【アーカイブ:内容は2018年2月26日の初出時点のものです】
認可保育園に入りたくても入れない「待機児童」の統計を初めて国が発表し、対策を始めたのは1995(平成7)年のことでした。ちょうど、共働き家庭が専業主婦家庭より多くなるという転換点を迎えた時期です。その後も待機児童は解消されず、
平成時代の子育ては、保育園を探す「保活」で始まります。その保活に敗れた先には、人生設計を狂わされる人たちもいます。(朝日新聞記者・田渕紫織、中井なつみ)
有数の保活激戦地、武蔵小杉
タワーマンションが立ち並ぶ川崎市の武蔵小杉駅前。平日の昼間、スーパーやレストランが入る大型商業施設では、ベビーカーを押した母親たちがひっきりなしに行き交う。子育て世帯が多く、全国でも有数の保活激戦地だ。
今月で1歳になった長男の保活をする女性(32)は3年ほど前、夫の社宅があるこの地に引っ越してきた。妊娠中だった2年前の12月、地元の中原区役所を訪ねると、職員からこんな説明を受けた。「第1子で0歳の『加点なし』なら、世帯年収によっては例年、入れていませんよ」
「加点」とは入園選考の基準に加わる点数で、きょうだいがいたり、認可外保育園に預けて復職していたりすると付く。
単にフルタイムの共働きというだけでは、当選ラインを下回る可能性が高いと示唆されたのだ。職員からは「認可外の枠をおさえた後で認可の保活に時間を割いた方がいいんじゃないですか」と勧められた
保活に費やしたのに落選、募る焦り
予定より2カ月早い昨年2月に出産。入院が長引いた。職場から早期の復職を請われ、昨年10月までに戻る予定だったが、経過観察で病院通いも多い。育児休業を今年4月まで延ばした。認可外園に入るには、直接契約をする必要がある。退院まもない4月から保活を本格化させた。家から徒歩圏内の認可園を15園、隣の横浜市の認可外園「横浜保育室」を15園、そのほかの認可外園8園の計38園を手帳にリストアップ。週4~5回のペースで、片っ端から見学した。
認可外園のほとんどは電話の先着順に予約を受け付ける。実家では固定電話と父親の携帯電話、自分の携帯電話2台、さらに夫が社用携帯に会社の固定電話と、計6台を駆使。
予約開始日時になると一斉に何十分間もかけ続ける。やっとつながったと思ったら、「もう締め切りました」と宣告される。「中学生の時のジャニーズのコンサートのチケット取りみたい」と苦笑する。
ようやく見つけた横浜保育室は入園保証金が10万円。入園しなくても返金されない。最寄り駅から徒歩20分ほどで、自宅からは1時間近くかかる。それでも払わない選択肢はなかった。4月から夫の単身赴任が決まり、協力は得られない。昼夜を問わない授乳で睡眠不足のなか、心身ともに限界を迎えていた頃だった。
認可園は15園に申し込んだ。そして先月27日、川崎市から落選通知を受け取った。「『育児休業』なはずが『保活休業』になり、本末転倒だと思いながら、育休中のほとんどを保活に費やした。これ以上延ばしたら、戻りようがない」。焦りが募る。
引用元: https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180810-00010000-asahit-soci
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