今年の夏巡業中の話だ。
事件は貴公俊(21)がシコを踏んでいる最中に起きた。
「いま、女を見ていただろ!」
その場に貴乃花親方(46)の怒声が響き渡った。周囲には関係者以外、一般客の姿もあった。親方の目には弟子の視線が女性に向き、稽古に集中していないように映ったのだろう。
貴公俊はしかし、親方の叱責を気にするふうもない。というか、暖簾に腕押し、糠にクギといったあんばいで、貴乃花親方の方を見ようとすらしない。完全無視の体だった。
「おい、正座しろ!」
業を煮やした貴乃花親方は再び、怒鳴り付けたものの、貴公俊の表情はまったく変わらない。またしても完全無視。親方の前で正座をするどころか、その場で開き直ったような表情。「殴れるものなら殴ってみろよ」と言わんばかりの態度だったという。
貴乃花親方と部屋の弟子たちがうまくいっていないというウワサはかねてあった。
が、公衆の面前で、貴公俊が親方に対して露骨に反抗的な態度を取ったことに、周囲の関係者や親方たちは「まさかここまでとは……」と口をあんぐり、目を点にして仰天した。ある親方がこう言った。
「貴乃花親方が内閣府に提出した告発状を取り下げるきっかけとなったのは、貴公俊が付け人を殴って血だらけにした事件だったからね。
部屋で暴力事件のあった親方が理事にいるのはおかしいとか、次々に暴力事件が明るみに出る協会の公益性や透明性が問われているなどと声高に訴えながら、
自分の部屋で暴力事件が起きたわけですから。貴乃花親方にしてみればメンツは丸潰れ、恥をかかされたと、貴公俊をかなり“かわいがった”のは想像に難くない。だとしても、ここまで露骨に親方を無視したのは驚きだと、我々の間で評判になったのです」
■貴ノ岩は暴行事件が原因でPTSDに
貴乃花親方と弟子の間の溝でいえば、日馬富士暴行事件の被害者である貴ノ岩(28)のケースが決定的だった。
むろん暴力は許されないにせよ、貴ノ岩にとって横綱日馬富士は、母国モンゴルの英雄であり、角界の大先輩。できれば穏便に済ませたいという思いがあった。
けれども、貴乃花親方は穏便に済ませるどころか、事件を協会批判、執行部を転覆させるための材料に利用した。貴ノ岩は事件が原因でPTSD(心的外傷後ストレス障害)になったし、「これでは国に帰りづらい」と親しい人にこぼしたという。
貴乃花部屋の元力士である貴斗志(28)が、相撲協会を相手取った訴訟の裁判記録には、貴乃花親方自身の暴力についても書かれている。親方が元付け人の胸ぐらをつかみ、往復ビンタやパンチを浴びせたというのだ。
「今年の2月には力士会や暴力再発防止の研修会が行われたのに、貴乃花部屋の力士だけは親方ともども欠席した。例えば力士会は十両以上の力士だけで行われるため、
新十両の貴公俊は楽しみにしていた。なのに欠席せざるを得なかったのは、協会に刃を向けていた貴乃花の有形無形の圧力があったから。
貴乃花の弟子であるがゆえに、彼らが割を食ったケースは一度や二度じゃない。弟子たちの気持ちはとっくに貴乃花から離れ、中にはかねて移籍願望の強い力士もいた」
とは別の親方だ。
協会を退職した貴乃花親方は25日の会見で、執拗に「弟子」という単語を繰り返した。「弟子は子供」「育てた弟子がとにかくかわいい」
「弟子の将来を見ずに断腸の思い」「弟子のために……」「弟子ではなくなるが意思としては師匠、お父さん」。25日朝、弟子に退職を告げると「泣く子もいた」と言う。テレビのワイドショーやスポーツ紙は「何より弟子を思いやる親方」
とお涙頂戴で報じているものの、実態を知る周囲の親方や関係者たちは「貴乃花とうまくいっていない弟子が涙を流すはずがない。本当に泣いたとすれば嬉し泣きだろ?」とせせら笑った。
26日の午後、貴乃花親方は自身の部屋を訪れた千賀ノ浦親方(元小結隆三杉=57)と弁護士とともに、弟子、床山、世話人ら8人の移籍について協議。前日、協会に提出した書類には千賀ノ浦親方の押印がなく、不備があるとされていた。
取材に応じた千賀ノ浦親方は移籍を認め、「署名して、印鑑も押しました。(貴乃花親方からは)『申し訳ありませんが、どうしてもよろしくお願いします』と言われた」と続けた。
協会はそれでも両親方の話し合いは不十分と判断、移籍に関する審議は10月1日の臨時理事会で行われることになった。「移籍」が実現すれば、貴乃花親方の弟子たちはそれこそ「祝杯」を挙げるのではないか――。
引用元: https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180928-00000012-nkgendai-spo
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