西日本豪雨で、愛媛県の二つのダムで行われた緊急放流について、ダムを管理する国が当時の対応を検証する委員会を設置した。
放流量が通常の大雨時の約6倍に増えた結果、下流の河川では氾濫が発生し、8人が死亡した。国は「ルールに基づいた措置だった」とするが、住民からは放流の方法や情報提供の改善を求める声が出ている。
検証の対象となったのは、愛媛県南部を流れる肱川(ひじかわ)水系の野村ダム(西予(せいよ)市、有効貯水容量1270万トン)と鹿野川(かのがわ)ダム(大洲(おおず)市、同2980万トン)。
国土交通省四国地方整備局によると、二つのダムでは豪雨に備えて4日から事前放流を行い、通常の約1・5倍の貯水が可能になっていた。だが、7日に入っていずれのダムも水位が限界に近づき、水があふれ出る恐れが出たため、流入する量とほぼ同じ量の水を放流する「異常洪水時防災操作」を実施した。
野村ダムでは、責任者が7日午前2時半、西予市に防災操作を実施する可能性があると伝え、同市は同5時10分に避難指示を出した。防災操作は同6時20分に始まった。
鹿野川ダムでも、7日午前5時10分、下流の大洲市に同様の連絡を行い、同市は同7時半に避難指示を発令。防災操作は同7時35分から行われた。
1秒間の放流量は野村ダムで1797トン、鹿野川ダムで3742トンに上り、いずれも7日午前0時時点の約6倍に達した。肱川水系では水位が急上昇し、氾濫が発生。西予市野村町で5人、大洲市で3人が死亡した。
19日に大洲市で開かれた検証委員会の初会合では、同整備局が防災操作の経緯などを説明した。それぞれのダムについて事前に定めた計画に基づいて、流入量や水位に応じた適切な放流量を決めており、住民への周知についても、防災操作の1時間以上前に警報のサイレンを鳴らしたという。
これに対し、住民からは不満の声が上がる。
自宅が2階まで浸水し、ボートで救出された大洲市内の60歳代の男性は「今までにない雨量なのに、従来の規則通り対応したと言われても納得できない。もっと計画的に放流はできなかったのか」と憤る。
西予市の60歳代の男性は「大雨の音がすごく、サイレンは聞こえなかった。いつも通りの時間に起きたら膝下まで水が来ており、あと10分遅ければ危なかった」と話した。
検証委員会のメンバーの鈴木幸一・愛媛大名誉教授(河川工学)は、「ダムは満杯になった時点で放流しないと壊れる。防災操作はすべきだったが、その方法に改善できる点がないかは検証が必要だ。住民の意見を聴く場も設けたい」と語った。
引用元:https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180722-00050025-yom-soci
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