平成31年2月期に、6年ぶりの通期最終赤字に転落する吉野家ホールディングス。牛丼業界の価格競争が主因だった前回の赤字に対し、
今回は「原材料高」「人件費高騰」「コンビニ弁当など中食との競争激化」「消費者の低価格志向」という4重苦が重荷になった。外食産業を取り巻く厳しい経営環境を吉野家が象徴した格好だ。
米国産牛肉にこだわる吉野家にとって、アジア各国で需要が高まり、価格上昇が続くことが長年の懸念だった。
昨年夏の対米牛肉セーフガードの発動による関税増加分の上乗せに加え、米中貿易摩擦で中国が米国産輸入を解禁したことによって、価格はほぼ高止まりの状態が続く。
国内でも、生産者の減少で業務米が外食各社の取り合いになり、価格上昇が深刻だ。河村泰貴社長は「今期は牛肉で15億円、コメやシャケなども含め、原材料で28億円の原価上昇になる」と分析する。
人件費では、東京都内でバイトの時給が1千円を超える。深夜時間帯は1500円に達するが、それでも人材確保競争は激しく、引き抜き警戒で人件費の上積みも迫られる。
業態として競合関係にある中食は昨年、総菜市場が初の10兆円台超えになるなど好調だ。ファミリーマートが中食専用工場2カ所を新設するなど、コンビニ各社の中食攻勢は加速し、外食との顧客争奪戦は厳しさを増す。
そして、最大の課題が「デフレマインド」だ。コスト上昇を価格に転嫁すれば急激な客離れが起きるのは、外食各社の事例でも明白だ。中でも牛丼は、
消費者の価格感度が高いとされ、河村社長は5日の会見でも、「値上げは計画にない」と従来の発言を繰り返した。値上げできないジレンマに吉野家、そして外食産業全体が追い込まれている。(平尾孝)
引用元: https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181005-00000609-san-bus_all
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