【AFP=時事】今年5月、サッカーアルバニア1部リーグのスカンデルベウ・コルチャ(KF Skenderbeu Korce)はここ8年で7度目のリーグ優勝を果たし、紙吹雪が舞う中大喜びしてトロフィーを掲げた。
しかし、欧州サッカー連盟(UEFA)が主催するすべての大会に10年間出場できなくなったことで、その歓喜はすっかり遠い思い出になった。これは、UEFAがこれまでに科してきた処分の中で最も厳しいものだ。UEFAはまた、サッカー史上最悪の悪行とする八百長に関して、100万ユーロ(約1億3000万円)の罰金処分をスカンデルベウに科した。
UEFAの倫理・規律委員会は、3月に漏えいした報告書の中で「このクラブは、これまでの歴史で誰も行ったことがないほど多くの試合で八百長をしてきた」と記している。
スイス・ローザンヌ(Lausanne)にあるスポーツ仲裁裁判所(CAS)が、6月に今回の出場停止処分は未定となっている上訴を待つまでもなく効力を発揮する見込みと認めたことで、スカンデルベウに残っていたかすかな希望は絶たれた。
7月にヨーロッパリーグ(UEFA Europa League 2018-19)の予備予選戦に進むことを期待していたスカンデルベウのアルディアン・タカイ(Ardian Takaj)会長は、この裁定がクラブにとって「死の宣告」以外の何物でもないと語った。
15世紀にアルバニアで活躍した軍の指導者スカンデルベグ(Skanderbeg)の名にちなむこのチームは、同国のクラブとして唯一ヨーロッパリーグのグループステージに進出した経験を持つ。
スカンデルベウが今後の欧州サッカー界から締め出されたことにより、熱狂的なファン層は心を打ち砕かれた。今年2月、彼らのうち数千人は同国南東部コルチェ(Corce)にあるクラブの拠点に集まり、「われわれの夢を奪わないでくれ」と主張していた。
■八百長の疑惑は53試合
試合に関連する賭博の不自然な動きを追跡し調査する賭博不正検知システム(BFDS)によれば、2010年以降に行われた53試合でスカンデルベウに八百長があったとUEFAは見積もっている。
UEFAはこれらの八百長について「継続的かつ周期的に行われた」と述べており、国内リーグや欧州カップ戦、さらには「親善試合さえも」含まれていたと明かしている。
スカンデルベウのスタッフや選手は無実を主張し続けているが、多くの試合には長年の疑惑が持たれている。
例えば2015年7月に行われた試合で、スカンデルベウは北アイルランドのクルセイダーズ(FC Crusaders)に90分を終えた段階で2-1とリードしていたが、その命運は急転した。
UEFAによれば、試合中に4ゴール以上が決まるという条件にこの試合の終了時点で「数十万ドル」が賭けられていたという。クルセイダーズは、スカンデルベウのDFとGKが簡単なミスを犯したことで後半アディショナルタイムの数分間に2ゴールを挙げ、試合は2-3になった。
クルセイダーズのGKショーン・オニール(Sean O’Neill)は当時、ツイッター(Twitter)に「今夜行われた試合をUEFAが調査しなかったらおかしい」と投稿していた。
■UEFAの報告書は「うわさ」に基づく?
海辺のホテルを保有し、かつてはあるテレビ局を経営していたスカンデルベウのタカイ会長は、自身が「クラブの不法行為に関して重要な役割」を果たし、また違法賭博企業と関係があるというUEFAの主張に対して怒りをあらわにしている。
54歳のタカイ会長はいかなる悪事についても断固として否定し、「BFDSの存在を普及」させるために、UEFAは「小規模予算の小さなクラブしか持たない小さな国家である」アルバニアを、恣意(しい)的に利用していると主張した。
同氏はAFPに対し、「オッズの変動から浮かび上がる疑惑に基づいて、UEFAは西欧のチームに対してこのような手段を取りたがらないだろう」と語っている。
また近年引退を発表し、GKから指導者に転身したスカンデルベウのオルゲス・シェヒ(Orges Shehi)監督も「実際の証拠ではなく、うわさによって成り立った」報告書に気分を害されたと話している。
さらにUEFAは、シェヒ氏が関与した少なくとも46のプレーにより試合が疑わしいものになったと書き留めている。
シェヒ氏は、「フットボールは精密科学ではない。より深刻なミスはいつだって目にする」と語る。
■収監されるのは誰か?
エリート層の汚職と刑事免責がはびこるギャンブル中毒の国アルバニアにも、正義はある。
2002年からアルバニアサッカー連盟(FSHF)の会長を務めるアルマンド・ドゥカ(Armando Duka)氏は、UEFAの報告書に従っており、検察に捜査の開始を求めたという。
スカンデルベウが5月に国内のカップ戦を制した際、同チームを祝福したドゥカ氏は八百長について「アルバニア特有のものではなく、欧州全体で起きている現象だ」と述べた。
しかし、同国の賭博企業連盟のアルタン・シャイティ(Artan Shyti)会長は「これまではこうした犯罪がなかなか調査されてこなかった」と言及した。
首都ティラナにある体育大学で学長も務めるシャイティ氏によると、UEFAは7年前にアルバニアと共同捜査を試みたが、「関係各所の協力関係の欠如」に遭遇したという。
また同氏は、人口280万人のアルバニアには、現在もっとも懸念されている違法ブックメーカー(賭け屋)やウェブサイトを省いても、賭博事業所が4000軒あると続けた。
アルバニアのエディ・ラマ(Edi Rama)首相はそのようなオンライン賭博サイトを「経済犯罪」の中心と呼び、操業を停止させる意思を明かしたが、口で言う以上に実行するのは難しい。
シャイティ氏いわく、「違法な財源」の誘惑を消し去るためには、合法賭博からの税収をクラブの財源に転換することが解決策の一つだという。
しかしそれ以前に、スカンデルベウに対しては重要な問題が残っている。
実際、UEFAの報告書にはうやむやにされた部分が多くある。「誰が賭博をしている? 誰が勝った? そして誰が刑務所に行くべきなのか?」。シャイティ氏はこう問う。【翻訳編集】 AFPBB News
引用元: https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180809-00000004-jij_afp-socc
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