「ミイラ仏(ぶつ)」と聞いて何をイメージしますか。夏の怪談? 仏像の一種? ミイラ仏とは「即身仏」ともいわれ、自ら土の中に入って亡くなり、その後ミイラ状態になった僧侶です。
国内で確認されているミイラ仏は18体。そのすべてを訪ねてまとめた『日本のミイラ仏をたずねて』(1996年、晶文社刊)はかつて、参拝のガイドブックや小説の参考文献となるなど話題になりました。
この本を著したのは編集者の土方正志さん。今年7月、『新編 日本のミイラ仏をたずねて』として復刊するにあたり、あらためて現地を再訪し、最新の状況を追記しました。長年にわたりミイラ仏の取材を続ける土方さんに、その魅力について聞きました。(岡見理沙)
――ミイラ仏とは何でしょうか?
土方:飢饉や病気に苦しむ人々を救おうと、自ら土の中に入ってミイラ状態になり、仏となった僧侶たちで、即身仏とも言われます。
長年山にこもり、木の実類だけを食べ、肉体の脂肪を落とします。死期が近づくと土の中にこもり、読経しながら息絶えます。3年3カ月後に信者たちによって掘り返され、乾燥されてから安置されました。
有名な平泉・中尊寺の藤原三代は、埋葬したら偶然ミイラになったものです。一方、即身仏には本人や信者の意思があります。「即身仏になって人を救済しよう」「即身仏を拝もう」という意思が即身仏をつくります。
現代は高齢化社会ですが死を間近に見ることは少ないです。「人の死をじっくり見たことはあるか?」と問いかけてくれるのが即身仏です。
実物は「あっさり、枯れている」
――出会ったきっかけは?土方:小学生のころ雑誌かテレビで見たんでしょうね。1968年の『週刊少年マガジン』のコピーがありますが、「全調査 日本のミイラ」といったタイトルです。
今では考えられない内容ですけど、日本のミステリースポットとして紹介されていました。実際に初めて見たのは、1992年の夏。『週刊プレイボーイ』の取材で行った、山形県鶴岡市の大日坊の真如海(しんにょかい)上人さんでした。
――実物はどうでしたか?
土方:びっくりしましたが、実物はあっさりして枯れている。「人間の干物」ですよ。「人の死体」が寺に安置されて、信者さんが普通に拝んでいる。死体をじっくり見ることなんてないですよね。不思議な感覚でしたね。
ミイラ仏は、それぞれ個性的な「死に顔」なんですよ。生きていた人が「ミイラ」になっているから顔つきが違うんでしょうね。現存最古の弘智法印さん(新潟県長岡市・西生寺)は、かわいらしい感じ。背中が丸くなって、昼寝をしているようなおじいちゃんみたいな。
舜義さん(茨城県桜川市・妙法寺)は、鎌倉時代の有力武士、三浦氏の子孫ということもあるのか、何かを叫ぶように、くわっと口を開き、吠えているようです。
ハンサムなのは鉄竜海さん(山形県鶴岡市・南岳寺)。合掌した姿勢で、「即身仏はこうありたい」という理想的な形になっています。実は、この人は現存するもので唯一、外科的処置を施された即身仏です。
明治時代に入って「即身仏」が禁じられましたが、官憲の目をかいくぐり、鉄竜海さんの死後に熱心な信者たちによって完成しています。内臓が摘出され、体内に石灰が詰められ、表面を乾燥させてあります。
引用元: https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180830-00010001-danro-life
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