75歳以上の高齢ドライバーによる重大交通事故が後を絶たない。5月28日には神奈川県茅ケ崎市で90歳の女性が4人をはねる事故が起きた。

要因の一つとされるのが、認知症による運転能力低下。改正道路交通法で臨時の認知機能検査などの早期発見策が導入されたが、新たに分かってきたのが約7千人の認知症“予備軍”の存在だ。高齢ドライバーの免許を一律に取り消せば、高齢者は生活の足を奪われる。

高齢ドライバー事故を減らすには? 専門家は抜本的な対策の展開の必要性を訴える。(社会部 中村翔樹)

「赤信号と分かっていたが横断歩道に誰もいないと思い、通過しようとした」。茅ケ崎市の国道で5月28日、4人を乗用車ではねて1人を死亡させ、3人にけがを負わせたとして、自動車運転処罰法違反(過失致死傷)容疑で逮捕された女性(90)は、

事故当時の状況をこう説明した。神奈川県警などによると、女性は昨年12月、免許更新のために受けた認知機能検査で、判断力や記憶力に異常はないと判断されていた。結果を受け、今年3月に免許を更新。ゴールド免許だったという。

女性はまた、「左から渡る人が見えて、慌てて左にハンドルを切った」とも供述。この通りなら、歩行者に向かってハンドル操作する不可解な判断をしたことになる。さらに、県警は被害者の4人は当時、横断歩道上を歩いていたとみているが、女性は「横断歩道に誰もいないと思った」と食い違う説明をした。

名古屋大学大学院環境学研究科の加藤博和教授(公共交通政策)は「動体視力や反射速度など、安全な運転をするための機能が衰えていた可能性がある」と指摘。女性が50~60年前に免許を取得したとみられることを挙げ、「技術に自信があり、慢心もあったのではないか」とみる。

昨年3月に施行された改正道交法では、信号無視や遮断機が下りた踏切への立ち入りなど、認知機能の低下と結びつきが強い18項目のいずれかについて違反をした高齢ドライバーに「臨時認知機能検査」の受検義務を課した。

この検査で、認知症のおそれがある「第1分類」と判定された場合、医師への受診義務があり、診断書などを警察に提出しなければ免許取り消しや停止になる。法改正前は、免許の更新時にのみ同種の認知機能検査を受ければよく、早期の発症確認に網の目がより細かくなった。

ただ、その結果見えてきたのが、“予備軍”の存在と、その数の多さだった。警察庁によると、平成29年に第1分類と判定された人は全国で約4万6900人。うち、判定が下った段階で免許を自主返納したケースをのぞき、約7100人が、原則6カ月後の診断書提出を条件に免許更新を認められた。

発症の恐れはあるものの、医療機関側がその段階で明確に認知症と診断できなかったためだ。「恐れ」の段階で一律に免許取り消しなどにできないのは、医療分野において、認知症と運転の危険性の因果関係が不明確とされる点が背景にあるからだ。

日本認知症予防学会理事長で、鳥取大学医学部保健学科の浦上(うらかみ)克哉教授(認知症予防学)は「現行法は認知症を画一的にとらえ過ぎている」と話す。認知症にはいくつかのタイプがあり、例えばアルツハイマー型認知症の場合、「軽度であれば多少の物忘れの症状があるだけ。助手席に健康な同乗者がいるなどすれば、運転自体は十分可能」(浦上教授)。

認知症にかかわらず、高齢ドライバーによる事故は後を絶たない。横浜市では28年10月、当時80代の男性が運転する軽トラックが集団登校中の児童の列に突っ込み、小学生ら7人が死傷。男性は自動車運転処罰法違反(過失致死傷)容疑で逮捕、送検されたが、横浜地検が認知症の影響で正常な運転能力を欠いていたと判断。嫌疑不十分で不起訴になった。

栃木県下野市では28年11月、当時80代の男性の乗用車が病院に突っ込み、女性1人が死亡。その2日後には、東京都立川市の病院でも当時80代の女性の乗用車が男女2人をはね、いずれも死亡した。

各自治体では車に代わる生活の足として、タクシーの割引などの行政サービスを提供し、免許の自主返納を推進している。警察庁によると、昨年は約25万人が返納した。ただ、これは高齢ドライバー全体の約5%に過ぎない。路線バスや鉄道の廃線が進む過疎地域に住む高齢者にとって、車を手放すことは死活問題だ。

茅ケ崎市の事故を起こした女性も、家族から免許返納を勧められていたが、週1回程度の病院通いに車を使っており、家族には「今回の更新が最後だから」などと話し、車の必要性を感じていたようだ。米国の一部の州やドイツなどでは、早期の認知症であれば、区域や時間を限定してむしろ運転を認める措置を講じている。

浦上教授は、認知症の早期発見と免許の自主返納促進という現状の対策だけでは、高齢ドライバー事故は防ぎきれないと指摘したうえで、「高齢ドライバーを一律に危険視するのは誤りで、『末永く安全に運転してもらおう』というアプローチも必要。重大事故をなくすという目的は同じなのだから、関係機関はより多くの視点から手を打つ必要がある」と話している。

スポンサーリンク


みんなのコメント

 

名無しさん
家族の言う事を聞かず頭ごなしに怒る人、認知症予備軍
子供の言うことを聞いて免許を返納する人、予備軍ではないが、それに近い
なんにせよ、家族が説得しようとしても、本人が言うことを聞かないのだから、国で年齢制限を設けるべきである。
ま、国はそんなことをしたら、税の徴収が減るのでしないだろうが、このままでは若い命が、予備軍に絶たれてしまうであろう
名無しさん
認知症だけで判断するのは危険。
認知症でなくても、運転にはとっさの判断力が必要です。高齢になればその判断力は確実に衰えてきます。
年齢制限はいたし方ない方法などおもいます。
我が家にも運転に絶対的自信がある85歳の父がおり、高齢者講習では満点を取ります。
今回の事故は他人事ではありません。
家族の説得が難しく、早く法律で決めて欲しいと日々思っています。
名無しさん
高齢ドライバーの事故の原因の一つは認知症というのはあると思う。
でも多くの事故を起こす人間はモラルやマナーの意識も低い。
夕暮れの無灯火…自分が見えればいいのですか?歩行者から見えるようにライト付けましょう
追越車線を低速走行…急いでいる人もいます。流れに乗れないのであれば道を譲りましょう
方向指示器不点灯…他の人が戸惑います。意思表示をしっかりしましょう
高齢者ほど他者に甘えて自分本位の考えが強くなってしまうのは、自身の体が言うことを聞かないから。そうなったら返納を考える時期だと私は思います。
名無しさん
認知症かどうかって問題じゃないと思うんだよね。認知症じゃなくったって、普通に高齢になれば判断力も反射神経も衰えていくんだから、検査をしていく事とは別に、年齢の上限は必要だと思う。
祖父が運転をしてて助手席に乗っている母にガッツリ向いて喋り出して、凄く怖かったと母が言っていた。
それからしばらくして自分の意思で車の運転を止めたそうだが、結構頑固な人だったんで、自主的に止めなかったら、説得しないといけなかったんで面倒なことになっただろうなって思う。
おたてどんびー
10年前まで都会に住んでた時、公共交通が発達してるし、定期が使えて休日も安くどこでも行けた。田舎に帰ったらバスが1時間に1本以下、終バスは18時。車がないと移動できないし面白い場所もない。タクシー代は高い。
Xyz….
自信があるとかほざいて未来ある若者を轢き殺すとか冗談じゃないっての!
せめて老いと向き合う覚悟を持ってほしい
avve
80代のとっさの判断力や反射神経は40代くらいまでの時とは
明らかに衰えているはず。やっぱり検査を受ければ免許更新できちゃう制度は問題解決になってないって事がわかったよね。高齢者の操作ミスの事故増えてる感覚しかしない。
もう一定の年齢でまずは区切るしかないでしょ。
交通の手段が他にない場合や、認知機能と運動機能が若者並みに優れている人などは特例で免許を認めるって方がいい気がする。
名無しさん
誰も高齢ドライバーを一律危険視なんてしてないでしょ?
てか、
>アルツハイマー型認知症の場合、「軽度であれば多少の物忘れの症状
>があるだけ。助手席に健康な同乗者がいるなどすれば、運転自体は
>十分可能」(浦上教授)。
これは運転可能と言えるのか?もしOKだとしても
免許要件に「眼鏡等」と同様に「介添等」と記載がなきゃダメだよね?
しかも、そんないつも介添人用意できるかって現実的な問題もあるよね。
名無しさん
年齢で線引きする方が良い
認知症だけでなく、高齢者は聴力視力や、瞬時の判断や運動能力の低下も関係しているだろうし
運転前に関係なテスト機能を搭載して、不合格ならエンジンがかからない車とか
飲酒運転防止にも
名無しさん
今回の事故は認知症とは関係ない性格が問題です老人に限らず若い人の運転者にもこんな運転をしています安全意識の欠如とルール無視が事故の原因ですね高齢者の問題にしないでいただきたい。
名無しさん
90歳の人に関しては、そもそも信号無視が問題なんだと思うな。
ちょっとしたきっかけで認知症になる人がいるから、事故時の認知度が大切だと思う。
名無しさん
「神奈川県茅ケ崎市で90歳の女性が4人をはねる事件」については、認知症のせいなのかなぁ?「人(車)がいなければ信号無視OK!」という行動が駄目なのであって、赤信号を認識できなかった訳ではないんだし。
確かに運動能力他が落ちていて、以前なら信号無視しても事故にならなかったのかもしれないが。
名無しさん
免許取り上げろというのも
分からんでもない
でも
痴呆になったら
車とカギがあったら
無免許でも乗る
そして日本は免許証が無くても車が買えてしまう
まずは車を買えない様にするのが先だと思う
誤意見申す!
運転免許証を自首返納する年齢次第で返金制度を設けるべきですね。
都会生活でクルマが無くても移動手段に事欠かない方と地方の田舎にて生活してる方とは運転免許証の大切感が違います。
しかし、運転免許証を所得するにはある程度の金銭を掛けて居ますので運転免許証を自首返納した年齢を考慮して返金制度は大切でしょう。
移動に使うタクシー代や電車代などを平均寿命から差し引きして自首返納免許証を買い上げるのが良いと思います!
名無しさん
ようやく始めた高齢者講習が甘過ぎる。
事故に比べたら生活の足でも奪ったほうがいい。
名無しさん
35になったら再講習。
40になったら試験受けなおし。
45になったら免許返上。
自動運転ができるまではこのくらいのことしないと事故は無くならないよ。
そもそも本質は年齢じゃないし。
ossan
自動車が老人でも人を殺せる道具である以上、認知機能に衰えがあるなら運転するべきでない
教授は他国の制度のごく一部を例に出してるが、老人運転による被害者遺族を目の前にして言えるのか
教授も老人で自己保身で言ってるのかもしれないが無責任すぎる意見だ
名無しさん
高齢者に限らず危なっかしい運転手はいっぱいいます
司法改革するのが一番手っ取り早い・・・


スポンサーリンク


fjue26*
個々の状況に合わせてなんて、現実に無理に決まってるだろ。
大体、認知症の机上の空論学者、浦上なんかに聞くな。
一律規制でいいんだよ。
名無しさん
認知症は物忘れ最近多いって言ってるうちは、大丈夫
忘れたことすら忘れる、事故を起こしても忘れる
イヤ自分は何もしてないって言い出す!
今の法律をさっさと変えた方がいい、免許更新時 全員 筆記・実技を行う。
国際免許をもっと厳しく!
名無しさん
米国の銃規制と日本の高齢者ドライバーの事故は同レベルで深刻だわ。
名無しさん
自動車メーカーは、事故らない車作らなきゃダメだぞ
shicho
年齢に関係なく運転に不向きな人っているんだから、
自動運転なんかじゃなく、AIを使った事故防止機能に力を向けたほうがいい。認知や操作の間違いを修正できるような
名無しさん
自動ブレーキ。
名無しさん
認知症だから不起訴というのは納得できない(ー_ー)!!
過疎地の高齢者は車がないと生活できないが、人も少ないのでokとし、都市部の高齢者は公共交通が整っているので、免許返納してもらいたい!!
名無しさん
国は、マイカーを捨ててバスに乗りたくなる政策を実施するべし。限界集落といわれる箇所まで網の目のようなマイクロバスでの路線バス網を構築するべし。高齢者も部活の通学生も気軽に利用できるようにすれば地域の治安維持にも役に立つ。過疎化に歯止めをかけると、都市部での地価高騰も抑えることもできる。
名無しさん
生活の足を奪われても、これからの世代の生命を奪われるよりはましでしょが。
名無しさん
認知症、認知症予備軍関係ない
高齢者の不注意な運転の仕方に問題があるのである訳であって、ある年齢以上に達すると代替交通機関のある地域の高齢者は強制返還でいい
そもそもこういう重大な事故が起きているのは農村ではなくて都市部ばかりではなないか
この婆さんもそうだが、赤信号で歩行者はいないと思ったとか確認してもいないのに決めつけて突っ込んでいる
おまけに回避するはずが歩行者の方にハンドルをきる等不可解な行動をしているし
名無しさん
レベル5の自動運転車が販売される時代になれば、この問題は解決するのだが、直近の対策は当人と家族、そして医師等の意見から決めるしか無い。でも、公共交通機関の無いところはどうするのか。難しい問題、英知を絞るしか無い。
名無しさん
60歳で免許失効。
無免許で捕まった場合は終身刑。
移動は公共交通機関を使え。
名無しさん
教授さんよぉ。
だったら有効かつ具体的な方法言えよ。
痴呆の疑いがあれば十分免許返納だろ。
名無しさん
ある程度の年齢で免許失効させて、試験で新たに取得させれば?
そうすればお上にも事故責任問えるよ。
名無しさん
ひと昔前は、世間全体が若いお兄ちゃんお姉ちゃんを一律に危険視してたじゃないか。
いろんな締めつけがあって今に至っている。
ジジイババアの方がはるかに危険視しなきゃいけないんだってば。
何言ってんの?
とーちゃん
運転サポート技術とか車に進化してもらうしかないネ
名無しさん
一律に考えているわけではない。只、自主返納を進める家族との間に、ひびが入るケースが多いと思う。私の母は何でも無いことで骨折し自覚してくれて、何事も慎重なり、心配ならやらない!ようになってくれた。それまでは『偉そうな事を言って』と聞く耳を持たなかった。
車は人の命を奪う。年齢で区切る方が高齢者も家族も、国が決めたと割りきれる。
・・・
教習所では「走る凶器」とか言っておいて、それをコントロールする側に問題があっても取り上げられない免許なんて、意味がない。
高齢になると、頭だけでなく体もついてこないのに。
名無しさん
<「高齢ドライバーを一律に危険視するのは誤りで
一律に野放しにするのはもっと誤っています。
名無しさん
オートマ限定免許が登場したとき、ゴーカートみたいなAT車しか運転できない不器用な奴にハンドル握らせて大丈夫なのか、とずいぶん悪口も聞いたが、しばらくは問題になることもなく忘れていた。今更ながら、あのときみんなが心配していたのは、こういう事だったのかと思い出した。
自動運転のように運転を簡単にするのは、潜在的な問題を隠し、大事になるまで顕在化させないので逆効果に思えて仕方ない。例えばエンジンをかけるときにパスワードが必要といった、不便にする工夫も必要だと思う。
名無しさん
はやく免許返納してくれない?
少子高齢化の原因は老人が運転する車が
若い人をひき殺している原因の一つ。
自分は大丈夫と思っているのが間違い。
名無しさん
後期高齢者のゴールド免許無くせば良いのでは?何年かおきにではなく毎年更新もしくは、適性検査を義務付けてもいいと思う。
その上で安全運転をしてもらうと。
名無しさん
認知症検査の内容そのものが警察のホームページに掲載されている。母親はそれを見て検査を受け、実技では普通自動車か原付を選択できるので原付で講習を受けた。普段は普通自動車にも乗っているが原付だけの講習で免許はもらえるのである。
結局、高齢者講習の実体は自動車教習所の儲けのタネであり大して意味がないものである
名無しさん
人命にかかわる問題に個別性に応じる余裕はない。
どうしてもというなら、一律禁止を前提に厳しい特別試験をパスした高齢者にのみ免許を許可すればいい。
高齢ドライバーの人権を尊重したら、他の人の人権(人命)が尊重されなくなる。
公共の福祉においてマイノリティの権利を制限するのは憲法で保障されている。
名無しさん
医師に認知症の診断をさせるのは、なかなか責任が重くやりずらいのではないか?70歳以上は免許をとったときと同じような実技試験を義務付けるべきだとおもいます。3回くらいやってパスできなかったら失効でいいでしょう。試験なので細かく採点されるから、恣意的な判断で大目に見るとかやりにくい。加害者だって、長生きして人生の最後に人殺しなんて、つらいでしょ。政治家や役人が国民受けすることばっか考えてないで決断しないと。
名無しさん
一律にしない方が不公平でしょ
mine.w
なんだかんだ言われてるが、結局、制度を変えるより
自動ブレーキの普及が一番早そうだから、それを待つ
ってのが現実だと思う。
って思ってたんだけど、先日の茅ケ崎の事故なんか、
どんなクルマ乗ってんのかと思ったら、30年近くも
前のプリメーラだよ。
こりゃ普及もまだまだだなと、気が遠くなった。
名無しさん
死に損ないが。
名無しさん
これ以前にも書いたけど、
自動車教習所等で現在行われている「高齢者講習」が機能していない。
色んな点で危なかしい人にも、終了書が自動的に渡される。
その終了書があれば、免許更新できるのだ。
教習所は、俺たちが審査する立場じゃない、講習に来る人はお客さん、とうそぶいている。
高齢者講習は警察が直接やれ、教習所に外注するな。

 

スポンサーリンク


注目ニュース