文在寅(ムン・ジェイン)政権が進める所得主導成長の暴走が深刻になっている。失業者は8カ月連続で100万人以上となり、所得格差も最悪の状態に向かっている。「雇用政府」を自負する政府が脆弱階層を崖っぷちに追い込んでいるのだ。この時点で必要なのは「グル(最高の専門家)」の洞察と慧眼だ。さまよう所得主導成長の問題点を洗い出して脱出口を模索するためだ。
世界経済研究院の司空壱(サゴン・イル)理事長に会った理由だ。その間沈黙してきた司空理事長は「この政府はもっと疎通をしようと言ってスタートしたのではなかったのか」
と話し始めた。その後、精巧な論理で所得主導成長の問題点と一つ一つ指摘し、韓国経済が進むべき方向を提示した。
司空理事長は「この政府の問題は経済だけでなく各分野で政策を決めて執行する過程で、専門家の意見や国民と現場の声を聞いて政策に反映しようという努力が不足している点」と述べた。
続いて「政府がうまくいって失敗しないことを願う真摯な声に耳を傾けるべき」と強調した。
--所得主導成長をどう評価しているのか。
「私は所得主導成長という言葉にいつも引用句(“所得主導成長”)を付ける。理論的な根拠が脆弱であるうえ、実証的に世界のどこでも検証されたことがない馴染みの薄い概念であるからだ。
さらに所得主導成長の目標である雇用創出と雇用増大を掲げ、重要な政策手段として最低賃金を急激に引き上げている。
今までの正統経済学理論によると、こうした政策は限界勤労者の失職と限界企業の倒産を招くのが明らかだ。これが今日、現実になっている」
--青瓦台(チョンワデ、大統領府)の張夏成(チャン・ハソン)政策室長は「最低賃金は所得主導成長政策の1%にすぎない」と述べている。
「何の1%をいうのか分からない。もともと最低賃金制は一部の限界勤労者のための社会的な安全網だ。米国の場合、最低賃金対象の就業者比率は全体就職人口の2.3%という。
ところが韓国はこの比率が13.3%にのぼるうえ、飲食宿泊業・卸小売業はこれよりはるかに高い。特に零細自営業は72.3%にのぼると推測される。
したがって生産性の向上なく急激に最低賃金を引き上げると、こうした分野の勤労者と雇用主に大きな被害を与えるしかない」
--雇用は民間から生じるしかない。
「もちろんだ。実際、政府が推進する所得主導成長も結局、民間の雇用創出のための呼び水、または火付け役にしようということではないのか。
問題は現在の政策では民間企業の雇用創出に結びついていないところにある。したがって雇用政府がすべきことはまず、民間企業が投資をしやすくなる政策を展開することだ」
--現政権の政策はむしろ反市場的・反企業的な情緒を招いている。
「すでにかなり以前にジョン・メイナード・ケインズも強調したが、企業家がリスクを負って起業しようとするアニマルスピリット(anial spirit)は政治・社会的な雰囲気に大きな影響を受ける。したがって企業に不利な具体的な政策も問題だが、
そのような政策の背景になった反企業情緒あるいは社会・政治的な雰囲気自体が企業投資と雇用創出にマイナスの影響を与えることになる。
もし下請けの中小企業や消費者に不当で不公正な行為をする場合、そのような大企業は法と制度で厳重に治めるものの、規模が大きいこと自体を問題にして大企業の投資と雇用創出の機会を阻むのはやめるべきだ」
--青瓦台は指標の悪化にもかかわらず「年末まで待ってほしい」と楽観論を展開している。
「なぜ年末まで待てばよいのかを説得力のある論理で説明する必要がある。ある程度の統計的な根拠もなければいけない。米中間の貿易戦争の持続、
米国の利上げやドル高などによる世界経済・貿易・金融環境の変化を考慮すると、下半期の経済事情が大幅に良くなる状況ではないはずだ。
したがって一日も早く政策の方向を正して、韓国経済の基礎を固めることに全力を注がなければいけない」
--所得主導成長が批判を招くと、政府は包容成長を話し始めた。
「包容成長は2008年に本格化した世界金融危機以降、世界銀行など国際機関を中心に多くの議論があり、概念も明確に確立されている。
しかしこの概念はあくまでも市場経済の失敗、例えば成長の恩恵が脆弱階層にまで及ばない場合、深刻な所得二極化を改善して市場経済が持続成長できるようにしようというものだ。したがって包容成長を目指すと言いながら市場の機能を抑圧するのは望ましくない。
半面、社会脆弱階層と限界勤労者のための医療・保健・サービス提供と教育・訓練・再訓練の機会など社会的な安全網は強化しなければいけない」
--Jノミクス(文在寅政権の経済政策)の一つの軸という革新成長はいかなる進展もない。
「私はこの政権の発足当時、所得主導成長と革新成長の旗幟を見て、その内容を正確に把握できなかったが、需要側面の短期対応策ともう少し中長期的な供給側面の相互補完的な2本の軸の政策だと理解した。
特に革新成長は現在速いペースで進展している第4次産業革命時代には必要不可欠であり、その政策方向は望ましい。
ところが問題は所得主導成長のための政策手段が革新成長にはむしろ障害になり得る点だ。今からでも政府は正しい革新成長のために、先に述べた企業にプラスとなる環境づくりに政策の焦点を合わせなければいけない。その意味でも方向の転換が必要だ」
引用元: https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180925-00000020-cnippou-kr
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