腰痛などを引き起こす「腰椎椎間板ヘルニア」の新しい注射薬が8月に発売される。手術に代わる選択肢として注目されている。臨床試験(治験)に参加した横浜市の会社社長・井上勉(つとむ)さん(70)は長年悩まされ続けてきた腰痛から解放された。(西原和紀)
酵素が働き、飛び出た「髄核」を縮小
腰椎椎間板ヘルニアは腰痛の代表的な原因。20~40歳代に目立ち、男性に多い。椎間板には背骨をつなぐクッションの役割がある。ヘルニアは、椎間板をあんパンにたとえるとイメージしやすい。あんこにあたる「髄核」という組織が、外側のパンにあたる「線維輪(せんいりん)」を押したり、突き破って飛び出したりした状態だ。これが近くの神経を圧迫し、痛みを生じさせる。
治療は、痛み止めの薬を使ったり、腰の動きを制限するコルセットをつけたりする保存療法が基本だ。8~9割程度の患者は2~3か月で症状が改善する。しかし、こうした治療の効果がなく、痛みが激しい場合などに手術が検討される。
手術では背中を切開し、飛び出た髄核を取り除く。入院から退院まで7~10日程度かかり、リハビリを含めると、仕事などに復帰するには1か月程度かかる。患者の負担は大きい。
新薬の「ヘルニコア」(一般名コンドリアーゼ)は、手術を受けずに、1回の注射で高い治療効果が期待できる。30分程度で済み、1泊2日の入院もしくは日帰りも可能だ。厚生労働省が3月に製造販売を承認、5月に保険適用した。
新薬は、髄核に直接注射する。髄核の成分であるグリコサミノグリカン(GAG)をコンドリアーゼという酵素が分解し、飛び出た髄核を縮小させることで神経への圧迫を軽減する。
井上さんは長く腰痛に悩まされ、左脚が爪先までしびれて長時間は座れなくなるほど、ヘルニアの症状が悪化した。
医師からは「もう手術以外にない」と告げられたが、2013年、東京都済生会中央病院で新薬を投与されると、1か月半程度で痛みやしびれがなくなった。井上さんは「本当に助かった。海外出張にも不安なく行け、ゴルフも楽しめている」と喜ぶ。
同病院で井上さんの主治医だった慶応大学医学部整形外科助教の岡田英次朗さんは「仕事などを抱えて、手術は避けたいと訴える患者さんは多い。今後は、手術を受ける人はかなり減るのではないか」と話す。
引用元: https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180723-00010000-yomidr-sctch
みんなのコメント