年甲斐もなく繰り返される過ち
ダイエットをしない代わりに「暴飲暴食をやめる」よう心がけている。さらに上の段階にあるのが、最後の一口をぐっと我慢して「完食をやめる」ことで、かなり強く意識しないと実践が難しい。それはこの前半生が「食べ物を残してはいけない」という躾に厳しく縛られてきたからだ。
私は昭和末期の生まれ、飽食の時代にあって戦中戦後を生き抜いてきた年長者たちから「出されたものは残さず何でも食べる」ようにときつく言われて育った。
とくに我が両親は大変に強靭な胃袋の持ち主で、70代手前の今もまだまだ現役の食い道楽だ。おふくろの味は濃くて脂っこい家庭料理、それを「残してはいけない」とだけ叱られていたのだから、そりゃあ思春期にむちむち太りもする。
実家から独立して一人暮らしを始めた途端にすとんと痩せて、自炊を始めただけで薄味好みになった。よく噛んでゆっくりマイペースで食べ、徐々に胃袋を小さくすることにも成功した。40歳を目前に控えた今はもう、昔のように深夜3時にラーメンを作り始めたり、朝の起き抜けにカツカレーを食べに出るような暮らしは、していない。
それでも長年しみついた食習慣の中には、簡単に変えられないものもある。目の前にあると箸が止まらないものがある。私の場合、砂糖やクリームを使った甘いスイーツよりは、唐辛子マーク付きの激辛料理。ハイカロリーな高級珍味よりは、安くて体に悪そうなジャンクフード。
臭みのある肉や、あたりやすい生ものも大好きで、メニューにあるとついつい頼んでしまうし、他の誰かが皿に残していると率先してさらってしまう。それは単なる胃袋の空腹ではなく、「魂の空腹」なのである。
あなたの周囲にも、きっといるはずだ。40代50代になっても、若い頃と同じ食生活を続けている人たち。大酒を飲み、唐揚げを頬張り、弁当箱を二秒でカラにして、辛味と脂味をマシマシに盛り、隙あらば食べ放題や飲み放題のプランを選ぼうとする人たち。
そのことで明らかに体調を崩しているのに、ウコンや胃腸薬を片手に、崖っぷちまで全速力で駆け抜けるチキンレースに似た感覚で、もう若くはない身体を痛めつけ続ける人たち。
なかなか治らない、自力では治せない。頭でわかっていても、年甲斐もなく、同じ過ちを繰り返してしまう。彼らを見ると、ああ、「魂の空腹」が満たされていないのだな、と思う。
無理をしないで残していい
かつて私もそうだった。刺激物や劇薬を摂取することで自分がトンガッた存在になれると思っていた節がある。限界ギリギリまで無茶な行動をする人間のほうが、抑制のきいた振る舞いの無難な人間よりも面白いとか、優れているとか、勢いがあるとか。
そんな賞賛を求めて、消化能力ギリギリまでキツい味のものばかりを貪(むさぼ)っていた。胃袋が満ちていても、何か別のものに飢えていたのだ。
二言目には「それ、残すのもったいないから、食べちゃいますね」とも言っていた。みすみす食べ物を余らせて無駄にすることが何より恐かったのだ。でも、それが本当に世界の食糧廃棄率を憂えての行動だったかは疑わしい。むしろ、何かを直視しなくて済むように、夢中で皿を空にしていた。
それは食い気というよりは、色気に近いものだったと思う。「やっぱりあのとき食べておけばよかった」と後になって悔やみたくない。
合宿の晩に最後まで眠れない子供のようだ。自分の知らないうちに何か楽しいことが起きていたらと思うと気が気でない。身体の内側から生まれ出づる充足感よりも、外側、周囲ばかりを窺(うかが)って損得を考えるような、そんな気持ちが大きかったのではないか。
食べ物を粗末に扱わぬように、一度よそったものは責任持って全部食べなさいと説く。それは悪い教えではない。
ただ、誰にだって量の見当違いは起こるのだから、無理をしないで時には残したっていい。完食にだけ囚われすぎていると、目の前に余った美味しそうな食べ物よりずっと大事なものを損ねてしまう。自分自身の健康だ。
そもそも飲食店の一人前の分量は、食べ盛りの若者を基準に設定されている。大人になるにつれ身体が追いつかなくなり、そのまま食べきれなくなって当然だ。余らせたり残したりしないというだけなら、「食べきる」以外にも方法はある。
ライスを抜いたり、サイドディッシュを引いたりして、注文時から少なめをリクエストする。取り分けるときは食べられる分だけを見極め、よそいすぎないようにする。おかわりは断る。間食や飲酒もほどほどに。
40歳を目前に控えた今、まだまだカツカレーもラーメンも食べることはあるが、普段は一日二食。身体が重くなってきたら、終日コールドプレスジュースとプロテインを飲むだけの「プチ断食」もしたりしている。ダイエット効果は望めないが、自分の胃袋をリセットし、その本来の大きさを再確認するくらいにはなる。
その上で、あらかじめ量の調節がきかないランチプレートやコースメニューでは、腹八分を過ぎたら完食を諦める。満腹になった時点でもっと食べたい気持ちがあるのなら、それが「胃袋からか、魂からか」を己に問うてみればよい。一生のうち限られた食事回数の幸福度を高めるために、どうすればよいかは、身体が教えてくれるはずだ。
【プロフィル】岡田 育(おかだ・いく) 文筆家。出版社勤務を経てエッセイの執筆を始める。著作に『ハジの多い人生』(新書館)、『嫁へ行くつもりじゃなかった』(大和書房)、二村ヒトシ・金田淳子との共著『オトコのカラダはキモチいい』(角川文庫)。現在は米ニューヨーク在住。このまま生きると、2020年に40歳。
引用元: https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180529-00010000-otekomachi-life
みんなのコメント
やはりご飯より、お菓子デザート、果物が多いのかなぁ私的には、本当に毎年着実に体重増えてます(泣)
やはり食後のアイスは最高。
まぁ、わかっているけど残すのは、すべてに対して申し訳ない気がして食べてしまいますね。
今は、独り暮らしをしているから、家族の残飯処理をしなくなっただけでも、かなり体重が落ちましたね。
人の体は食ったものからしか作られないんだから。
子供が生まれてから、一緒に歩くのがすごく大変になってしまって車移動がメインになり、そこから太り始めました。
子供が少食で食べムラもあるし、残り物を食べたりするのも原因だけど。
どうせ食べるなら野菜よりお肉や魚だけど、友達と楽しくワイワイ言いながら食べてた頃は何でも美味しかったなぁ…。
旦那が正面で食べてても全然会話はないし、食べていても何も美味しくないです。
あと、自分の作ったものより母親のご飯が食べたいな?。
皆さん苦しんでいる過食は心の問題ではなく、質的な栄養失調を補うための代償行動だそうです。
本で勧めていた鉄のサプリとプロテインを昼食代わりに飲むようになった。
今プロテイン3缶目なんだけど、たしかに間食しなくなりました。
どちらかというと、16時くらいの低血糖みたいな症状がなくなって食べる必要がない感じです。
過食は20年くらい前に治ったけど、間食もしなくなる日が自分にくるなんて50年近く生きてて思ってもみなかった。
プロテイン不味いけどね
だから代謝の違いでしょうか?
体力仕事してるから食べないと身体持たないし食べた分、身になってしまう、
若い時は食べても食べても太らなかった、
細いよね~っていつも羨ましがられていた、
つい数年前迄、ど~したの私の身体、プヨプヨ通り越しますよ(笑)
どうしたら良いのか?こんな事書きながら又食べてます私。
迷っても決められないから全部食べちゃえとか、甘い辛いの無限ループとか、精神面でも怠惰の表れだよね。
残したらもったいないと思ってたが、よく考えれば私の体を通過するだけなのにもったいないも何もないわな。ゴミ箱かトイレの違いだ。
今は美味しくない、苦しいと思ったら無理せず残すことにしてる。
まずいものを苦しいのに食べて太るって、意味ないどころか害悪。
すると、あらかじめ自分の許容量を見当つけたりペース配分や本当に必要かどうか、いろんなことに頭が回るようになったし、考えなしに暴食してた頃よりも味わい、楽しみ、きちんとするようになった。
矛盾めいてるが、残すことが自分を知り、食を大切にできると思う。
無駄なことだとは分かっている。でも食べる。
今でこそ、なんだったんだろうと思いながら、そんな時期もあったと振り返る。
白ご飯が半分以上も残されていて、それをゴミ箱に捨てる時の悲しさ
せめて箸をつける前に「少なめに」と言ってくれればと思います
俺はバカだし弱いけど、いつも自分には負けないように一生懸命生きてます
ちょっとどこかで抑制しないと誰も止めてくれない。
自分が料理が得意、自炊が苦にならないのも原因か。
魂が満たされない、確かにそうだ。ちょっと気づいた。あとは、実践!
ご飯の量が半分に減らせた。
満腹感で止まるでは無く
噛むのが面倒になって
食べるのを止める。w
こんな金の掛からんダイエット無いぞ。
カップ麺、インスタントやお惣菜は一切食べないし、揚げ物、肉類、炭水化物も滅多に食べない。
野菜や、お豆腐、魚が好きでこれが毎日。
うわー無理して健康志向なんじゃないの?嘘くさい!
と感じる人もいるかもだけど、そんなことは全くなくて
合わせて休みの日はヨガやったり映画見たり、アウトドアで自然の中行ったり、
食べる以外に発散方法いくらでもあると気づきました。
何よりスタイルキープができて体が軽いのが一番ストレスフリー
きっと心が満足した時なんだろうな。それか、栄養バランスがいいときとかかな。
いつもそんな食事にしたらいいんだろうけど、なかなか出来ない。
おうちで調整しなさい。
若いときよりウエストが10㎝増えた私は彼女に倣っています。
たまに飲むコーラが美味いのなんの。
帰ったら3キロ増えてる
どーしようもない
欲は生きるうえで必要不可欠なもの。
ただ、何事も摂りすぎには注意が必要。
家族と離れて暮らして、仕事終わって帰宅。
あれも、これも食べられないのに、目に付いた食べたいもの買ってドカ食い。仕事のご褒美として。
結果、8キロ増。
家族と一緒の時は、食べないし、家族が食後おやつなど食べていない姿を見て、あれ?自分だけが食がおかしくなっていることに気がつき。
寂しさの代わりに食べてた。
太るし、結果自分に自信が持てなくなるし、何にもご褒美になっていない事に気がついて良かった。
もうそんなの数年ないです。
心の空腹でしょうね…
どこに行ってもコンビニはあるし外食店もあるし、誘惑が多いとどうしようもないね。
最近は腹が減らない、お腹すいたぁ~てのが無いから腹すいたときの美味しさが味わえない。
満たされないのは脳が満たされないんだよ。
満腹中枢はストレスに弱いから、すぐ壊れちゃう。人は食べると幸せホルモンが出るから
食べるで悪循環
ゆっくり良く噛んで食べると変わってこない
人はストレスだよ。
血糖値上がったら、本来はお腹空かない
夜は豆腐と生野菜にした。
止めようと思っても止められない。
そのうえ、日本なら毎日美味しいもの
食べるのもそんなに難しいことじゃない
また飲むは食うわ…
飲み食い出来る内に食わにゃ!とか思いながら
結局は27歳で通風になり、今に至るが飲み食いの量は変わらず。
変えたい気持ちよりも、食い気飲みたい方が勝るが、そろそろ考えんと仕事出来なくなったら困るけんのぅ。
ああ!でも、美味しそうに食べるんだよね~。
中性脂肪、検査に引っ掛かったのに…。おやつ買わなきゃ食べたいなんて思わないのに~。
誘惑に負けた…。(´;ω;`)