メッシ(アルゼンチン)やネイマール(ブラジル)らサッカーワールドカップ(W杯)ロシア大会で活躍したスター選手たちの腕や首には、派手なタトゥー(入れ墨)が施されていた。「アウトローの象徴」的な認識が海外では近年、改められつつあるという。
一方、日本では温泉やプールでの「入れ墨お断り」の看板が目立つ。ラグビーW杯や東京五輪などで外国人客が急増すれば、トラブルが多発する可能性もある。
この問題とどう向き合うか。入れ墨をはじめとした装いの研究を専門とする山本芳美さんに聞いた。(聞き手・読売新聞メディア局編集部 久保田稔)
アメリカ成人の21%は「タトゥーあり」
半袖でプレーする選手が多いサッカーはそもそもタトゥーが目立ちやすいが、それにしても今大会はよく目に付いた。
サッカーに詳しい友人によれば、3大会前のドイツ大会(2006年)までは、腕や首などの露出する部分に大きなタトゥーを入れた選手はあまりいなかったという。
日韓大会(02年)で大ブームを巻き起こしたベッカム(イングランド)も背中や腕などにタトゥーを入れているが、近年はともかく、当時はほとんど見せていなかった。
海外でのタトゥーの流行はスポーツ選手だけに限らない。米国の世論調査会社が12年に行った調査では、タトゥーがあるアメリカ成人は21%に上った。
15年にベルギーで開かれた「タトゥーと健康」に関する学会向けの報告書では、欧州の成人人口の10~20%に当たる約1億人がタトゥーを入れているとされた。
これは特別な理由があってというよりも、ストリートファッションに見るように、個人のスタイルや嗜好(しこう)に基づく選択として定着したと考えてよいだろう。
実際、一昔前の「アウトロー」的な印象はかなり薄れていると思う。3年前の夏にニューヨークを訪れた際には、地下鉄でウォール街方面に向かう人々の袖口からタトゥーがのぞいているのを見た。
ファッション化…源流は王族の「おしゃれ」
こうした海外での流行の背景に、二つの動き(ムーブメント)があることを指摘したい。一つはタトゥーを「ファッション」と捉える人が増えていることだ。
現代のタトゥーブームは、19世紀末から20世紀初頭にかけて、英国王ジョージ5世、ロシア皇帝ニコライ2世ら欧州の王族の間で流行し、同時期に一般の人々にも広まったのが源流とされる。
20世紀半ばには「悪趣味」「犯罪者のよう」などと敬遠されて下火になったが、80年代ごろから英国ではパンクロックなどの影響で再び脚光を浴び、専門誌が発行されるなど、関心を持つ人や実際に体に入れる人が増えた。
タトゥーを施すアーティストの数も増え、図柄も美的で洗練されたものへと進化した。ベッカム、ネイマールら世界的アスリートのタトゥーに注目が集まり、「ドラゴン・タトゥーの女」(2011年、アメリカ)、「ウォンテッド」(08年、同、主演=アンジェリーナ・ジョリー)など、タトゥーが印象的に描かれた映画も話題になった。
ちなみに、メッシやネイマールの腕を覆っていたタトゥーは「スリーブ(袖)」と呼ばれ、片腕に入れるのが格好良いとされているそうだ。
引用元: https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180723-00010000-yomonline-life
みんなのコメント
個人の自由をあまりにも尊厳しすぎた結果
やりたい人を尊厳して見たくない人を尊厳しないのが2010年代なんだろう