それは、筋が違う教え方だからです。
それと平行して、子どもがいい言葉を使ったときには大いにほめてやるといいと思います。「ありがとう」「お願いします」「がんばってね」などの言葉が出たら、ぜひほめてやってください。また、人を気遣う言葉や優しい気持ちの表れている言葉が出たときも、同じです。
私ができる範囲で、精いっぱい提案させていただきました。少しでもご参考になれば幸いです。北斗星さん親子に幸多かれとお祈り申し上げます。
プロフィール
親野智可等
教育評論家。23年間の教員生活のなかで、親が子どもに与える影響力の大きさを痛感。その経験をメールマガジンなど、メディアで発表。全国の小学校や、幼稚園・保育園などからの講演に引っ張りだこの日々。
※この記事は「ベネッセ教育情報サイト」で過去に公開されたものです。
引用元: https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180426-00010003-benesseks-life
みんなのコメント
なんとなく周りのマネをしたいだけとか、そう言った時の大人の反応が新鮮で面白くてつい使っちゃうだけとか、そんな感じがする。
ブランドで身を固めるのと似たようなもので、お流行りの言葉を使いこなす自分は格好いいと思えるのでしょうね(笑)。
正しい日本語で確かに相手に伝わるよう心掛けたいと思います。
クレヨンしんちゃんは幼稚園児という設定でああいう下品な話連発ですが?
子供を純粋培養したって健全には育たんよ
なんで保育園限定なのか。
保育園も幼稚園も同じでしょ
乱暴な言葉を使うっていうことはその園児の周りに乱暴な言葉を使っている大人がいるはずです。
子どもはただ真似をしているだけ。
つまりこの園児の親や身内、友人達の中に乱暴な言葉を使っている大人がいるからです。
大人になって人前でそんな風に話す人いないし。大丈夫だよ。
最終的には、家庭内の言葉遣いや、仲の良いお友達との会話に引きずられていくから、よほどアレな子が周囲にいない限りはゆるーく見守るのがいいかなと思う。
死ねだのなんだの、あまりに乱暴な言葉だけは注意しつつ。
よほど酷い時は、真面目に注意しましたが、自然とだんだん落ち着いてきましたよ。
周りにいる大人が暴力的な言葉を使わなければ、神経質にならなくても大丈夫な気がします。
大人になってから暴言に潰されたら、そちらの方が問題。
大学でも会社でも面接はうまくいきました。長男は私の前では、オレとか言いません。(ぼくが言わないからだな)w
でも、根気よく教えていれば、大抵の場合は使わなくなるんじゃないかなぁ。
使っている方がカッコ悪いなぁって思うんじゃないかなぁ。
保育園でどうでもテレビがどうでも
親がしっかりとしていればそれで片付くと思う。
さらにベネッセがこうすればいいという提案の部分だが
乱暴な言葉遣いをする子供に対して
「そういう言葉を聞いていると、なんだかこわくなってくるよ」
なんでこんな下から子供に接するように提案をするんだろうか。
子供はしっかりと親を見ている。
親が怖くなってくるとかいうと完全に子供はやめるどころか
親を怖がらせることができると勘違いをはじめる。
子供に擦り寄るように注意するより
注意するときはしっかりとキツく注意すべきだと思う。
問題はどう使うかであって、それを教えるのが親の役割。
違うか?
反抗期の一時期は、今まで覚えた乱暴な言葉使いの総パレードになるけどね・・・。親子共々辛いけど、今後自立していくための親子の良い意味での分離を促し、一人の人間として尊重することを親子で学ぶ必要な時期なんじゃないかって思う。
ち○ち○ぶらぶらソーセージっ!って言ってた時には30年まえの幼児(自分)と変わんない!って笑ってしまったわw