暮らしやすい気候を背景に電力需要が落ち込む秋に、電気が「余る」可能性が出ている。太陽光発電が多い九州では、2018年の大型連休には電力需要の8割を太陽光発電でまかなう時間帯もあり、供給が需要を上回る可能性が出てきたためだ。
そのため、九州電力は18年9月、太陽光発電を行う事業者に稼働停止を求める「出力制御」を行う可能性があるとする「お知らせ」をウェブサイトに掲載した。
ただ、九電は原発の再稼働も進めており、これが結果として昼間の「電気余り」を後押ししている。
■火力止め、揚水発電使い、本州に送っても「余る」可能性
送電網では、需要と供給の量をほぼ同じに保つ必要がある。これが崩れると、本来は一定に保つべき周波数が低下し、機器が壊れるのを防ぐために連鎖的に停電が起こる可能性がある。 9月6日未明の地震直後に北海道で起きた大停電がその一例だ。
日照条件が良い九州では特に太陽光発電の普及が進み、大型連休中の18年5月3日13時には、九電管内の電力需要の約8割を太陽光でまかなった。
晴れていて発電量が増えたのに加えて、(1)冷暖房を使わずに済む気候だった(2)工場やオフィスが休みになった、といった事情で需要が落ち込んだことが背景になったとみられる。
この時は、火力発電の出力を抑えたり、太陽光で発電された電気を使ってダムに水をくみ上げ、夜間に発電する揚水発電を活用したり、
「関門連系線」を利用して本州に電力を送ったりして対応してきた。だが、その後も太陽光発電は増え続け、18年秋にはそれだけでは対応できなくなる可能性が出てきた。九電が9月7日に
「今秋の九州本土における再生可能エネルギー出力制御実施の見通しのお知らせ」
と題してウェブサイトに掲載した文書では、供給力が需要を上回った場合に、上記の対策を講じた上で
「それでも供給力が電力需要を上回る場合は、電力の安定供給維持のため、やむを得ず出力制御を行うことになります」
と説明している。「出力制御」は、壱岐(長崎)や種子島(鹿児島)といった離島では実績があるが、国内では離島以外の本土での実績はない。
■原発を止めるのは最後
出力制御の順番は「優先給電ルール」で決まっており、(1)火力(2)他地区への送電(3)バイオマス(4)太陽光・風力(5)水力・原子力・地熱、となっている。
これは、火力は需要に応じて発電機を動かしたり止めたりしやすく、太陽光・風力は気候や時間帯によって発電量が大きく増減するのに対して、原子力は発電量を短時間で調整することが難しいからだ。
太陽光発電が需要の8割をまかなった18年5月3日13時時点での需要は、743万キロワットだった。その1か月ほど後の18年6月に玄海原発4号機、
8月には定期検査入りしていた川内原発2号機が再稼働し、現時点では九州で原発4基が稼働。出力は4基合わせて約430万キロワットに及ぶ。
太陽光発電をめぐっては、18年9月12日に開かれた経済産業省の審議会で、電力会社が家庭や事業者から買い取る際の価格を、20年台半ばに現在の半額程度に引き下げる方針が示されている。
電力会社が買い取った電気の料金は利用者が支払う電気料金に転嫁される。このため、買い取り価格引き下げで利用者の負担は減るが、太陽光発電の普及にはブレーキがかかる可能性がある。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)
引用元: https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180924-00000000-jct-bus_all
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