ラグビーで実施されているビデオ判定は「テレビジョンマッチオフィシャル(TMO)」。主にトライをめぐるプレーでボールのグラウンディングや、反則がなかったかを確認するため、レフェリーが映像によるチェックを別室の審判員に依頼する。
その際、両手で空中にモニターを意味する四角を描くのがTMOの合図。トップリーグやスーパーラグビーでもおなじみだ。
サッカーでは「ビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)」。W杯ロシア大会で導入され、PK判定に大きな影響を及ぼした。気になったのは、ハンドや反則があったとアピールしようと、審判ではなく、空中に四角を描く選手があまりにも多かったこと。
ラグビーでも見かけるが、サッカーの多さはその比ではない。レフェリーがその勢いに押されてVARを要請した印象を受けることもあり、見ていて気持ちのいいものではない。
それでも、VARがあまりにも勝敗を左右する現実からすれば選手のアピールも理解できる。決勝戦でもフランスの勝ち越しゴールはVARでハンドと判定されて得たPKだった。今大会でVARが使用されたのは20回あり、17回で直前の判定が覆っている。
PKが認められたケースもあればPK取り消しという事態も発生した。1大会29回のPK判定は02年大会の18回を圧倒的に上回り史上最多。セットプレーからの得点も73点と、98年大会の61点を更新した。
TMOでもVARでも問題なのが「見えすぎてしまう」ことだ。映像を使えばわずかでもボールが手に当たった事実や、タックルで首に手がかかった瞬間がハッキリしてしまう。
だが、W杯決勝のハンド判定に「前が見えない状態の選手に飛んできたボールが当たったので、故意ではない」と批判があるように、そこに至るまでの流れと切り離して判断すべきではない。
ただし選手も観客もテレビ視聴者も映像を見て「ハンドだ」と確信している状況で、しっかり見極めて異なる判定を出し、理由を明確に説明できるかどうか。
「ビデオ判定導入は審判の技術向上を妨げる」との声もあるが、“証拠”がある以上プレッシャーは増し、レベルアップすべきとの要求は大きくなる。
ビデオ判定は、試合を長時間化させてしまうデメリットもある。TMO導入で40分ハーフのラグビーは2時間近くかかる競技に変わり、
W杯ではアディショナルタイムが5分を超えることも珍しくなかった。試合が止まるたびに待たされるのは観客だけでなく選手も同じで、
「中断」によってそこまでの良い流れが止まってしまうケースも多く見られる。特に持ち味が走り勝つチームとしては、相手に休んで回復する間を与えるビデオ判定が連発されると厳しい。
設備も人員もより必要となるため難しいが、結論を出すまでのスピードアップも今後のTMOやVARの課題だろう。(スポーツ部専門委員・中出 健太郎)
引用元: https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180719-00000072-spnannex-spo
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