1999年から進められた司法制度改革により、司法試験制度が大きく変わり、弁護士の数は2倍以上に増えた。こうした中、所得が低く「食えない」弁護士や、必要以上に派手なパフォーマンスを見せて顧客を喜ばせようとする弁護士も出てきているという。長く法曹界を取材するジャーナリストの秋山謙一郎氏が、業界の変化に迫り、リポートする。目次
◆弁護士数は増加の一途
弁護士の数が増えても、その“飯のタネ“である事件が増えたわけではない――。
日本でも、欧米のように市民が気軽に弁護士らによる「司法サービス」を受けられる社会を目指し、段階的に行われたのが司法制度改革だ。
この改革は、(1)弁護士報酬の完全自由化(2)弁護士の広告・宣伝の解禁(3)法曹(主に弁護士)人口の拡大――を3本柱としていた。2004年にスタートした「法科大学院」の制度により、司法試験制度ががらりと変わったことをご存じの方も多いだろう。
これらの改革により、弁護士の数は増加の一途をたどり、「弁護士白書」によると「司法制度改革元年」だった1999年に1万6731人だった弁護士の数は、2017年3月31日時点で3万8980人と約2.3倍に増加。日本弁護士連合会(日弁連)によると、18年1月にはついに4万人を超えたという。
◆しかし、事件数は増えず……
ところが、増え続ける弁護士の数とは裏腹に、事件数は近年、横ばいで推移している。裁判所の司法統計によると、2005年には13万2727件だった民事事件数(新たに受理されたもの)は、09年の23万5508件をピークに減少傾向に転じ、14年には14万2487件と、05年の水準へと戻った。
一時的に増加したのにはカラクリがある。05年から14年までの事件数のうち、クレジット・サラ金(クレ・サラ)問題でよく耳にする「過払い金」関連を除いた事件数は、ほぼ9万件と横ばいが続いている。
つまり、事件数が増えたのは、単に「過払い金返還訴訟バブル」によるものだったということだ。06年に最高裁が利息制限法と出資法の上限金利の差(グレーゾーン金利)を認めない判決を出したため、一時的に訴訟が増えたのだ。
ところが、増え続ける弁護士の数とは裏腹に、事件数は近年、横ばいで推移している。
裁判所の司法統計によると、2005年には13万2727件だった民事事件数(新たに受理されたもの)は、09年の23万5508件をピークに減少傾向に転じ、14年には14万2487件と、05年の水準へと戻った。
一時的に増加したのにはカラクリがある。05年から14年までの事件数のうち、クレジット・サラ金(クレ・サラ)問題でよく耳にする「過払い金」関連を除いた事件数は、ほぼ9万件と横ばいが続いている。
つまり、事件数が増えたのは、単に「過払い金返還訴訟バブル」によるものだったということだ。06年に最高裁が利息制限法と出資法の上限金利の差(グレーゾーン金利)を認めない判決を出したため、一時的に訴訟が増えたのだ。
◆弁護士は増え続け、民事事件は増えず
さて、一般に事件といえば、多くの人は「刑事事件」を想像するのではないだろうか。
ニュースなどで伝えられる事件のほとんどが、殺人や強盗、詐欺といった刑法犯にまつわるものだからだろう。だが、法曹、特に弁護士の間では、事件といえば民事事件を指す。
民事事件とは、借金や相続問題、不倫や離婚問題に代表される男女間のトラブル、雇用の問題などが中心だ。しかし、一般の人が弁護士に依頼し、さらに訴訟を起こして解決しようと考えるケースは、今もごく少数にとどまる。
事件の数は増えない。だが、弁護士の数だけは増え続ける。このため、「食えない弁護士」が生まれることになるのだ。
◆「プラチナ資格」今は昔……
司法試験の合格難度から「文系最高峰資格」の一つとされてきた弁護士。司法制度改革以前はどんなに営業下手でも、地道に仕事に取り組んでいれば、「弁護士登録後、10年で所得1000万円突破は堅かった」(兵庫県弁護士会所属弁護士)という。
法曹資格さえ取れば、高収入と高い社会的地位が約束され、「ゴールド」を上回る「プラチナ資格」と呼ばれたほどだ。
しかし、今ではM&A(企業の合併・買収)実務などを手掛ける大手渉外系事務所や、大手企業の法務部などに就職できた「エリート」でなければ、かつてのような高収入は望めなくなっているようだ。
「弁護士余り」で就職できず、司法修習後すぐに独立する弁護士や、法律事務所から仕事を請け負って、売り上げの一部を法律事務所に「上納」しながら生活する弁護士さえいる。特に法科大学院を経て弁護士登録した「新司法試験組」は、エリートとそれ以外の能力の差が大きいとされる。
14年の国税庁の調査によると、独立して事務所などを営んでいる弁護士の売り上げ(収入)から必要経費を差し引いた「年間事業所得」の中央値は約400万円という。単純比較は難しいが、実質的な「手取り額」は、都市部の平均的なサラリーマンより低いのではないだろうか。
さらに、同年の日弁連のアンケートによると、事業所得200万円以下の弁護士が、なんと総数の8分の1を占めているという。業界はまさに「食えない弁護士」であふれ始めているのだ。
そして、「食えている弁護士」も生き残りをかけて必死になっている。
60~70代のベテラン弁護士でさえ、「ブログやツイッターを開設して、顧客にアピールする」「30分までの相談を無料にする」「1回目の相談の際は交通費や駐車場代まで負担する」などと、本業以外のサービスや宣伝活動にも力を入れているのが実情だ。
◆業界は「完全自由競争」時代に
司法制度改革以前、弁護士は「日弁連報酬基準」を基に業務を行い、報酬を得ていた。それに、自らの能力を顧客にアピールしようにも「債務整理に強い」「離婚案件が得意」といった専門性や得意分野を打ち出すことさえできなかった。日弁連の規定で広告が禁止されていたからだ。つまり“横並び”に近かった。
弁護士は「自由業」ではあるものの、日弁連に登録しなければ弁護士業を営むことはできない。さらに、司法修習期を軸とする縦横のつながりもあり、「護送船団方式」に守られた公的な職業という色合いが強い業界だった。
ところが、司法制度改革により弁護士の報酬は自由化された。ここで登場したのが顧客から「着手金」と呼ばれる報酬を受け取らない弁護士だ。
例えば、過払い金返還請求であれば、貸金業者などから返還される過払い金の一部を報酬に充当する。顧客からの着手金は無料、「完全成功報酬制」というスタイルである。
◆顧客ニーズをとらえた「あの事務所」
債務整理を例に取ると、今、自己破産申請を弁護士に依頼する場合、ややリーズナブルな法律事務所で20万円、一般的には30万円が相場だ。離婚調停の場合だと着手金30万円、顧客の希望通りに事が運んだら、成功報酬は50万円程度といったところだ。これだけの金額を現金で支払える人は、案外、少ないのではないだろうか。
司法制度改革以降、先述した「着手金無料」など、一般の市民にも使いやすいよう顧客目線でのニーズに応えた報酬の仕組みを導入したり、テレビCMやインターネットによる広告・宣伝で積極的にブランディングを図ったりして急拡大したのが「アディーレ法律事務所」(東京)に代表される〈新興大手法律事務所〉だ。
かつて弁護士といえば、「八百屋弁護士」とも呼ばれた〈街弁=街の弁護士〉にみられるように、一人で債務整理から離婚事案、企業間のトラブルまで、あらゆる案件を最初から最後まで手掛けたものだった。
一方、新興大手では、面談、書面、裁判……など、担当を細かく区分けし、書類作成などの雑務は法曹資格を持たない「パラリーガル」と呼ばれる事務員を活用。過払い金請求や債務整理などの案件に絞り、効率よくサービスを提供するようになった。
修習を終えた若手が新興大手に就職することについて、愛知県弁護士会の鈴木秀幸弁護士は「それでは弁護士としての実力が身に付かず、独立した際に困るのではないか」と憂慮する。
一方、新興大手に籍を置いたこともある中堅弁護士は、「それまで弁護士の視点に入っていなかったマーケティング力と組織力を学べたことが大きい。弁護士としての実力は独立してから自分で身に付けた」とそのメリットを説明する。
◆弁護士はサービス業か?
近年、弁護士たちの年代によって、目指す方向性が大きく異なっている。
超難関とされた旧司法試験をパスした50代以上のベテランだと、その立ち位置を問わず、〈法律家〉という意識で仕事をする弁護士が多い。これに対し、「新司法試験組」の20~30代の若手は〈サービス業〉であることを前面に押し出す。
この方向性は、事件と向き合うスタイルにも大きく反映されている。50代以上の弁護士だと、民事事件ではできるだけ訴訟を避けようとする。示談交渉に力を入れ、原告・被告のどちらについた場合でも、円満な解決を目指す傾向がある。
元裁判官の50代の弁護士は「民事の争いは結局、金額なのです。原告側であればできるだけ高額、被告側であればできるだけ低額の『解決金額』で落としどころを探って、早期の事件解決を目指します。自分が原告側の代理人(弁護士)なら被告側の立場、被告側の代理人なら原告側の立場も考え、広い視点で事件に向き合えば、訴訟に持ち込まなくても解決するものです」と語る。
ところが今、若手弁護士の間には、こうした発想を持つ者は少なく、ベテランの意識とは大きな隔たりが生まれているようだ。
ある30代前半の弁護士は「依頼者の感情に寄り添って、派手なパフォーマンスで相手を揺さぶる。それくらいやらないと顧客は喜びません。不倫事案なら内容証明郵便を自宅に送ります。慰謝料でもめているなら相手の勤務先に電話を入れることもあります。ただ、訴訟に持ち込んだなら、できるだけ早期に事を収めるようにします。裁判の回数を増やせば増やすだけ報酬が『割安』になりますから」と明かす。
近年、増えてきたこういった発想の弁護士。しかし、派手なパフォーマンスとは裏腹に、実際にはなかなか事件を解決させることができないとの指摘もある。弁護士界では「相手方はもちろんのこと、自分の依頼者をも困らせてしまうことも頻繁にある」(ベテラン弁護士)との声をよく耳にする。
引用元: https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180414-00010000-yomonline-life
みんなのコメント
無能な弁護士は淘汰されるべき。
今は合格者そのものが抑制されて、数年前の最悪な状況よりは就職待遇面は好転してるとも何かで読んだけど、法科大学院制度は明らかに失敗だよね。
なるとするならば、弁護士が 積極的に誘導する結果だろう。
日本の医療が、弁護士とマスコミの力によって、訴訟社会になった。
その結果 医師は 訴訟リスクを避けるために、診療科の偏在が生じた。
患者を救いたいとの一念で 難検査や難手術に 果敢に 挑む 医師が この世から居なくなった。
挑もうとすると、上司から 訴訟覚悟でやれ、と引導を渡される。
そこまで言われたら 誰も しない。
訴訟回避の為に、医師の集約化が優先されて、地方に行く医師は居なくなった。
都市部では、集約化が出来ている病院でも 手術も検査も 低リスクしか やらない。
どんな世界でもピンとキリがあるんじゃ!
過払金請求のPRばっかり目に付けば、
正義感を期待して頼れる人材には見えないもんな。
わるいことではありません。
「あの判事は私が苦手なので勝ち目はないかも」とか言われた時には「今までの報酬を返せ!」と言いたくなった。
結局、当時の約束を交わした公正証書まであったのにまさかの公正証書覆しという在りえない判決。
そして司法試験受かればどんな無能だろうと高給取りなんてのがまかり通ってきたのがそもそもの間違い。
稼げる奴は稼げる、稼げない奴は稼げない、それが正しいあり方。
そのわりに日本の裁判は高額になりにくい。法律にも限界だらけだし、請求者に立証責任だから、ハードルが高すぎる。
賠償も時価だから金額も雀の涙。
裁判やる意味あるかね?相手をチクチクして面倒だと思わせた方が良い金額で示談できるんでは?
給料安くても好きな仕事していれば勝ち組みだし、
どんな仕事でも必要とされてる人は勝ち組で、
他人の職業に負け組とか言うようなストレスだらけの人が本当の負け組
大半がリーマン根性にリーマン思考
リーマンが独立出来ない稼げないのと同じ法則
毎月のくだらん会費がなければ、まだましなんだろう
奨学金が返せないという現状に似ている部分がある。
具体性が高く標準化されたものを追うと必ず儲からない。
ひとの役に立つから相手が金を払う。それが道理。
だから今は被害者ビジネスに弁護士は群がる。
これは100%嘘。
今まで何人か弁護士に会ったことあるが交渉能力はさほど高くなく、どちらかというと書面でのやり取りに終始する人が多い。
もっと言うと交渉能力という点なら営業マンの方が明らかにスキルは高い。
色々屁理屈言って反発するんだろうけど、AIの方が向いているんだから仕方がない
火を起こすのにおが屑集めることからしないでしょ
ノスタルジーに浸りたい人はどうぞ
あんた会計士に依頼するなんて粋だね?的な存在に早くなーれ!
更に肝炎の見舞金にも目を付けているみたいだしさ
初回相談、30分で5000円+8ぱー。
出てきたのは、モドキの事務員。
嘘ばっかのたまうのみ。
こんなんばっかじゃねえとは思いますが、基本は、そんな商売。
あんな糞なら税金納めている範囲(街の無料相談)でハナシを聞いてもらっているほうがいろんな意味でよいでしょうね。
旦那が嫌?
コドモ連れて実家または親戚の家にいけば?
かりになんかのたまうにしても、そんな程度(そっこーで金になりそうな事)でしょ?
それと正比例させるなら弁護士も少ないほどに、
平和ということだと思います。
1回合格したら、もう安泰、なんて職業は、どれもジリ貧になりますよ。
弁護士に限らず、あらゆる職種で同じことが言える。
1回合格したらもう安泰、だなんて、こんな美味しい職業はないわけで、
勉強できる人は、みんなそこを目指しますよね。
その結果、弁護士が激増して、同じパイを取り合う羽目になる。
高収入と低収入の差って、希少価値があるかどうかで決まるんですよ。
他に代替えが効かない自分しかできない職業であれば、中卒だろうがなんだろうが、高収入も可能になる。
人気芸能人やスポーツ選手が高収入なのは、代替えが効かないから。
保育士や介護士なんかも、ある意味マルチタスクで、本当に大変な職業だけど、代替えが効くから、収入が上がりにくい。
人と同じブランドを目指す限り、ジリ貧になるのは自然の摂理だと思う。
その代表例が慰安婦問題だ・・・。
おそらく、確定申告した上での所得が200万円なだけで、実際のところそんなに苦しくないと思う。
それか隠居気味のおじいちゃんか一年目の人。
こういうのって、ライバル減らして楽に稼ぎたい人が騒いでいると受け取ってる。
労働問題にしろ何にしろ
日本はまだまだ泣き寝入りの人が多いんだから
積極的に動けばいくらでも仕事はあるだろ
人口減少により、弁護士・薬剤師・獣医師と喰えない時代が来るだろね。
個人的には、奨学金や教育ローンにかかった金利だけでも、国から取り戻して欲しい。
学校のイジメ問題やモンペ対応に生きる道があるんじゃないかな。
弁護士の資格を取ったら三年程度は我慢して、自分が最も軽蔑してる職業に就く事をお勧めする。
なぜ、厄介なクレサラ事案は積極的にやるのに、大儲けできて正義の人アピールもできる労働問題を忌避するのか。そのセンスのなさには閉口する。
数十年前に米国で流行ったタバコ会社をヒスパニック系の女性を探し出し【莫大な金を勝ち取り】、その女性には微々たる金を渡し弁護士が大儲けしていた・・。
今、日本でも【何でこんな事を弁護士が持ち上げ】国を訴えるのか?
意味不明の訴訟の記事を良く目にする様になった。
【優生保護法】を蒸し返し金を目論むならば、もはや、法に関わる人間では無く、屁理屈で儲ける守銭奴と変わらない。