仕事中に弁当を注文したため、減給処分ーー。神戸市水道局の職員に関するこんなニュースが6月中旬に報じられ、ネットで話題となった。神戸市水道局の担当者によると、同局の男性職員(60代)は2017年9月~18年3月の間、勤務時間中に、近くの飲食店に弁当の注文をするため、3分程度の中抜けを26回した。男性は午前11時~11時半ごろになると、庁舎から約100メートル先にある近くの飲食店に行き、弁当を事前に注文。昼休みになると再び店を訪れ、弁当を受け取っていたという。
今回の処分の背景には、市民からの通報も関係しているようだ。担当者によれば、職場と現場を往復する間で、職員が公用車でコンビニに寄っているのを見たといった通報が、年1~2回寄せられていた。
地方公務員は、業務時間内は職務に専念する義務がある(地方公務員法35条)。同局では、勤務時間中に公務以外の目的で職場を離脱する事例について、事あるごとに文書や朝礼で注意喚起を行なっていた。
担当者によれば、神戸市の懲戒処分の指針で、職場離脱は減給または戒告に当たる。注意喚起する中で起きたことや常習性もあるなど判断して、より重い処分の減給(半日分)となった。
今回の報道を受け、水道局には「厳しすぎる」「勤務時間中に何をやっているんだ」など賛否両論が寄せられているという。今回の懲戒処分は妥当なのだろうか。田村優介弁護士に聞いた。
●働く人には職務専念義務がある
「公務員も、民間の雇用契約でも、働く人は、職務に専念する義務を負っています(地方公務員法35条、労働契約法3条4項)。一方で、労働者はロボットではなく人間ですから、就業時間中であっても、ある程度の私的行為は、当然に認められます。
職種にもよりますが、例えばトイレに行くこと、飲料を摂取すること、過度ではない私的会話や喫煙などは、許容されているのが現在の社会通念であるといってよいと思います」
●「外出」がポイント
昼休みになる前に弁当を電話注文することは、「ある程度の私的行為」とは考えられないのでしょうか。
「『ある程度』の範囲を考えるには、会社(地方公務員の場合は当該地方自治体など)が、どのような方針をとり、どのような説明を行っていたかも大きく影響すると考えられます。
今回のケースは、弁当の注文をした『時間帯』に注目が集まっているようですが、処分に至った理由は、注文のために『外出』していた点が問題視されたのだと思われます」
神戸市水道局によれば、注文するために職場から外出していたことについて、以前から注意喚起が行われていたようです。
「職場離脱、つまり勤務時間中の外出について、自治体や会社等が明確に禁止をしていたという実態があれば、禁止を常習的に破った場合には、一定の処分もやむを得ないと考えられます。
つまり、今回の処分は、再三の注意にもかかわらず、勤務時間中に弁当を注文するために職場を離れたことが職務専念義務違反だとして処分されたのです」
一方で、今回の処分があまりにも重すぎるという声が国内外でも上がっています。
「ニューヨークタイムスやCNNなど海外メディアからは、『日本の過酷な労働文化』の一例として取り上げられていますね。再三の注意があっても改善しなかったことから処分に至ったのだとは思いますが、『重すぎる』と言う意見が出ることは個人的には理解できます」
神戸市は今年2月にも、勤務時間中に何度も弁当を買いに行っていた職員を停職1カ月の処分にしています。同市環境局の担当者によれば、平均して30~40分、日によっては昼休み1時間前から抜け出していたようです。
「今回の処分は、この懲戒処分とのバランスを考慮して行われたようにも見受けられます」
【取材協力弁護士】
田村 優介(たむら・ゆうすけ)弁護士
ブラック企業被害対策弁護団副事務局長、日本労働弁護団。残業代請求、不当解雇、パワハラなど、労働問題を多く手がける。共著「働く人のためのブラック企業被害対策Q&A」など。
事務所名:城北法律事務所
事務所URL:http://www.jyohoku-law.com/弁護士ドットコムニュース編集部
引用元: https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180630-00008113-bengocom-life
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